5α還元酵素阻害剤dutasteride(アボルブ)が与える男性ホルモンへの影響



前立腺肥大治療薬であるアボルブによるホルモンバランスの変化とQOL

 第21回日本性機能学会東部総会での報告です。
慶応大学医学部泌尿器科、前田高宏先生等の報告です。
多少の解説を加えながらご紹介いたします。

前立腺肥大に対して、アボルブ(dutasteride)の使用が可能になり、前立腺肥大症患者にとっては、治療の選択肢が増えました。 いままでは、前立腺肥大症の中心的な治療薬は、α遮断薬と呼ばれるもので、平滑筋を弛緩させることにより、排尿障害や残尿を改善するものでした。 しかし、これらは、前立腺肥大を根本的に改善する薬剤ではないため、症状が進行した場合、手術に移行するケースも少なからず存在しました。 アボルブ(dutasteride)は、前立腺肥大そのものを改善することを目的とした薬剤です。 場合によっては手術を回避する事もかのうかもしれません。
そのアボルブ(dutasteride)ですが、内服で血清テストステロンが上昇することが知られています。 しかし、その上昇が、患者様にどのような影響を与えるかは、十分に検討されていません。
そこで、アボルブ(dutasteride)の影響を調査報告されています。

平均年齢70歳の男性患者701例に対して、アボルブ(dutasteride)投与前、投与3カ月後に遊離、総テストステロン(男性ホルモン)、LH、FSH、PRLの検査を行い、IIEF-5、EHS、AMS、SF36質問票を用い、 前向きQOL調査が行われました。

アボルブ(dutasteride)投与前後で血清LH、FSH、PRLの値は変化せず、遊離テストステロン、 総テストステロンはともに約20%の増加を認めています。
アボルブ(dutasteride)投与前、遊離テストステロン低値の症例に限ると、投与後約50%の上昇率が確認され、 投与前値が低い群ほど遊離テストステロンの上昇幅が大きい傾向が認められています。
総AMSスコアは、投与前後での変化を認められないが、その一方、身体ドメインスコアの悪化症例に限ると、 遊離テストステロンの上昇と投与後の症状の改善に関連を認めたそうです。
SF36調査は、各ドメイン悪化症例を対象とすると、日常役割機能、全体健康感、体の痛みおよび、 活力ドメインのスコアが遊離テストステロンの上昇顕著例において有意な改善を認めた(p<0.05)。
IIEF-5スコアおよびEHS値は、投与前後で変化を認めなかった

遊離テストステロンが低く、QOLの悪化症例に対し、アボルブ(dutasteride)投与により一部の臨床症状が改善する可能性が示唆されています。

アボルブ(dutasteride)は、前立腺肥大症治療薬として期待され市販されましたが、それ以外にも効果が期待できそうです。
男性ホルモンであるテストステロンが上昇する事により、様々な症状の改善効果が表れています。
類似薬である、男性型脱毛症治療薬であるプロペシア(finasteride)で懸念されていた、性欲減退は、アボルブ(dutasteride)では、どうなのでしょうか?
IIEF-5スコアやEHSをみる限り、大丈夫そうですね。
高齢男性では、性腺機能低下症候群(loh症候群)、いわゆる男性更年期の診断がつかないまでも、男性ホルモンの低下が、多かれ少なかれ存在いたします。
このテストステロンの上昇と、それに伴う症状の改善効果を見てしまうと、高齢男性の前立腺肥大治療の第一選択薬になってしまいそうです。


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