インスリン抵抗性を伴う非糖尿病ED例におけるシルデナフィルにメトホルミンの追加効果

糖尿病治療において基本となる薬剤とも言えるメトホルミン。ここでは、メトホルミンによるED改善効果を示唆する研究報告をご紹介します。
メトホルミンは、さまざまな作用が報告されておりますが、一般的には、インスリン抵抗性改善作用が抗糖尿病効果をもたらしていると考えられています。
インスリン抵抗性というのは、インスリンは分泌されているものの、その作用が減弱(作用に抵抗)していることを指します。なかなか専門的になってしまうので、一般的の方には、肥満または肥満傾向がある方と考えていただいて、大方、問題ありません。言い換えると、いわゆるメタボな方と、お考え下さい。
シルデナフィル100mg効果不足例に対するメトホルミンの追加効果の検討
インスリン抵抗を有す非糖尿病男性(つまり糖尿病を有さないメタボ男性)において、さらにシルデナフィル100mgの効果が不十分な例において、糖尿病治療薬であるメトホルミン(1700mg:850mgx2)を追加することによる勃起改善効果が検討されています。
対象患者数は30名で、メトホルミン併用群(17名)、プラセボ群(13名)に無作為に振り分けられ、二重盲検法がとられています。国際勃起機能評価表 IIEF‑5、ホメスタシスモデル評価(HOMA)で評価(IR = HOMA ≥ 3)されています。
メトホルミンは国際勃起機能評価IIEF-5スコアを有意に改善する
メトホルミン投与後、2か月目には IIEF‑5 スコアが有意に改善(17.0 ± 6.0 vs 14.3 ± 3.9, P = .01)、HOMA も有意に低下(3.9 ± 1.6 vs 5.5 ± 2.4, P = .01)。さらに 4か月目には IIEF‑5 が 19.8 ± 3.8 vs 14.3 ± 3.9(P = .005)、HOMA は 4.5 ± 1.9 vs 5.5 ± 2.4(P = .04)と改善しています。一方、プラセボ群ではこれらの改善は認められなかったとしています。
副作用については、メトホルミン群で 61.5%、プラセボ群で 7.7% と、前者が有意に多く報告されました(P = .03)。副作用は主に胃腸症状で軽度であり、治療中断に至ることはありませんでした。
結論として、シルデナフィルに反応が乏しい インスリン抵抗性を伴う非糖尿病男性に対し、メトホルミン併用は インスリン抵抗性を改善し、勃起機能の改善につながることが示されています。
メトホルミンによる勃起改善メカニズム
勃起には主に血管内皮細胞から放出される一酸化窒素(NO)が関与しています。インスリン抵抗性は血管機能障害を引き起こし、NOの合成や放出が低下します。つまり、インスリン抵抗性が改善することが、勃起機能を改善させます。
メトホルミンによって、インスリン抵抗性が改善することが、勃起機能の改善につながっています。
冒頭に述べましたが、メトホルミンにはさまざまな作用が報告されています。例えばですが、糖尿病発症予防効果や体重減少効果なども証明されています。
シルデナフィル100mgで効果が得られない、比較的重症度の高いEDに対し、メトホルミンを定期服用するだけで、IIEF-5スコアが5ポイント以上改善することは、注目すべき効果です。
サンプル数が少ないため、より大規模な臨床検査の結果を待ちたいところです。
Addition of metformin to sildenafil treatment for erectile dysfunction in eugonadal nondiabetic men with insulin resistance. A prospective, randomized, double-blind pilot study
J Androl . 2012 Jul-Aug;33(4):608-14.