GLP-1受容体作動薬のデュラグルチドはED発症を僅かに抑制する|池袋スカイクリニック

GLP-1受容体作動薬のデュラグルチドはED発症を僅かに抑制する

池袋スカイクリニック

GLP-1受容体作動薬のデュラグルチドはED発症を僅かに抑制する

2025年8月27日

Table of Contents

GLP-1アナログ製剤のEDへの影響

勃起機能は、陰茎の血管と、勃起を司る神経が健康であることが大切です。糖尿病は、主要なEDの原因であることは、以前より指摘されていますが、この2つの要素にダメージを与えます。

最近、GLP-1受容体作動薬に出現により、糖尿病治療は新たなステージを迎えています。さらに、リベルサスやオゼンピック(セマグルチド)やマンジャロ(チルゼパチド)など、より強力なGLP-1受容体作動薬も市販され、これらが主に使用されるようになっています。これらの薬剤は、体重減少効果が高いため、世界的にダイエット目的での使用が増加しています。

まだまだ歴史の浅い治療薬なため、その副作用についても、不明な点もあります。

その一つが、GLP-1受容体作動薬によるEDへの影響です。

デュラグルチド(トルリシティ)とEDの関係

リベルサスやオゼンピック(セマグルチド)やマンジャロ(チルゼパチド)は、比較的新しい薬剤なため、EDに関する大規模な副作用報告がないため、ここでは、旧来のデュラグルチド(トルリシティ®)による報告を、ご紹介します。

REWIND試験は、糖尿病患者における、デュラグルチドの心血管転帰に及ぼす影響の二重盲検、プラセボ対照ランダム化試験で、24カ国の371サイトで行われています。その臨床試験の項目の一つに、新規のEDの発症が含まれています。

過去に心血管イベントまたは心血管リスク要因のいずれかを持っていた2型糖尿病の50歳以上の男性において、ベースライン、2年、5年、および研究終了時に、国際勃起機能指数(IIEF)アンケートに記入し、調査分析をっています。IIEFの勃起機能サブドメインスコアによって評価された、中等度または重度の勃起不全の初めての発生の有無が主要なエンドポイントです。

2011年8月18日から2013年8月14日までの間に、平均年齢が65.5歳の5312人の男性参加者のうち3725人(70.1%)が分析され、そのうち1487人(39.9%)が心血管疾患の既往歴があり、2104人(56.5%)がベースラインで、既に中等度または重度のEDを有していたとされます。

非ED例に対してフォローされていることになりますが、つまり、EDのハイリスク群に対して、デュラグルチドのED発症に対しての影響が評価されています。

デュラグルチドはED発症を抑制する

EDの発生率は、デュラグルチド群で100人年あたり21.3、プラセボ群で100人年あたり22.0でした(HR 0.92、95% CI 0.85-0.99、p=0.021)。

僅かな差ですが、デュラグルチド群の男性は、プラセボ群と比較して勃起機能サブスコアの低下が少ないという結果が得られています。僅かな差なため、これを持って、ED発症抑制のためにデュラグルチドを使用することはありません。

EDハイリスク群を対象にしていなかった場合は、また違った結果が得られた可能性もありますが、少なくとも、悪影響は無いと考えられます。

最近では、デュラグルチドは、より効果の血糖改善効果や体重減少効果の高いマンジャロ(チルゼパチド)などに取って代わられていますが、同じGLP-1受容体作動薬に分類される薬剤の長期使用の報告は貴重なものです。

オゼンピック(セマグルチド)によるED発症の増加報告もあるため、薬剤によって作用が異なる可能性も否定はできません。今後の報告が待たれます。

Erectile function in men with type 2 diabetes treated with dulaglutide: an exploratory analysis of the REWIND placebo-controlled randomised trial

Lancet Diabetes Endocrinol. 2021 Aug;9(8):484-490.

DOI: 10.1016/S2213-8587(21)00115-7

新型コロナウイルス後遺症としてEDが生じることが全世界から報告されている
新型コロナ感染症(COVID-19)とED

新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちの健康にさまざまな影響を及ぼしましたが、その中でも特に注目されているのが勃起不全(ED)です。男性ホルモンの減少や血管内皮細胞の障害、さらには心理的ストレスがEDの発症に関与していることが明らかになっています。

Read More »
マンジャロのダイエットの使用は、本当に危険なのでしょうか?
マンジャロはニュースになるほど危険な薬なのか?

マンジャロは、糖尿病治療薬として注目される一方で、ダイエット目的での使用に対して批判的な意見も多く存在します。特に、膵臓疾患や胆道疾患のリスクについての懸念が報じられていますが、実際の研究結果はどうなのでしょうか?本記事では、マンジャロの副作用やリスクについての最新の調査結果を詳しく解説し、ダイエット治療におけるその位置づけを考察します。あなたの健康管理に役立てて下さい。

Read More »
EDとメタボの関連が指摘されていますが、体重調整ウエスト指数は、よりEDとの相関性が高い
EDとメタボの新たな指標|体重調整ウエスト指数

メタボリック症候群、いわゆるメタボと勃起不全(ED)の関係について新たな指標が提案されています。体重調整ウエスト指数は、内臓脂肪の影響をより正確に反映し、EDのリスクを予測することが示されています。この指標は、従来のBMIやウエスト周囲径よりも優れた予測能力を持つため、意識することで、メタボの改善がEDの予防につながる可能性があります。

Read More »
低強度体外衝撃波治療は血管原性EDを改善する可能で位があるが神経原性EDには無効
EDに対する低強度の体外衝撃波療法

勃起不全(ED)に対する低強度体外衝撃波療法(LI-ESWT)の臨床的有効性についての研究結果を紹介します。920名の男性を対象にしたレビューでは、348名が統計的に有意な改善を示した一方で、572名は効果を得られなかったことが明らかに。特に血管性EDには効果が期待されるが、改善幅は軽微です。一方、神経性EDには限界があるとされています。治療法の選択において、過度な期待を持たず、医師と相談することが重要です。

Read More »
マンジャロとオゼンピックの用量別ダイエット効果の比較
マンジャロvsオゼンピック|ダイエット効果

マンジャロとオゼンピック、どちらがダイエット効果に優れているのでしょうか?最新の研究結果を基に、これらの薬剤の比較を行います。特に、マンジャロはオゼンピックよりも体重減少や糖尿病のコントロールにおいて優れた結果を示しています。ダイエットを成功させるための選択肢を知りたい方は、ぜひ続きをご覧ください。

Read More »
バイアグラとシアリスの効果などの直接比較を解説しています
バイアグラとシアリスの効果の直接比較

バイアグラとシアリス、どちらが優れているのでしょうか?1998年に登場したバイアグラと、2003年に市販されたシアリスは、ED治療に欠かせない薬剤です。最新のメタ解析によると、両者のED改善効果に差はないことが示されていますが、使用感や副作用には違いがあります。果たして、どちらがあなたに合った選択肢となるのでしょうか?詳しい比較と選び方について、ぜひご覧ください。

Read More »