本人およびパートナーの前立腺術後の性生活に対する調査報告



前立腺全摘除術後の患者およびパートナーの術後の性生活上の変化と希望

 第20回日本性機能学会東部総会での報告です。
三樹会病院、佐藤嘉一等の報告です。
多少の解説を加えながらご紹介いたします。

前立腺疾患は、男性特有の疾患で、高齢になるほど有病率が上昇します。 勃起不全も、高齢になるほど有病率が上昇します。
前立腺疾患で、前立腺の手術を行った場合、術後の勃起不全の発症が危惧されています。
高齢であれば尚更ですが、勃起不全の発症は患者様のQOLを著しく低下させます。
前立腺全摘除術後の性機能温存、勃起不全の発症抑制は、重要な課題です。
前立腺術後の性機能。勃起機能は、術前の性機能、勃起機能、 神経温存の有無により大きな影響を受けることが知られております。
性生活の希望がなければ、特に問題になるわけではありませんので、患者およびパートナーが、術後の性生活に対し、 どのように考えているか、どのような希望があるかは、術後の性生活を営む上で重要な要因です。
また日本では、米国と比べ、術後のバイアグラレビトラシアリス錠などの勃起不全治療薬の使用頻度が有意に少ないとの報告もあります。
そこで、患者およびパートナーに前立腺全摘除術後の性生活に対する考え、 および勃起薬の使用の希望に関し検討を行っています。

患者年齢48歳-74歳(中央値68歳)、妻年齢42-72歳(中央値64歳)。
術前に患者およびパートナー(今回の対象では全例が妻)に質問紙を別々に渡し、アンケートを取っております。

1.「術後の性生活についてどうお考えですか?」
という問いに対しては、患者および妻はそれぞれ、①重要、37%,12%、②あまり重要でない53%、56%、③全く重要でない10%、32% であった。

2.「術後の勃起能の維持・回復についてどうお考えですか?」
では、患者および妻はそれぞれ①できるだけ望む67%,40%②あまり望まない33%,60%であった。

3.「勃起改善薬の使用に関してどうお考えですか?」
という問いに対しては、患者および妻はそれぞれ、①希望する36%、24%、②あまり希望しない33%、28%、 ③使用したくない30%、48%という回答であった。

前立腺全摘除術後の性生活に関し、患者自身のアンケート結果では、半数以上の方が、 性生活があまり重要でないと回答しています。
パートナーを対象にしたアンケート結果では、術後の性生活が重要と考えていない頻度がさらに高い傾向が認められます。
逆に、患者様自身の半数は、手術に伴う勃起不全を危惧されています。
女性に比べ男性の方が、性生活に対して危機感を抱いている結果です。
さらに、パートナーの年齢は、非常に重要なファクターと考えますが、今回の報告では、その点については触れられておりません。
今回の報告は、妻年齢42-72歳(中央値64歳)とのことです。パートナーの年齢が若ければ、この結果もまた異なる事が予想されます。 男性は、パートナーの希望が伴えば、半数が性生活の希望があると、とらえても良いでしょう。 性生活は、パートナーの存在があって、初めて成立するものです。 性生活を重要視しない傾向や、患者およびパートナー間での性生活に関する考え方の違いは、術後の性生活に有意な影響を与えると思われます。
勃起薬の使用に関しては、パートナーにおいても約半数は許容的な回答であったが、患者、パートナーの3割および半数が使用したくないとの回答もあり、 さらなる普及も必要ですね。


勃起不全は池袋スカイクリニック