StageC前立腺癌治療後の性機能の長期的検討



StageC前立腺癌治療後の性機能の長期的検討

第20回日本性機能学会東部総会での報告です。
東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野、並木俊一先生等の報告です。
多少の解説を加えながらご紹介いたします。

前立腺がんは、男性特有の癌です。年齢とともに発症率が上昇します。男性の寿命が延長し、 高齢男性が増加すればするほど前立腺がん患者数は増加します。
高齢化社会が進む本邦では、前立腺がん患者数は増加しており、また、治療後の生活の質QOLを向上させる必要がございます。 前立腺がん治療後に、勃起不全を発症することは、広く知られており、QOL低下の要因の一つは、勃起不全を中心とした性機能障害です。
ここでは、StageC前立腺がんに対する手術療法あるいは放射線治療施行後の勃起機能について5年間の前向き調査が報告されました。

対象は2002年11月~2004年12月までに前立腺がんと診断され、手術療法あるいは放射線療法が実施されたStageC前立腺がん患者111例。
前立腺がんstageCというのは、がんが前立腺の周囲にとどまっているものの、前立腺被膜を越えている、または精嚢に浸潤している状態で、 遠隔転移は認めないものの、進行がんにあたります。

対象111例の内訳は、手術療法群は48例、放射線療法群は63例です。
対象患者の年齢は、手術療法群が放射線療法群に比べて優位に高齢で、術前のPSA値は低値。
手術療法群の神経血管束温存については、片側温存が27%で温存無が73%で、両側温存例はなし。

放射線療法群は、照射方法で、強度変調放射線治療Intensity modulated radiotherapy24例(IMRT群)と3次元原体照射法39例(3DCRT群)に分かれます。
平均照射量はIMRT群が77Gy(76-80Gy)、3DCRT群が68Gy(66-72Gy)。

治療前の内分泌療法の施行率は手術療法群で48%、手術療法群では100%。

QOL調査は治療前及び治療後3,6,12,18,24,60ケ月に調査を行っています。
ここでは、勃起機能の評価にはUCLAProstateCancerlndexを用いられています。 これは、一般の方にはなじみの薄いものですが、こんな指標があると思って下さい。

治療前の検討では手術療法群が放射線療法群に比較して性機能が良好であった。 一方、性負担感は両群に有意差を認めなかった。
治療後の性機能は両群ともに低値を示し両群に差を認めなかった。
PSAfailure(治療後に前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAが低下するが、PSAの再度上昇を認めること)の有無で検討しても回復に差を認めなかった。
性負担感については手術療法群で術後有意に低値となったが、60ケ月目では術前の同様になっていた。 放射線療法群では治療後に性機能、及び性負担感に有意な変化を認めなかった。

StageC前立腺がん患者の治療後の性機能は手術療法及び放射線療法ともに低値であり回復傾向を認めなかった。
放射線療法群においては治療後の性負担感に変化を認めなかった。
StageC前立腺がん治療選択の際、患者様への有用な情報として提供できると結論されています。

勃起機能が低下してしまうのは、避けられないとのことです。 しかし、性行為を負担と感じることが、少ないのが救いでしょうか。 放射線療法では、治療後早期から、性負担感の変化がなく、 手術では、やはり体にメスを入れている、傷跡や心因的な問題などで、性負担感の回復に時間がかかるのでしょう。


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