「アンジオテンシン変換酵素阻害剤」
アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE(angiotensin converting enzyme)阻害薬)は、
人体における強力な昇圧系(血圧を上昇させる経路)であるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)においてアンジオテンシン変換酵素を阻害します。
もう少し具体的には、アンジオテンシン1をアンジオテンシン2へ変換をする酵素であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害します。
アンジオテンシン2は、強力な昇圧物質です。血管平滑筋を収縮することにより血管抵抗が増大、血圧の上昇をきたすほか、さらに副腎からアルドステロン
(ナトリウムを体内に貯蔵させるホルモンです。つまり、塩分を体内に蓄えます)の分泌を促進、血圧を上昇させます。
アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)は、これを抑制することにより、効果発現致します。
ACE阻害剤降圧作用を有するのみでなく、心筋保護作用や腎保護作用などが指摘され、市販当初、画期的な降圧剤として注目を集めました。
主には高血圧症の方に投与されるお薬ですが、上記の理由で正常血圧の方にも、心臓(心肥大改善効果・心房細動発症抑制効果)、腎臓(腎保護作用)を守る目的や、
糖尿病を合併されている方(インスリン感受性改善作用)に使用されることもあります。
1980年代前半から用いられ、高血圧に糖尿病や心不全、脳循環不全などの合併がある例では第1選択薬となります。
もちろん現在でも、全世界的に広く使用されている、なくてはならない降圧薬の1つです。
最近では、同効薬であるアンジオテンシンⅡ受容体阻害薬(ARB)が、このACE阻害薬に取って代わられつつ有ります。
その理由は、大規模臨床試験において、ACE阻害剤と比較し、非劣性が証明されている事と、ACE阻害薬特有の副作用である空咳を生じない事が上げられます。
副作用の空咳に関しては、日本人において発現頻度が高いと言われております。
しかし、ACE阻害薬の有利な点もございます。
それは、ARBと比較し費用面で優れる事です。
また、ACE阻害剤の誤嚥性肺炎予防効果も注目されています。 副作用である空咳を利用して、誤嚥を予防しようと言うものです。 高齢者や脳梗塞の既往を有す者は、咽頭-喉頭のサブスタンスPという物質が減少し、 嚥下反射や咳反射が減少していることが知られています。 ACE阻害薬は、このサブスタンスPの分解を阻害いたします。 つまり、嚥下反射や咳反射を改善する事により、誤嚥を抑制する可能性があり、実際に、 誤嚥性肺炎を予防したとする報告がございます。
その他にも、このサブスタンスPは、認知機能にも影響を与えるとされ、
ACE阻害薬が認知機能にも好影響を与える可能性が示唆されています。
特に東北大学から報告されたコバシル(ペリンドプリル)の認知機能への影響は、話題になりました。
高血圧による血管のダメージがEDの原因となるのは明らかなので、血圧を下げなければならないのですが、一部のACE阻害薬は薬剤性EDをきたすこともあります。
ED治療薬との併用は服薬されているACE阻害剤の種類によりますが、たいていは問題なく併用可能です。
バイアグラ、レビトラ、シアリス
の併用は可能とお考えください。
具体的なACE阻害薬の名称は、カプトリル・レニベース・ロンゲス・セタプリル・アデカット・タナトリル・エースコール・コバシル・コナンなどなど。
ジェネリック医薬品もあるので、服薬中のお薬が分かるように、お薬手帳かお薬自体を持参して相談してください。
written by 勃起不全は池袋スカイクリニック