自殺念慮について|GLP-1ダイエット|池袋スカイクリニック

自殺念慮について|GLP-1ダイエット

池袋スカイクリニック

自殺念慮について|GLP-1ダイエット

2026年2月13日

Table of Contents

GLP-1受容体作動薬と自殺念慮の因果関係は否定的

誤解を招かないように結論から延べます。

欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)は、利用可能な証拠から、GLP-1受容体作動薬(つまり、マンジャロやリベルサスなど)と抑うつの増悪、自殺念慮や自殺企図との因果関係を支持しないと結論づけています。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、自殺念慮等の報告を受けて評価を継続しているが、現時点で因果関係を示す証拠は見つかっていないとしている。一方で、米国の一部の肥満治療用GLP-1作動薬の添付文書では、抑うつ悪化や自殺念慮の出現に注意し、症状が出た場合は中止するよう記載されています。
以下に、経緯を示します。

ご興味の有る方は、読み進めて下さい。

欧州の副作用報告システム EudraVigilance に自殺念慮の自発報告があり正式な調査が始まる

そもそもの始まりは、市販後副作用調査の一環である欧州の副作用報告システム EudraVigilance に、散発的ながら、自殺念慮、抑うつ症状、自殺企図の報告があったことに端を発しています。EudraVigilanceとは、欧州医薬品庁(EMA) が運営する欧州全体の医薬品副作用(有害事象)報告データベースです。医師・薬剤師・製薬企業・患者から
「この薬を使った後に起きた症状」 が自発的な報告としてデータベースとして蓄積されます。単に報告であり、因果関係は問われていません。

つまり、
「GLP-1受容体作動薬を使った人が、こういう症状を訴えた」
という因果未確定の自発的な報告になります。

2023年7月、これを安全性シグナル(注意すべき兆候)と捉え、因果関係の正式な調査が始まっています。

アメリカ食品医薬品局FDAも、これに追従し調査開始

また、アメリカ食品医薬品局FDAは、欧州医薬品庁EMAによる安全性シグナル調査の開始と、それに伴い国際的に注目されたことにより、独自に調査を開始しています。

アメリカにも、欧州の副作用報告システムEudraVigilance 同様に、FAERS(FDA Adverse Event Reporting System)というものがあります。そこにも、自殺念慮などの報告があったものの、安全性シグナル(注意すべき兆候)と捉えるほど、報告件数としては多くなかったようです。
EMAがシグナルを出したため、FDAも立場上、“確認義務”として調査を開始したとも言えます。

GLP-1受容体作動薬の全世界的な需要から、仮に、頻度として稀であったとしても、社会的影響が大きいと判断したのかもしれません。

2024年4月 EMAは”自殺との因果関係を支持する証拠なし”と結論

“The PRAC has concluded that the available evidence does not support a causal association between GLP-1 receptor agonists and suicidal and self-injurious thoughts and actions.”(公式声明より抜粋)

PRAC(医薬品安全性委員会)は、現在入手可能なエビデンスを総合的に評価した結果、GLP-1受容体作動薬と自殺念慮または自傷行為との間に因果関係があることを支持する証拠は認められない、との結論に至った、としています。(本報告をもって調査終了となっています)

注:PRAC(Pharmacovigilance Risk Assessment Committee)は、欧州医薬品庁(EMA)の傘下に設置された専門委員会で、EU域内で承認された医薬品の市販後安全性を監視し、リスク評価・管理を行うための重要な役割を担っています。

2024年1月 FDAは”自殺との因果関係の証拠なし(監視継続する)”

“Our preliminary evaluation has not found evidence that use of GLP-1 receptor agonists causes suicidal thoughts or actions.”(公式声明より抜粋)

FDAによる現時点での予備的評価では、GLP-1受容体作動薬の使用が自殺念慮または自殺行動を引き起こすという証拠は確認されていない。

追加として、

“However, because these medicines are widely used, FDA continues to monitor this issue.”

ただし、これらの医薬品は非常に多くの患者に使用されているため、FDAは引き続き本件の監視を継続する、としています。

自殺との因果関係を否定する研究報告

米国とヨーロッパにおける2つの薬物疫学的研究の結果、GLP-1受容体作動薬に関連する自殺率の指標が有意に低下することが明らかにしています。

さらに、アルコール使用、抑うつ障害および双極性障害、ならびにパーキンソン病例における研究報告でも、自殺率の出現または悪化は、有意ではないと報告されています。

重度の精神疾患を持つ人における向精神薬関連体重の増加を緩和するためにGLP-1受容体作動薬が処方された場合においても、自殺率の悪化は報告されていません。

(後ほど別項でご紹介したいと考えます。)

ダイエット治療に使用する場合は、信頼できる医師から説明を

マンジャロ等のGLP-1受容体作動薬は、一部、肥満症の適応が有るものの、肥満重症例に限られるため、適応に従った処方は限られています。

全世界的に、著名人が、より一般的なダイエット目的に使用していることをSNSなどで報告していることもあって、いわゆるダイエット治療用としての普及が著しい薬剤です。

ここでは、GLP-1受容体作動薬をダイエット治療に用いることの是非については、おいておきますが、少なくとも、抑うつの増悪、自殺念慮、自殺企図などのメンタルヘルスへの悪影響は考えなくとも良いと思われます。

ただし、ダイエット目的で使用する場合は、適応外処方となるため、仮に薬害が生じた場合でも、医薬品副作用被害救済制度が適応されません。

信頼できる医師から十分な説明を受け、納得した上でダイエット治療を行うようにして下さい。

参照:

1)Meeting highlights from the Pharmacovigilance Risk Assessment Committee (PRAC) 8-11 April 2024

https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-pharmacovigilance-risk-assessment-committee-prac-8-11-april-2024

2)01-11-2024 FDA Drug Safety Communication

https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/update-fdas-ongoing-evaluation-reports-suicidal-thoughts-or-actions-patients-taking-certain-type

3)Glucagon-like peptide-1 receptor agonists (GLP-1 RAs) and suicidality: A replication study using reports to the World Health Organization pharmacovigilance database (VigiBase®)

J Affect Disord. 2025 Jan 15:369:922-927.

doi: 10.1016/j.jad.2024.10.062. Epub 2024 Oct 19.

【GLP-1ダイエット】に関する最近の記事

肥満はEDの原因の一つであり、特に中等度以上のEDと関与している。BMIを確認しましょう。
肥満は中等度以上のEDと関与

肥満と勃起不全(ED)の関係についての研究は、多数報告されております。しかし、その多くが欧米人を対象としております。欧米人とアジア人では、肥満の程度と有病率が異なります。そのため、その結果を、アジア人に、そのまま当て嵌めてよいものか、疑問が生じます。ここでは、男性性機能外来を受診したアジア人(若年中国人)男性において、肥満とEDの関係を調査した研究報告をご紹介いたします。果たして、どのようなBMIが男性機能に影響を及ぼすのか?詳細をぜひご覧ください。

Read More »
タダラフィルは慢性炎症を改善し、アンチエイジング効果を発揮する可能性が有る
低用量タダラフィルは炎症マーカーを改善する

タダラフィルは、ED治療薬として知られるだけでなく、炎症マーカーを改善する可能性があることが注目されています。慢性炎症は老化を促進させる要因の一つであり、タダラフィルの服用がアンチエイジングに繋がるかもしれません。最近の研究では、タダラフィルが炎症マーカーを改善することが示され、シルデナフィルとの比較も行われました。この興味深い結果が、今後のアンチエイジング医療にどのような影響を与えるのか、ぜひご覧ください。

Read More »
シルデナフィルなどのED治療薬は大腸がん術後の死亡リスクと遠隔転移リスクを低下させる
大腸がん術後のED治療薬の使用は死亡と転移リスクを減少させる

大腸がん術後のED治療薬の使用が、死亡リスクや転移リスクを減少させる可能性があるという研究結果が報告されています。スウェーデンの全国データベースを基にした解析では、術後にED治療薬を使用した患者は、使用しなかった患者に比べて死亡リスクが18%低下し、転移リスクも15%減少したことが示されています。ED治療薬が術後の免疫力回復に寄与する可能性について言及されています。

Read More »
有酸素運動はEDを改善するため、習慣的に運動を行う必要がある
有酸素運動はEDを改善する

有酸素運動を行うことで男性の勃起機能を改善することが、多くの研究で示されています。運動習慣は、国際勃起機能スコア勃起機能ドメインを平均2.8ポイント改善します。特に重症例ほど効果が大きいとされ、その効果はED治療薬に匹敵します。運動によって、陰茎の血流が改善する、男性ホルモンであるテストステロンが増加する、様々なストレスを発散しうることが、主なメカニズムとされます。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ続きをご覧ください。

Read More »
抗精神病薬の副作用として体重増加がありますが、ガイドラインにてメトホルミンによる予防が推奨
抗精神病薬による体重増加予防にメトホルミン

現代人は、ストレスにさらされる中で、うつ病や双極性障害、不安障害などの精神疾患が増加しています。抗精神病薬による治療が進む一方で、体重増加や健康障害のリスクも高まっています。特に、オランザピンやクロザピンなどの高リスク薬では、体重増加が顕著です。そこで、メトホルミンが抗精神病薬誘発性体重増加の予防に有効であることが、最新のガイドラインで推奨されています。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ続きをご覧ください。

Read More »
タダラフィルの血管拡張作用は脳小血管病を改善しうるのか?
脳小血管病に対するタダラフィルの治療効果について

脳小血管病は、脳血管性認知症の一因とされ、その予防と治療法に関心が高まっています。皮質下の脳梗塞または虚血であり、隠れ脳梗塞のげんいんでもあります。ED治療薬であるタダラフィルは、血管を拡張し血流を増加させます。このような作用を持つことから、脳血流を改善し、脳小血管病に効果があるのかを検討した研究があります。この研究の結果や、今後の可能性についてご紹介します。

Read More »