脂質異常症




【脂質異常症】

脂質異常症は、血清の脂質代謝異常のすべてを包括した名称です。
高脂血症や、高コレステロール血症と言った方が、なじみがあるかもしれません。
多くは、脂質異常症=高脂血症ですが、若干の問題があるため、脂質異常症が用いられるようになりました。
例をあげると、善玉コレステロール(HDL-コレステロール)が低下している場合です。低善玉コレステロールも、やはり、動脈硬化のリスクとなります。
また、低脂血症は、栄養状態の不良を意味していることも多く、ガンなどの悪性疾患が潜む可能性がございます。 このため、より多くの意味を持つ脂質異常症が用いられるようになっております。

脂質異常症は、なぜいけないのでしょうか?コレステロールや中性脂肪が異常でも、それだけでは症状を認めないことがほとんどです。 しかし、気付かないうちに動脈硬化が進んでしまい、脳梗塞や心筋梗塞など、動脈硬化により発症する重大な疾患を引き起こす原因となります。 動脈硬化は、ある意味、血管の老化現象のため、年齢とともに進行してしまうのは、致し方ない事ですが、 脂質異常症をはじめとする生活習慣病は、さらに動脈硬化の進行を加速します。
ちなみに日本における死亡原因の2位が心疾患、3位が脳血管疾患です(1位は癌)。このような重病になってしまうと、その後の生活にかなり制限が生じ、 場合によっては命を落とす危険もあります。

さらに動脈硬化は、勃起障害EDの原因になりえます。
一般に陰茎動脈の直径は1〜2mm程度であり、心臓の冠動脈の3〜4mm、総頸動脈の5〜7mmと比較してかなり細いため、EDは全身の動脈硬化を鋭敏に反映すると考えられています。
実際に多くの医学論文でEDと心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患との関連が報告されています。 冠動脈疾患を有する患者の93%は心臓の症状が出現する2〜3年前からEDを自覚していたとする研究もございます(Euro Heart J 27:2632-2639)。
動脈硬化を加速する脂質異常症に対し、適切な治療を行うことは、EDを治療する上でも必要なことです。

脂質異常症の治療薬とバイアグラ錠レビトラ錠シアリス錠との併用は可能な場合がほとんどです。
御自身で判断するだけでなく、主治医や専門医と相談、確認を行ったうえでED治療を行ってください。


【リピトール】

「リピトール」 アステラス製薬

リピトールは脂質異常症(高脂血症)で処方されるお薬です。
一般名はアトルバスタチンatorvastatinです。
人間の体内でコレステロールを合成する時に必要なHMG-CoA還元酵素を阻害します。
文字どうりHMG-CoA還元酵素阻害薬に分類されるのですが、長いので医療界ではスタチンと呼ばれています。 さらにそのスタチンの中でも悪玉コレステロール(LDL-C)を低下させる作用が強いのでストロングスタチンに分類されます。 本邦で市販された最初のストロングスタチンです。もっとも多く使われている脂質異常症治療薬の一つです。
悪玉コレステロールが高いと動脈硬化が加速されます。さらに動脈硬化はEDの原因の一つです。
脂質異常症があればきちんと治療、対応しましょう。

最近では、降圧薬との配合錠も市販されています。
バイアグラで有名なファイザー社製カデュエットがそれにあたります。 全世界で最も使用されている降圧剤である ノルバスク(成分名amlodipine)とリピトールの配合錠になります。

また、特許がそろそろ切れるため、今後、ジェネリック医薬品の市販もあると思われます。

リピトールは全てのED治療薬と併用可能です。


リピトール(アトルバスタチン)による治療が、勃起不全を改善したという報告があります。
脂質異常症があり、勃起不全がある患者さまは、治療しない手はないですね。


【リバロ】

「リバロ」(興和-第一三共)

リバロは脂質異常症(高脂血症)で処方されるお薬です。一般名ピタバスタチンpitavastatin。

コレステロールは、食事中から吸収されるだけでなく、人間の体内(肝臓)で合成されます。合成する時にHMG-CoA還元酵素が作用致します。
リバロは、これを阻害し、強力にコレステロールの合成を阻害いたします。
医療界でスタチンstatinと呼ばれるグループの脂質異常症のお薬です。 その中でもリバロは悪玉コレステロール(LDL-C)を低下させる作用が強いのでストロングスタチンに分類されます。 また、善玉コレステロール(HDL-C)の増加作用もあわせもちます。
ストロングスタチンには、リバロ以外にもリピトールやクレストールも含まれます。

リバロは日本で研究から臨床開発までされた唯一の国産スタチンです。
リバロの日本人を対象とした研究(LIVES Study)では動脈硬化を促進させる悪玉コレステロール(LDL-C)を31.3%低下させ、動脈硬化の抑制に働く善玉コレステロール(HD-C)を24.6%上昇させました。

動脈硬化はEDの原因の一つです。
リバロは全てのED治療薬と併用可能です。


【クレストール】

「クレストール」。(アストラゼネカ-塩野義)
成分は、ロスバスタチンカルシウムrosuvastatin calcium。スタチンと呼ばれるグループに属する脂質異常症の治療薬です。
スタチン系の脂質異常症治療薬は、肝臓のHMG-CoA還元酵素を阻害することにより、コレステロールの合成を抑制します。 その確実な効果から、非常によく使用される薬剤グループで、その中でも、クレストールの作用は強力です。

バイアグラ、レビトラ、シアリスとの併用は、もちろん可能です。

コレステロールは、動脈硬化を生じさせます。陰茎の血管も動脈硬化で障害されEDの原因にもなります。 治療することにより、EDが改善することも指摘されております。コレステロールの高い方は、治療を受ける事をお勧めいたします。


【リピディル】

「リピディル」あすか-武田,科研

リピディルはフィブラート系薬に分類される脂質異常症(高脂血症)のお薬です。
細胞核内受容体(PPARα)に作用し、主に肝臓での脂肪酸の合成を抑制することなどから、中性脂肪(トリグセライド)の合成を抑制します。
悪玉コレステロールが高い人よりも、むしろ中性脂肪が高い人に処方される事が多い薬剤です。
さらに動脈硬化の進行抑制に働く善玉コレステロール(HDL-C)を上昇させたり、尿酸値を低下させる作用もみられます。
2型糖尿病の患者さんを対象とした研究(FIELD試験)で、冠動脈疾患の抑制効果や糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症といった合併症の抑制効果も証明されました。

リピディルは全てのED治療薬と併用可能です。


【ゼチーア】

「ゼチーア」MSD-バイエル薬品
ゼチーア。一般名エゼチミブezetimibe。
ゼチーアは小腸での食事および胆汁中のコレステロール吸収を阻害することにより、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を低下させます。
コレステロールそのものを吸収抑制する薬剤で、従来のスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)やフィブラート系薬剤とは異なる作用機序のお薬です。 さらに、スタチンとの併用も可能で、併用することより強力に悪玉コレステロールを低下させます。

ゼチーアは2002年にアメリカで発売されて以来90カ国以上の国で処方されています。

ゼチーアは全てのED治療薬と併用可能です。ED治療薬の吸収までも抑制するといった報告はございません。


【コレバイン】

「コレバイン」。(田辺三菱)
コレバインの成分は、コレスチミドcolestimide。コレバインは陰イオン交換樹脂(レジン)に分類される脂質異常症の治療薬です。
コレバインは、もともとは高コレステロール血症治療薬として使用されておりましたが、効果がやや弱く、 確実な効果が期待できる他の薬剤が存在したため、使用頻度が少なくなっておりました。
しかし、最近になり、コレバインの使用により血糖が降下し、糖尿病が改善したとの報告が相次ぎ、 糖尿病治療領域では、にわかに注目を集める薬となりました。

コレバインの作用機序は、本薬剤は食事中のコレステロールを自ら吸収し、体内に吸収されるのを防ぐことにより、コレステロールの低下作用を発揮します。 コレバインの血糖降下作用は、これだけでは説明がつきません。 吸収阻害した分のカロリー以上に、血糖値が低下するためです。
現在では、これに加え、 腸管ホルモン(インクレチン等)に影響を与えていることが推測されております(詳細は不明です)。

コレバインは、美容外科等で、食べ過ぎの時に服用したり、太らないようにする薬、やせ薬として処方される事もございますが、日常臨床の中で、コレバインを使用して、 体重が減少する印象は、残念ですがございません。
やせ薬として、コレバインを服用する事には、無理があると考えます。

バイアグラ、レビトラ、シアリスとの併用は可能ですが、 コレバインは、他の薬剤の体への吸収を阻害する場合もあり、併用によりED治療薬の効果が減弱(ED治療薬がお体に吸収されない)する可能性も考えられます。

コレバインは、錠剤、細粒とございますが、服用量が多くないと効果が期待できず、また、温水で服用すると、口の中で薬剤が膨張し、飲み込みにくくなってしまいます。
副作用は、膨満感や腹痛、嘔気、消化不良などの腹部症状が多い印象の薬剤です。
コレバインは、腸閉塞の患者には禁忌となっております。


written by レトビラなら池袋スカイクリニック