血管内皮機能に注目した糖尿病におけるEDの発症機序



血管内皮機能から見る糖尿病におけるEDの発症機序

 第20回日本性機能学会東部総会で報告されたものです。
京都府立医科大学大学院医学研究科泌尿器外科学 部仁哲先生らによります。
解説しながら要点を記載したいと思います。

糖尿病は、勃起不全の危険因子因子のひとつと、私たちもホームページで記載させていただいております。
糖尿病は、国民病とも呼べるものです。 非常に有病率が高いのですが、1998年の白井らによる疫学調査では、本邦における勃起不全患者数は約1000万人と推定されており、 そのうち糖尿病を原因とするED患者は約100万人ほどと考えられています。
糖尿病は、みなさん御存じのとおり増加の一途をたどっており、それに伴い、おそらく糖尿病性ED患者数も増加していると考えられます。
糖尿病によるEDの頻度は、健常人男性の2~3倍、糖尿病男性の30~60%とされており、 糖尿病3大合併症である網膜症、腎症、神経障害の頻度と比較しても同程度の頻度になります。

糖尿病は勃起不全の最大の危険因子の一つであり、 EDが様々な糖尿病合併症の中で、最初に自覚しうる可能性の高い症状と考えられます。

糖尿病に伴うEDは、複数の因子によると思われ、原因追究のため、多くの基礎実験が行われ、報告されています。 糖尿病性EDの主要な成因として、自律神経障害の充進(糖尿病性神経障害)、および陰茎海綿体平滑筋の緊張を制御する血管内皮細胞の障害(動脈硬化)であるとする報告が多い。
ブログやホームページで紹介した通りの内容ですが、ここから先は、少し専門的になります。

糖尿病性勃起不全を引き起こす血管障害と神経障害に共通する分子機序として、 ①ポリオール経路の活性冗進、②グリケーションの冗進、③細胞内酸化ストレスの増加、 ④プロテインキナーゼC(PKC:proteinkinaseC)の活性化などが考えられている。
これが進行すると、一酸化窒素(NO)の産生、サトカイン分泌、血液凝固の調節と いった血管内皮機能の低下や骨髄からの血管内皮前駆細胞の産生・動員が低下し、 動脈硬化を促進するとされている。

糖尿病による血管の病理変化は、内膜、中膜の肥厚から血管のリモデリングの異常により、動脈硬化の増悪をきたす。 動脈硬化のメカニズムは、①血管拡張の低下(NOの産生低下)、②血栓傾向、③内皮依存性サイトカインの発現・活性・感受性の低下、 ④細胞外マトリックスの代謝異常、⑤血管内皮細胞の動員・機能の低下などが考えられる。

いろいろ難しいことが発表されておりましたが、これすべて勃起不全に関するものでなく、3大合併症である神経症、網膜症、腎症に共通するもので、 大血管障害(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞)などにも共通します。
私たちから、皆さまに、何がお伝えしたいかと言うと、もし、糖尿病を患っていて、EDを生じているなら、お体の中に、他の動脈硬化から生じる疾患が潜んでいる可能性があります。
主治医の先生に、恥ずかしがらず相談していただき、是非、精密検査を受けてください。


勃起不全は池袋スカイクリニック