通常生活時と比較し性行為sex中は心血管系疾患発症のリスクが高まります



セックスsex中の心血管系イベントの発症リスクについて

長らくの間、心臓疾患を罹患されている方は、運動制限を要すると考えられておりましたが、現在では、 ある程度の運動は、逆に心機能を良好に保つ効果があることが指摘されています。
では、持病として狭心症を指摘されている場合、安全に性行為を行う事が可能なのでしょうか?
アメリカ心臓病学会のステートメントの続きです。


性行為sexと心筋梗塞

対象の50~74%を50~60歳代の男性で構成される4つの臨床研究の解析は、 性行為sex中の心筋梗塞発症の相対リスクは、性行為sexを行っていない時に比べ、2.70倍に増加すると、結果づけています。
この心筋梗塞発症相対リスクの増加は、心筋梗塞の既往を持つ患者群と、心冠動脈疾患の存在が、事前に明らかになっていない群とで、差が認められていません。
座して生活する事が多い群(運動不足群)では、性行為sex中の心筋梗塞の相対リスクは、3.0倍に及びます。
これに反して、活発に運動をする群では、この相対リスクは1.20倍です。
The Stockholm Heart Epidemiology Programme(SHEEP)研究(50%は女性)では、やはり同様の報告がなされています。 座して生活する事が多い群では、活発に運動をする群に比べ、性行為sex中の心筋梗塞の発症が多い事が指摘されています (相対リスク 座して生活する事が多い群vs活発に運動をする群 4.4vs0.7)。

性行為sexは、心血管系イベントの増加に関連致しますが、その絶対比率は、非常に小さいものです。 なぜなら、性行為sexに割く時間は短く、全体のわずかなパーセンテージにしか過ぎないからです。
性行為sexは、急性心筋梗塞の発症原因の1%以下です。
絶対リスクは、週1時間の性行為sexは、心筋梗塞のリスクを、年間10000万人あたり2~3人しか増加させません。
性活動の活発な人々においては、あまり活発でない人々と比較して、より絶対リスクが少ないと経験的に思われます。
心筋梗塞の既往のある患者様では、心筋梗塞再発や死亡のリスクは10%程度と見積もられています。 (運動耐用能の維持された患者様では3%程度)。
このような患者様では、性行為sexによる心筋梗塞の再発や死亡の危険性は、1時間当たり10/1,000,000回から、20~30/1,000,000回に増加します。


性行為sexと心室性不整脈/心臓突然死

突然死をきたした5559例の剖検の報告では、34例(0.6%)が性行為sex中の死亡と報告されています。
他の2つの剖検の研究報告でも、同様に、性行為sexに関連した突然死の割合は、0.6~1.7%と低率です。
性行為sex中の死亡例の82~93%は男性であり、その大部分の75%は、婚外の性行為sexであったとされています。
多くのケースは、慣れ親しんだ環境外で、自分より若い女性をパートナーとしており、さらに、過食後や過度のアルコール摂取後である事も少なくありません。
1週間当たり性行為sexの時間が1時間増加する事により増加する、突然死の絶対リスクは、1年当たり、1/10000人以下と見積もられております。

心室性不整脈のリスクのある患者における、性行為sexの影響に関するデータは、わずかしかありません。
心筋梗塞後の患者を対象にした研究では、性行為sexと他の運動行為と比較しても、異所性の心筋活動の増加は指摘されません。
他の報告では、心筋梗塞後の患者に行った一般的な運動負荷試験時と比較し、性行為sex中の異所性心筋活動やその他の不整脈の頻度は、むしろ低率でした。
また、小規模ではありますが、ICD(internal-cardioverter-defiblillator:体内に埋め込む不整脈の除細動器) の植え込みを行った43例の患者(8例は女性患者)の観察では、頻脈性不整脈の相対リスクは、労作や心的ストレス、性行為sex、すべて同程度と報告もございます。


ED治療は池袋スカイクリニック


  1. 心臓病患者における性行為に対するステートメント-序文-
  2. 性行為と心血管系疾患のリスク - 心臓病患者における性行為に対するステートメント
  3. 心血管系疾患と性行為のレコメンデーション
  4. 冠動脈疾患と性行為のレコメンデーション
  5. 心不全と性行為のレコメンデーション
  6. 心臓弁膜症と性行為のレコメンデーション
  7. 不整脈、ペースメーカー、ICDと性行為に関する推奨事項のレコメンデーション
  8. 先天性心疾患と性行為に関するレコメンデーション
  9. 肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)と性行為に関する推奨事項
     - 心臓病患者における性行為に対するステートメント
  10. 心血管系疾患の治療薬と性機能に関する推奨事項
     - 心臓病患者における性行為に対するステートメント
  11. バイアグラ等のPDE5阻害剤によるED治療に関する推奨事項
     - 心臓病患者における性行為に対するステートメント
  12. 局所的な、または外用エストロゲン療法(女性ホルモン療法)
     - 心臓病患者における性行為に対するステートメント
  13. ハーブや薬草による性機能障害治療に関するステートメント
  14. 性行為sex、心血管疾患と精神的な(メンタルな)問題について -AHAのステートメント-
  15. 患者とパートナーに対するカウンセリング -AHAのステートメント-
  16. サマリー(結語) -AHAのステートメント-