「プレタール」。(大塚)
プレタールは抗血小板薬です。成分名はシロスタゾールcilostazolです。
プレタールの特徴は、血小板凝集抑制作用に加え、末梢血管拡張作用を併せもつことです。末梢血管拡張作用は、他の抗血小板剤にはない特徴です。
作用として血小板のセロトニン放出を抑制しますが,セロトニン,アデノシンの血小板への取り込みには影響を与えないとされています.トロンボキサンA2による血小板凝集を抑制し、またcAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害することで,抗血小板作用及び血管拡張作用を発揮します。
プレタールは、血小板及び血管平滑筋のホスホジエステラーゼ3(PDE3:cGMP-inhibited phosphodiesterase)活性を選択的に阻害することにより、
抗血小板作用及び血管拡張作用を発揮します。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、バイアグラ、レビトラ、シアリスなどED治療薬は、プレタール同様、ホスホジエステラーゼ阻害剤です。 ホスホジエステラーゼは、全身に存在します。EDには、主にホスホジエステラーゼのアイソザイム5に関係しています。 残念ながら、プレタールに勃起改善作用はございません。
プレタールの適応症は、a)慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善、b)梗塞(心原性脳塞栓症を除く)発症後の再発抑制になります。
慢性動脈閉塞症の間欠性跛行に有効である抗血小板剤は、治療ガイドライン上では、プレタールのみ記載されております。
これは、プレタールが抗血小板作用に加え、血管拡張作用を有す事に因ります。
プレタールにより、跛行症状の低減と運動耐用能の向上効果が得られます。
臨床現場で頻用される抗血小板薬は、バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)と、
このプレタール(シロスタゾール)が挙げられます。
プレタールの特徴は、血管拡張作用を有す事と、副作用として出血を来す頻度が少ない事です。
抗血小板薬、いわゆる血液をサラサラとする薬剤は、副作用として、出血性合併症のリスクが伴います。
特に日本人含むアジア人は、他の人種と比較し、出血性合併症が出現しやすい傾向がございます。
プレタールの出血性合併症が少ないという特徴は、日本人にとって、大きなメリットになります。
実際に、本邦で行われたCilostazole Stroke Prevention Study(CSPS)では、プラセボと比較して、脳梗塞再発の相対リスクを40%以上減少させ、
また、出血性合併症の頻度は増加しなかったと報告されました。
引き続いて行われたアスピリンと比較したCSPS2試験では、アスピリンと同等以上の脳梗塞再発抑制効果
(全脳卒中発生率アスピリン群vsプレタール群=3.71%vs2.76%)を示し、
また、アスピリンと比較し、副作用である出血の合併が少なかったとも報告されています。
プレタールは、さらに、ラクナ梗塞にも有効である事が示されています。
日本人やアジア人を対象にした臨床試験の良好な結果を受け、
本邦における脳卒中治療ガイドラインでは、プレタールは推奨グレードBに位置づけられています。
プレタールは、アスピリン以上に有効で、安全性の高い薬剤として、広く使用されるに至っております。
しかし、面白い事に、臨床試験の結果が不足している為か、欧米諸国のガイドラインでは、プレタールは記載されていません。
プレタールの最も良い適応となる血栓症は、ラクナ脳梗塞です。 その理由は、先にも述べましたが、血管拡張作用があるため、脳血管末梢の梗塞であるラクナ梗塞では、 脳血管末梢の血流を改善する可能性がございます。 これに加え、ラクナ脳梗塞は、脳微小出血(micro bleeds)を伴う可能性が高いため、 出血性合併症が少ない事は、メリットになります。 出血性合併症については、臨床において注意すべき事柄ですが、脳出血合併例や脳微小出血例(microbleeds)、 コントロールが不良な高血圧例や、他の抗凝固薬を併用しないといけない場合は、ハイリスクとも言えるため、 プレタールの選択が考慮されます。
その他にも、糖尿病例等、血小板機能が亢進した例では、アスピリンの効果が不十分な例もございますが、 プレタールは、糖尿病例でも有効性が期待され、血管内皮機能を改善する事により、 動脈硬化の退縮効果も期待されています。
また、嚥下障害の改善や、認知機能の改善などの可能性も指摘されております。
循環器領域では、プレタールの副作用である頻脈を利用して、徐脈性不整脈の治療薬として使用される場合もございます。
このように、様々な薬理作用があるプレタールですが、繰り返しますが、ED改善作用は報告されていません。
バイアグラと同様、ホスホジエステラーゼ阻害剤は、様々な可能性を持つ、今後、発展する可能性の高い分野と言えます。
良い点ばかり記載しましたが、プレタールにも欠点がございます。
副作用である頻脈(動悸)、頭痛により、アスピリン、クロピドグレルに比較して、認容性が低いとされています。
頻脈(動悸)は、心筋内カルシウム濃度が増加する事に因って生じます。不整脈を有す例には不適とされます。
また、プレタールのみ、1日2回の服用が必要なため、服薬コンプライアンスの問題も挙げられます。
薬価もアスピリンに比較すると高額であります(ジェネリック医薬品の登場で、差額は減少していますが)。
冠動脈疾患を扱う循環器領域では、脳血管障害領域と異なり、頻脈を嫌って、あまり多く使用されない傾向にあります。 心不全合併例では、禁忌となっております。
本剤本薬剤の慎重投与・禁忌指定・併用注意としては明記されていませんが、プレタールとED治療薬=勃起改善薬である
バイアグラ並びにシアリス・レビトラは、
CYP3A4という共通の代謝系で分解処理されるので、これらの薬剤を併用する事により、
それぞれの薬効の遷延や増強の可能性があるため、いずれ併用注意に指定される可能性があります。
なお薬剤自体の副作用に関しては、出血症状、頻脈、頭痛など多数ありますが勃起不全の発生は報告がありません。
現在では口腔内崩壊錠が市販されているのに加え、ジェネリック医薬品も市販されております。
written by バイヤグラなら池袋スカイクリニック