糖尿病患者におけるED治療薬と全死亡率低下の関係|池袋スカイクリニック

糖尿病患者におけるED治療薬と全死亡率低下の関係

池袋スカイクリニック

糖尿病患者におけるED治療薬と全死亡率低下の関係

2026年2月13日

Table of Contents

ED治療薬の使用経験は糖尿病例において全死亡率を低下させる

一般にED治療薬というと、PDE5阻害剤(Phosphodiesterase type-5 inhibitor)を指します。 具体的には、バイアグラ(シルデナフィル)やシアリス(タダラフィル)です。 ED治療薬は、1999年にバイアグラが市販されて以降、勃起不全治療を劇的に変化させました。安全であるからこそ普及している薬剤ですが、未だ、心臓や体への負担を心配される方がいらっしゃいます。 これらED治療薬は、一部の報告では、心臓肥大の抑制など、心臓保護作用も指摘されています。 ここでは、糖尿病患者例において、ED治療薬と全死亡率との関係を調査した報告を、ご紹介したします。

2型糖尿病と診断された男性を平均7年追跡調査

イギリス中部および東部チェシャーの42の一般診療電子カルテから、2007年以前に2型糖尿病と診断された40〜89歳の男性5,956人を抽出、2007年〜2015年の期間、おおよそ平均にsて7年間にわたりフォローし、ED治療薬と全死亡率の関係を評価しています。

ED治療薬使用例は、1,359人となっています。

ED治療薬は、カルテをベースにした処方履歴を対象としているため、その使用頻度に関しては不明となっています。基本的には、ED治療薬は、定期的に服用するものではなく、必要時に頓服していたと推測されます。

ED治療薬薬使用者は、非使用者と比べて全死亡のハザードが約46%低下

全死亡とは、原因は問わず、全ての死亡になります。

例えばですが、死因が、急性心筋梗塞であっても、肺炎やガンであっても、その全てがカウントされています。

死亡リスクの低下(HR=0.54(0.36~0.80);p=0.002)は、年齢、推定糸球体濾過率、喫煙状態、脳血管事故(CVA)の既往、高血圧、心筋梗塞(MI)の既往、収縮期血圧、スタチン、メトホルミン、アスピリン、β遮断薬の使用の有無を調整した後も引き続き維持されたとしています。

ハザードが46%低下だと、一般の方は理解が難しいかもしれません。

実際の死亡率は、ED治療薬使用者:19.1% vs 非使用者:23.8%となります。

ここでは、死亡率の増加傾向は無いと捉えていただければよいかと思います。

ちなみに、ED治療薬以外では、スタチンstatinと呼ばれる脂質異常症治療薬が、ハザードレシオ0.58と死亡率を低下させる結果が得られています。

逆に、年齢、喫煙、高血圧が、ハザードレシオを上昇させています(死亡率を上昇させる)。

ED治療薬使用例は、心筋梗塞とそれによる死亡リスクも減少

みなさんが知りたいのは、おそらくは、心筋梗塞などの心血管疾患の増加の有無だと思います。

この研究報告では、そのあたりも、サブグループ解析されています。

新たに発症した心筋梗塞の発症でみると、発症率比(incidence rate ratio) = 0.62、つまり、ED治療薬使用者は非使用者と比べて、急性心筋梗塞の発症の頻度が約38%低かったという結果です。

さらに、心筋梗塞を発症した場合であっても、死亡リスクが約40%低かったとされ、ED治療薬の使用との関連が観察されています(HR=0.60 (0.54 to 0.69); p=0.001)。

ED治療薬と全死亡の因果関係を調査しているわけではない

この研究は、観察研究であり、2型糖尿病患者におけるED治療薬使用と死亡率の、直接的な因果関係はわかっておりません。

これは、カルテベースによる病名と処方による調査の限界でもあります。

例えばですが、EDという診断がカルテに記載されないと、データとして拾うことが出来ません。EDであっても、診断されていない、治療を受けていないケースなどです。

とは言え、傾向を知るには十分です。

ED治療薬の使用例の方が、死亡率が低いことは確かです。

ED治療薬によって死亡率が上昇することは無いことがわかっていただけたかと思います。

ED治療薬で死亡率改善のメカニズムは?

因果関係は不明です。

ED治療薬は頓服で使用することが多いため、使用頻度を考えた場合、直接的に死亡率を改善したと考えるのは早計かもしれません。

性的に活発ということは、健康状態が良いとも考えられます。

ED治療薬を使用することは、性的活発さを取り戻すともされているため、やはり、ED治療薬が全死亡率の低下させるとも考えられます。

実際のところ、因果関係は不明です。

続報を期待しましょう。

Phosphodiesterase type-5 inhibitor use in type 2 diabetes is associated with a reduction in all-cause mortality

Heart. 2016 Nov 1;102(21):1750-1756.

DOI: 10.1136/heartjnl-2015-309223

【ED】に関する最近の記事

抗精神病薬の副作用として体重増加が知られているが、その治療・予防にマンジャロが有効である
マンジャロは抗精神病薬誘発性体重増加を改善

抗精神病薬による体重増加は、精神的な健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。最近の研究では、GLP-1受容体作動薬であるマンジャロやオゼンピックが、抗精神病薬誘発性の体重増加を改善する効果が示されています。66,574人を対象にした後ろ向きコホート研究では、体重減少の幅が薬剤のリスクによって異なることが明らかになりました。精神と肥満の悩みを抱える患者にとって、これらの新しい治療法がどのように役立つのか、詳しく見ていきましょう。

Read More »
ボトックス注射によるED治療は、研究段階の治療法であり、一般診療として行うことは推奨されていない
ボトックス注射によるED治療について

ボトックス注射をED治療に応用しようとする試みがあります。シルデナフィルなどのPDE5阻害剤が一般的な治療法として広まる中、ボトックス注射は、ED治療薬の無効例に対して新たな選択肢として研究されています。しかし、現時点では標準治療ではなく、効果や安全性についてはまだ十分な科学的根拠がありません。この記事では、ボトックス注射のメカニズムや臨床研究の結果、ガイドラインでの位置づけについて詳しく解説します。興味のある方は、ぜひ続きをご覧ください。

Read More »
レノーヴァRENOVAなどの体外衝撃波療法はED治療に有用なのでしょうか?
ED治療における体外衝撃波療法の立ち位置

最近、体外衝撃波療法によるED治療が話題を集めていますが、その実際の効果はどうなのでしょうか?患者満足度は高いとする報告もありますが、勃起機能の改善幅は小さく、結果に乖離が認められる場合もあります。さらに、アメリカでは未承認であり、治療法としての位置づけも各国で異なります。そのため、池袋スカイクリニックでは、体外衝撃波療法には慎重な立場をとっています。ED治療薬が効かない方のための特効薬ではないことを理解する必要があります。詳しくは、本文をご覧ください。

Read More »
慢性副鼻腔炎を有す男性は、EDのリスクが1.5倍あります
慢性副鼻腔炎とEDの関係

慢性副鼻腔炎とED(勃起不全)の関係についての研究が進んでいます。慢性副鼻腔炎を抱える患者は、EDのリスクが1.51倍高いことが示されています。これらの疾患は一見無関係に思えますが、慢性炎症が全身に影響を及ぼし、EDの原因となる可能性があるのです。鼻づまりによる低酸素状態や生活の質の低下も、性欲に影響を与える要因として考えられています。興味のある方は、ぜひ詳細を読み進めてみてください。

Read More »
亜鉛サプリメントの摂取がEDや精力増強につながるとする科学的根拠(エビデンス)は限定的
亜鉛はED勃起機能を改善する?

亜鉛は男性機能や勃起力の改善に効果が期待されていますが、一方で、実際の医学的根拠は乏しいとされています。亜鉛欠乏のある男性には改善の可能性があるものの、十分な亜鉛を摂取している人に対しては効果が証明されていません。さらに、亜鉛サプリメントがEDや性欲の向上に寄与するかどうかは、まだ明確な結論が出ていません。亜鉛の役割やその効果について、詳しく知りたい方はぜひ続きをご覧ください。

Read More »
ED治療薬は因果関係は不明であるものの、心血管イベントと死亡リスクを低下させる
ED治療薬は心臓病と死亡リスクを低下させる

ED治療薬が心臓病や死亡リスクを低下させるという研究報告があります。約125万人のデータを解析したメタ解析では、ED治療薬の使用群は、因果関係不明ながらも、重大な心血管イベントのリスクが22%、全死亡リスクが30%も減少することが示されています。ここでは、ED治療薬(PDE5阻害剤)が、心臓に負担をかける危険な薬剤などといった、風評被害とも言えるイメージを払拭する一助になると思い解説しています。ぜひ続きをご覧ください。

Read More »