ビクトーザとバイエッタとリキスミア




【GLP-1製剤と膵臓疾患について】
最近、相次いでGLP-1製剤と膵臓疾患の関連を指摘する報告がございました。 GLP-1製剤の使用によって、急性膵炎の発症が25倍程度まで増加するとするものです。 また、膵臓がんについても、指摘する報告もございます。
新規薬剤すべてに通じるものですが、長期予後、長期安全性に関して不明なため、 その使用は、リスクとベネフィットを考慮する必要がございます。 今後の報告の積み重ねで明らかになるとは思われますが、適応を考慮し、 安易な使用は慎まなければなりません。
特にGLP-1アナログ製剤は、日本で認可されている用量設定の為か、 有効例がそれほど多くないとする医師もいます。
高価な薬剤で且つ、無効で、副作用があったのでは、たまったものでは有りません。
本邦における糖尿病治療薬の選択は、欧米諸国と異なる傾向がございます。
実績が十分にあり、効果が証明され、安全である薬剤から使用するのが、患者様のためではないのでしょうか?

2013年6月28日、米国糖尿病学会(ADA)、欧州糖尿病学会(EASD)、国際糖尿病連合(IDF)と合同で、 インクレチン療法(GLP-1アナログとDPP4阻害剤)と膵疾患に関する声明が発表されております。 それによると、糖尿病であること自体が膵腫瘍のリスクを上昇させるとし、これら薬剤とは、現時点では、関係が認められないとの事です。 また、膵炎などの有害事象が、有意に増加する事もないとしています。 ただし、今後の報告によって変わり得る、新規薬剤は、慎重に使用すべき、としています。 この声明は、米国FDAのデータが元となっております。


【ビクトーザ】


ビクトーザ(liraglutide)は、本邦では、2010年に製造承認されたGLP-1アナログという新しい機序による糖尿病治療薬です。
1日1回で使用する自己注射製剤です。
新薬の為、まだジェネリック薬品はありません。

インクレチンと呼ばれる血糖改善作用のある消化管ホルモンであるGLP-1(グルコース様ペプチド-1)は、食事に伴い消化管から分泌されます。
この分泌されたGLP-1は、膵臓からのインスリンの分泌を促進し、血糖上昇を抑制するほか、 インスリン拮抗ホルモン(血糖値を上昇させる)であるグルカゴンの分泌をも抑制いたします。
通常、このGLP-1は、すぐさま分解酵素により分解されます。体内での半減期は3分と非常に短いものですが、 この分子構造をアシル化することで分解を受けにくなります。
そうやって開発されたのが、GLP-1アナログ製剤です。

今まで臨床で使用されていたインスリン分泌促進剤は、SU剤とグリニド系薬剤です。
SU剤は、長期に使用していると、二次無効と呼ばれる、インスリン分泌能が減弱する現象が認められます。
(SU剤により、膵β細胞が疲弊しインスリン分泌が低下する、と言われておりますが、詳細な機序は不明です)
さらには、副作用として体重増加を認め、低血糖の危険性もございました。
また、グリニド系薬剤は、生理的なインスリン分泌に近い状態が再現できるとのことで、糖尿病改善効果が期待されていましたが、 血糖改善作用が弱く、その使用は、軽症糖尿病に限られました。

このビクトーザは、全く新規の機序の薬剤で、インスリン分泌促進作用を備える他、 膵β細胞を保護する作用が指摘されており、長期に使用しても2次無効が生じにくいと考えられております。
また、食欲を減退させることから、体重減少の期待できる薬剤であり、 さらに、単独使用では低血糖の危険性も少ないと考えられています。
新しい薬剤ですので、今後の使用実績に注目しなければなりませんが、非常に期待をされている薬剤です。

勃起薬との併用ですが、バイアグラレビトラシアリス錠ともに併用は可能と考えられます。
ご来院の上ご相談下さい。


【バイエッタ】


バイエッタ(exenatide)は、本邦では、2010年に製造承認された2製剤目のGLP-1アナログという機序による糖尿病治療薬です。
GLP-1アナログ製剤は、膵臓に作用し、血糖上昇時に、インスリンの分泌を促します。

バイエッタ(exenatide)は、米国の砂漠に生息する大トカゲの唾液に含まれるexendin-4を人工的に合成したものです。
この大トカゲ、砂漠という生息場所のためか、なかなか食事にありつくことができません。 つまり、日常的にインスリンを分泌させる必要がなく(逆に、分泌していると、低血糖になってしまいます)、 食事にありつけた時だけ、インスリンが分泌されれば良く、食事にありつけた時のみ唾液中に分泌されるexendin-4という物質は、 非常に都合の良いものです。
この物質を、人間に応用し、製品化されたものが、このバイエッタです。
1日2回で使用する自己注射製剤になります。

GLP-1(グルコース様ペプチド-1)は、インクレチンと呼ばれる血糖改善作用のある消化管ホルモンで、食事により消化管から分泌され、 膵臓でインスリンの分泌を促し、さらに、血糖値を上昇させるホルモンであるグルカゴンの分泌抑制等の効果により、血糖値を改善します。
同効薬にビクトーザがございますが、2012年1月時点で、単剤もしくはSU剤との併用での使用が保険適応で認められておりますが、 このバイエッタは複数の糖尿病治療薬との併用が、保険適応上、可能なのが特徴とも言えます。

インスリン分泌促進薬は、SU剤とグリニド系薬剤しかありませんでした。
SU剤は、長期に使用していると、インスリンを分泌する膵β細胞が疲弊しインスリン分泌が低下する、いわゆる2次無効と呼ばれる状態に陥ります。
さらには、副作用として体重増加を認め、低血糖の危険性もございました。
また、グリニド系薬剤は、血糖改善作用が弱いため、臨床現場からは、SU薬、グリニド系薬剤以外の、新たな薬剤の登場が期待されておりました。

バイエッタもビクトーザ同様に膵β細胞を保護する作用が指摘されており、長期に使用しても2次無効が生じにくいと考えられております。
また、体重増加を来たしにくい薬剤でもあります。
単独使用では低血糖の危険性も少ないと考えられています。
ビクトーザと比較し、血糖降下作用が強めですが、 やや嘔気などの消化器系の副作用が多い印象です。 ビクトーザと比較し、食後高血糖抑制効果が強いとされます。

新しい薬剤ですので、長期の使用実績がございません。
使用成績や安全性などの臨床データの蓄積が望まれます。
新薬の為、まだジェネリック薬品はありません。
ED治療薬との併用ですが、バイアグラ、レビトラ、シアリス錠ともに併用は可能と考えられます。
ご来院の上ご相談下さい。


【リキスミア】


リキスミア(リキシセナチドlixisenatide)は、本邦では、2013年10月に市販予定のGLP-1アナログ製剤です。 成分であるリキシセナチド(lixisenatide)は、先に市販されているバイエッタ(エクセナチドexenatide)に類似した構造をもつ薬剤です。
臨床において注目されるのは、GLP-1アナログ製剤で初めて基礎インスリンとの併用が、保険適応になったことです。
1日1回5μgより開始し、1週間おきに最大20μgまで増量可能となっております。
メーカー側からの正式な告知はございませんが、基礎インスリンとの併用以外にも、SU剤とメトホルミンとの併用も、保険適応となるようです。 単独による治療は、適応外のようです。

バイエッタ(エクセナチドexenatide)に類似した構造を有すことから、その薬理学的な特徴もまた、類似しているとされます。 バイエッタ(エクセナチドexenatide)は、ビクトーザ(リラグルチドliraglutide)に比較し、 胃内容物の排出遅延効果が強いとされ、その結果、食後高血糖の抑制効果が強いとされております。 バイエッタ(エクセナチドexenatide)は、食後高血糖を抑制しやすく、ビクトーザ(リラグルチドliraglutide)は、 平均血糖値を低下させると言ったイメージです。
このリキスミア(リキシセナチドlixisenatide)も、胃内容物の排泄遅延効果を有するとされ、 食後高血糖を是正するとされています。
バイエッタとリキスミアの違いは、バイエッタが1日2回注射が必要なのに対して、 リキスミアは、1日1回でよい点が挙げられます。
また、先にも述べましたが、リキスミアは、基礎インスリンとの併用が、保険適応となった事が挙げら得ます。 最近は、経口血糖降下薬と基礎インスリン注射を併用療法BOT(basal insulin oral therapy)が注目されております。 これによっても血糖改善効果が不十分である場合、を追加するといった、使用法が考えられます。
血糖降下作用は、バイエッタと比較して、非劣性であったとの事です。 (私が見た論文では、このリキスミアの方が、統計学的に有意差は無いものの、やや血糖低下作用が弱そうです) 副作用は、やはりというか嘔気などの消化器症状です。
薬理学的に考え、単独での低血糖は来しにくいと考えますが、 保険適応上、SU薬やインスリンとの併用がほとんどですので、やはり、低血糖発作には注意が必要です。 体重減少作用は、強くは謳っておりません。併用薬によっては、体重は増加する可能性もございます。

また、1日2回注射したらどうなのだろう?という疑問が有ると思いますが、 これについては、メーカーのデータがございます。 血糖低下作用は変わらず、逆に消化器系の副作用が増加したため、1日1回で承認申請したとの事です。

難点はやはり価格でしょうか。 他のGLP-1アナログ製剤と同様、9000円/本程度となるようです。 3割負担で、3000円弱。最高量の20μgを使用した場合、2本/月必要になります。 これ以外にもその他諸々の費用が必要になります。 やはり、費用が一番のネックになりそうです。

その他のGLP-1アナログ製剤と同様、バイアグラ、レビトラ、シアリスとの併用は、問題ないと考えます。


written by バイアグラ処方で.池袋スカイクリニック