後遺症としてEDが発症する

2019年に中国武漢に由来する新型コロナウイルスのパンデミックでは、全世界で1億5千万人以上が感染し、350万人以上が死亡したとされます。
当時のパンデミックによる危機的な状況は改善しておりますが、断続的にコロナウイルスの流行は生じており、それによって、お体に様々な影響が生じていることも事実であり、未だ、完全に収束したとは言えない状況が続いています。
男性では女性よりも重症化・死亡率が高いことが指摘されています。アンドロゲン(男性ホルモン)受容体がウイルスの細胞侵入に関与している可能性も指摘されています。
新型コロナウイルスのパンデミック以降、全世界から、コロナウイルス感染の後遺症としてEDが生じることが報告され、そのメカニズムが研究されています。
陰茎の血管内皮細胞を傷害する
勃起には陰茎の血管の反応が重要です。血管の反応とは、血管内皮細胞の機能のとお考えしていたいて、差し支えございません。血管内皮細胞由来の一酸化窒素NOが、血管を拡張させ、陰茎海綿体を充血させることで勃起が得られます。
新型コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体および膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)を介して血管内皮細胞に侵入し、内皮の機能を破壊させることで血管内の血流調節に異常を生じさせると考えられています。
血管内皮細胞が傷害されると、陰茎海綿体などの血流が阻害され、EDを発生させます。
精巣への直接的な障害
新型コロナウイルスの侵入経路であるACE2受容体は、精巣(睾丸)(Leydig細胞やSertoli細胞)に豊富に発現しています。
つまり、新型コロナウイルスは、精巣機能を障害させる可能性があります。
その結果、テストステロンなどの男性ホルモンが減少し、EDを中心に男性機能に悪影響を及ぼします。
しかも、ACE2とTMPRSS2は、どちらもアンドロゲン(男性ホルモン)の調節を受けていることも示されており、男性機能が、コロナウイルスに対して脆弱であるともさえ言えます。
心理的ストレス
ウイルスの蔓延を抑えるため、世界中の政府や政策主体は、社会的距離の確保、隔離、都市封鎖など、前例のない制限措置をいくつも実施しました。これらは人々の生活を劇的に変え、世界経済のさまざまな側面に甚大な影響を及ぼしました。
このような措置はCOVID-19の制御に効果的な戦略であったものの、人々を心理的苦痛の増大にさらすことにもなりました。
ロックダウン、不安、孤立、死への恐怖など、精神的負荷もまた、性欲減退やEDを引き起こす要因と考えられています。
個人のキャラクターも当然ながら影響します。
神経症傾向と外向性の低さ、そして年齢に関連した性的な信念が、男性の性機能と苦痛を予測する上で関連しているとされています。
様々な要因が重なってEDになる
COVID-19がEDに関与していることは、多くのデータから裏付けられています。
EDは多くの場合、内皮障害、精巣機能障害、心理的要因が複合的に作用して発症していることが示唆されますが、正確な病態生理は完全には解明されていません。
EDの予後
EDは一過性で、時間とともに自然に改善することがあるとする一方で、長期的に改善が見られないケースも少なくありません。
高齢者や急性期に大うつ病を合併した場合は、EDが持続するリスクが高いとされています。
治療は、シアリスなどのいわゆるED治療薬を使用する対症療法を行って、経過を見ていくことになります。
積極的な治療法は、現在、確立されていません。
継続的なフォローが必要です。
Tip of the iceberg: erectile dysfunction and COVID-19
Int J Impot Res. 2022 Mar;34(2):152-157.





