プラザキサ| ダビガトランdabigatran



【プラザキサ】ダビガトランdabigatran


日本ベーリンガーインゲルハイム

プラザキサは、日本ベーリンガーインゲルハイムから発売されている、成分名ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩Dabigatranという薬剤です。
ワーファリン同様に、世間一般で言う所の血をサラサラにする薬です。
直接トロンビン阻害剤に分類され、トロンビンによるフィブリン産生を直接阻害する薬剤です。 基本的には心房細動による脳塞栓症の予防等で使用される事の多い薬になります。 2012年現在、その適応は、非弁膜症性心房細動における脳梗塞および全身性塞栓症の予防、とされています。
ワーファリンにとって代わる薬剤として、非常に高い注目を集めている薬剤です。

ワーファリンを服用する場合は、安全性と効果の目安としてプロトロンビン時間(主にPT-INR)を測定いたします。 ワーファリンを服用する場合、毎月血液検査を必要とし、検査結果に応じて、服用量を調整する必要がございました。
さらに、ビタミンKを多く含む食品、例えば納豆などの摂取を制限する必要がございました。
このプラザキサは、これらの検査、食事制限が必要がないと言われており、患者様の負担を軽減できる薬剤として、非常に高い期待を集めております。


プラザキサが市販され1年以上経過し、長期処方が可能になりました。 さらには、様々な臨床試験の発表が有り、臨床現場におけるプラザキサの立ち位置も定まりつつあります。

注目すべき臨床試験として、RE-LY試験があげられます。
このRE-LY試験の結果を受け、日本循環器学会は心房細動の抗塞栓療法のガイドラインを変更しております。 僧帽弁狭窄症もしくは機械弁の心房細動例では、このRE-LY試験で検討されていないため、従来通り、ワーファリンが推奨され、 非弁膜症性心房細動例ではCHADS2スコアを参考にし、CHADS2スコアが1点以上でも、プラザキサは、「推奨される」となっております。 (ちなみにワーファリンはCHADS2スコア2点以上で推奨) これは、ワーファリンに比較し、プラザキサが安全であるため、リスクとベネフィットを考慮した結果となっております。

プラザキサの気になる脳塞栓症の予防効果ですが、ワーファリン同等かそれ以上の予防効果を有しつつ、重篤な副作用である頭蓋内出血の頻度を大幅に減少したとされます。 (サブ解析では、75歳以上の患者の頭蓋内出血のリスクは、プラザキサ110mg×2とワーファリンと同程度、プラザキサ150mg×2では、ワーファリン以上と逆転するため、年齢に応じて、プラザキサとワーファリンを使い分けるのも良いかもしれません)
また、消化管出血の危険性はプラザキサの方が高率であり、その出血部位は、下部消化管が多いとのことです。 黒色便や鮮血便など、日常のチェックが欠かせません。
高血圧やアスピリンなどの抗血小板薬の服用、喫煙、過度の飲酒は、この出血による副作用を増加させますので、注意しましょう。


海外のガイドラインでは、アメリカACCF/AHA/HRSのプラザキサ(ダビガトラン)に関するステートメントが発表され、
「プラザキサ(ダビガトラン)は、脳梗塞/血栓塞栓症のリスクを有し、人工弁/心臓弁膜症がなく、高度の腎障害、重度の肝機能障害がない、発作性および永続性心房細動例のける脳梗塞、全身性血栓塞栓症予防にワーファリンに変わる薬剤として有用である(クラスⅠ)」とされました。
カナダ心臓協会からも、プラザキサ(ダビガトラン)は、ワーファリンより望ましいとされています。
ヨーロッパにおけるガイドラインでも、プラザキサはワーファリン同様に抗凝固薬として推奨されると記載されています。
日本人は、欧米人に比較し出血の合併症が多いため、欧米のガイドラインをそのまま転用することはできません。 わが国独自の日本人のためのガイドラインが必要です。


プラザキサは、基本的には、用量用法も調整する必要のない薬剤であると言われており、150mgを1日2回服用することになります。 用量を調整する場合は、110mgを1日2回を考慮します。
プラザキサは、腎機能障害者には、投与量を調整したり、投与を避けるよう指示があります。 代謝経路の80%が腎臓排泄なためです。
また、ワソラン(ベラパミル)やアンカロン(アミオダロン)などのP-糖蛋白阻害剤との併用は、禁忌または注意とされています。 ワソラン(ベラパミル)は、心房細動の頻脈に使用されたり、アンカロン(アミオダロン)は心房細動発作の抑制に用いられる薬剤です。 つまり、これらは、併用されてしまう可能性がある薬剤ではありますが、これを併用する場合、用量の調整等、注意が必要になってきます。 (P-糖蛋白阻害剤は、一般の方は聞きなれないと思います。併用できない薬剤があると覚えて下さい。)
高齢者の場合も、用量を減量する事が添付文書に記載されております。
消化管出血の既往が有る患者さまにも、用量を調整するよう指示されています。
(その他注意事項もございますが詳しくは主治医に聞いてください)


ワーファリンからプラザキサへの切り替えですが、PT-INRが2を切っていれば、そのままプラザキサへ切り替えても良いとされます。 ワーファリンの効果が安定しない方、上記注意事項に当てはまらない方などが適応になると思います。
ワーファリンの様に、検査で薬効を推し量る指標がない事は、簡便ではありますが、逆に、心配なことでもあります。
プラザキサにも、やや正確性が欠けますが、指標となる検査があることが指摘されています。 具体的には活性化部分トロンボプラスティンAPTT検査です。
このAPTTが、60秒を上回る場合、出血の副作用が生じやすいとしています。 ここで注意が必要です。プラザキサは、1日2回服用する薬剤です。つまり、このAPTTを測定するタイミングによって、値が変動いたします。 APTT60秒以上というのは、プラザキサの血中濃度がトラフの場合(血中濃度が最も低下している服薬前)です。 ピークではありません。


プラザキサに限らず新薬には付き物ですが、市販後の副作用報告も見うけられます。 抗凝固薬というお薬の性格上、もっとも注意すべき副作用は、”出血”です。具体的には、脳出血や胃潰瘍からの出血です。 やはりというか、市販後の副作用報告に”出血”の合併症があります。重篤なものでは、死亡例も報告されています。 厚生労働省から注意喚起がされましたが、あくまで”例”であり、トータルでは出血性の副作用は少ない薬剤とされます。


プラザキサによる出血性合併症が生じた場合、その対処は、やや大がかりになものでしたが、2016年10月、 待望の中和剤が認可されました。
その名は、特異的中和剤プリズバインド。
プラザキサ同様、日本ベーリンガーインゲルハイム社の薬剤です。
このプリズバインドは、プラザキサを特異的に結合し、投与直後から、抗凝固作用を中和します。
ワーファリンは、その機序からビタミンKが中和薬として使用可能でしたがが、プラザキサも、これで簡便に中和できることになります。
使用方法は、プリズバインド1回5g(2.5g/バイアルですので2バイアル)を、数分かけて静注または、必要であれば、急速静注します。
プリズバインド市販以前は、プラザキサの作用を低減するには、凝固因子を補充するために新鮮凍結血漿輸液(輸血)を行う必要がありました。
プラザキサ自体を体内から取り去るには、人工透析が有効とも言われておりました。
それが、このプリズバインドを投与するだけで、作用を中和可能となったのですから、劇的な進歩と言えます。
適応は、
・生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時
・重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時
となっております。
当然ではありますが、プラザキサによって上記が引き起こされている場合にのみ、プリズバインドの適応があります。


プラザキサですが、類薬も市販準備中と言われております。
rivaroxabanリバロキサバン(イグザレルトとして市販済み)、apixabanアピキサバン、edoxabanエドキサバンなどです。
プラザキサ(dabigatranダビガトラン)は抗トロンビン薬ですが、これらは経口抗Xa薬となります。 rivaroxabanリバロキサバン(イグザレルトとして市販済み)、edoxabanエドキサバンは1日2回服用、apixabanアピキサバンは1日1回服用です。 ワーファリンは肝不全患者に使用するときに注意が必要で、プラザキサdabigatranは腎不全に注意が必要です。 この経口抗Xa薬は、腎肝排泄です。肝不全患者、腎不全患者に、どこまで安全に使用できるか注目です。 プラザキサdabigatranは、生体利用率が6%程度と極めて低く、消化吸収の影響を受けやすい薬剤です。 これらは経口抗Xa薬は、プラザキサdabigatranより高い生体利用率を示します。このあたりの違いも効果に影響するのでしょうか。


気になるED治療薬との併用ですが、現在の所、各ED治療薬メーカーからの報告はありません。
しかし、プラザキサの性質上、ED治療薬との相互作用は否定できませんが、市販後数年が経過いたしましたが、 現時点では、相互作用に関しての、悪い報告はございません。 バイアグラレビトラシアリスの併用に関する情報がございましたら、追ってご報告いたします。


written by 勃起不全は池袋スカイクリニック