PRP注射:ED治療における多血小板血漿の効果|池袋スカイクリニック

PRP注射:ED治療における多血小板血漿の効果

池袋スカイクリニック

PRP注射:ED治療における多血小板血漿の効果

2026年8月15日

Table of Contents

PRP注射のED治療への応用:多血小板血漿Platelet-rich plasma

ED治療は、シルデナフィルなどの、いわゆるED治療薬による治療が中心ですが、全ての患者様おいて、満足できる結果が得られているわけではありません。どうしても、勃起改善効果には、限界があります。

いわゆるED治療薬以外では、薬物療法としては陰茎海綿体注射(ICI療法)や、外科治療として陰茎プロステーシス手術が実臨床で実施されていますが、ED治療薬の簡便さに劣り、体への侵襲が伴うため、ごく一部の患者様しか利用していません。 そのため、様々な治療法が研究されていますが、多くは試験的な治療法に留まっています。

このような試験的な治療法の一つが、PRP注射と呼ばれるものです。多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)を注射します。P-ショット(P-shot)などと呼ばれることもある様子です。

最近、当院通院中の患者様から、何度かご質問を頂いたため、ここで、現在の知見を含め、説明したいと思います。

PRP注射は研究段階のEDの治療法

大切なことなので先にお伝えいたしますが、PRP注射は、当記事執筆時点(2026.8)では、あくまで研究段階のED治療法です。世界的に見ても、どのEDガイドラインにおいても、標準的な治療法としては、扱われていません。

最新の2026年欧州泌尿器科学会のED治療ガイドラインにおいても、
「効果が期待される再生医療ではあるが、有効性が確立した標準治療ではない」
とし、
「臨床試験の中だけで使用すべき」
としています。

PRP注射は、アメリカ泌尿器科学会AUAでも、ほぼ同様の扱いであり、
「experimental(実験的)」
とされています。

日本国内での扱われ方

日本性機能学会による男性性機能障害診療ガイドライン2025年版では、今後の検討課題であるFuture Questionとして掲載されています。

PRP注射は本邦の法律上は、再生医療にあたります。そのため、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づいて、再生医療等提供計画を提出する必要があります。これを行い、PRP注射によるED治療を実施している医療機関も存在します。 ただし、再生医療等提供計画が提出・受理されていることは、その治療効果を国が承認・保証したという意味ではありません。 法令に沿って提供体制や安全管理の計画が審査されていることと、有効性が薬事承認されていることは別です。

先程も記載しましたが、PRP注射によるED治療は、未だ実験段階であり、各学会のガイドラインでも推奨されている治療法ではありません。

PRP注射とは

PRPとは、Platelet-rich plasmaを略したもので、日本語では多血小板血漿になります。 これを、陰茎海綿体に注射することで、ED改善を図ろうとするものです。

まず、患者本人から採血し、遠心分離によって血小板を濃縮した多血小板血漿を作製します。これを通常、陰茎海綿体内や静脈へ注射します。

血小板には、

  • VEGF(血管内皮増殖因子)
  • PDGF(血小板由来増殖因子)
  • FGF(線維芽細胞増殖因子)
  • EGF (上皮成長因子)
  • IGF-1(インスリン様成長因子-1)

などが含まれます。

これらによって、

  • 血管新生
  • 血管内皮機能の改善
  • 神経・平滑筋組織の修復
  • 幹細胞の動員

が起こり、勃起機能が改善するのではないかと考えられています。 しかし、この「組織を再生してEDを根本的に治す」という作用は、十分に証明されているとは言えません。

PRP注射のED改善効果

PRP注射によるED治療は、未だ、大規模な臨床試験が行われておりません。有効性と長期安全性を検証している研究段階の治療です。

2021年に行われた二重盲検ランダム化比較試験では、軽症~中等症の血管性ED患者60人に対して、PRPまたはプラセボを2回注射し、勃起改善効果を評価しています。6か月後にIIEF-EFが「臨床的に意味のある程度の改善」をした割合は、69%vs27%(PRP群vsプラセボ群)であり、IIEF-EFスコアは平均して、+3.3点vs−0.2点(PRP群vsプラセボ群)と報告されています。 ただ、この結果に対し、プラセボ群のIIEF-EFスコアの改善幅が、著しく低いため、批判的な意見もございます(一般的に、プラセボであっても、ある程度の改善を認めることが多いため)。 また、「臨床的に意味のある程度の改善」とは、EDの重症度によって異なり、軽症ED例でIIEF-EFスコア約2点、中等症ED例でIIEF-EFスコア約5点程度とされているため、PRP注射によるIIEF-EFスコアの改善が+3.3であったことを考えると、中等症以上のED例には効果が乏しい可能性があります。

2025年に公表されたメタ解析では、3件のランダム化比較試験(220人)を対象に解析、PRPはプラセボに比べてIIEF-EFを平均3.28点改善していると結論づけています。やはり、改善幅が小さく、中等症以上のED例では、効果が不十分である可能性があります。

ちなみにですが、シルデナフィル等のED治療薬は、IIEF-EFスコアで5〜8点の改善を認めており、それと比較すると、PRP注射の勃起改善効果がマイルドなものだと判断できます。

いずれにせよ、臨床試験の規模が小さく、判断するには時期尚早といった印象です。

効果が無いとする報告もある

2023年に報告されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、合計61人が対象となっています。PRPまたは生理食塩水を、1か月間隔で2回、陰茎海綿体内に注射しています。 1か月後に「臨床的に意味のある程度の改善」を達成した割合は、PRP群:58.3%(14/24人)vsプラセボ群:53.6%(15/28人)で、統計学的に両群間に有意差は認められず、効果無しとされています。 ただ、この研究では、いわゆるED治療薬の併用が認められているため、PRP注射単独の効果を評価できていない可能性が指摘されています。逆に、PRP注射の勃起改善効果は、ED治療薬でマスクされてしまう程度の小さいものとも考えられます。

やはり、臨床試験の規模が小さいため、医学的な根拠エビデンスを裏付けるには、より大規模な臨床試験が必要です。

PRP注射による亀頭増大のエビデンスは無い

亀頭へのPRP注射が「亀頭増大」「陰茎増大」などとして広告されることはありますが、有効性を裏づけるランダム化比較試験や、増大量を客観的に測定した質の高い研究は確認できません。

PRPを亀頭や陰茎組織へ注入すると、直後には膨らんで見える可能性がありますが、これは組織が新たに増えて恒久的に増大したことを示すものではありません。

PRPにはVEGFやPDGFなどが含まれ、血管新生や組織修復を促す可能性があります。しかし、組織修復を促すことと、正常な亀頭組織を美容的に大きくすることは別の現象です。

PRPによって血流や血管内皮機能が改善すれば、勃起時に亀頭が以前より充実して見える可能性はあるかもしれませんが、ただし、それは「構造的な亀頭増大」ではなく、勃起の改善に伴う二次的な変化です。この点も、現時点では、客観的に検証されていません。

なぜ結論が出ていないのか

まず第一に「PRP注射」という名称でも、実際に投与されているものが研究ごとに異なることです。

統一されていない項目として、

  • 採血量
  • 多血小板血漿の濃縮倍率
  • 白血球を含むかどうか
  • PRPの活性化方法
  • 1回の注入量
  • 注射部位
  • 注射回数と間隔
  • PDE5阻害薬を併用するか
  • 対象となるEDの原因と重症度

などが挙げられます。例えば、臨床試験では1回約5~10mLの多血小板血漿を合計2回程度の投与が多いものの、確立した標準プロトコルは、ありません。

また、現在の研究は、

  • 対象者数が少ない
  • 追跡期間が多くは6か月程度
  • 軽症~中等症の血管性EDが中心
  • 糖尿病性ED、神経障害性ED、前立腺全摘後EDなどのデータが不足
  • 客観的な陰茎血流評価が少ない

という限界があります。

まとめ

PRP注射(多血小板血漿注射)は、自己血由来の成長因子を利用して陰茎の血管や組織の修復を促すことを目的とした治療です。一部の研究では勃起機能の改善が報告されていますが、効果が認められなかった比較試験もあり、治療方法も統一されていません。そのため、現在は標準的なED治療ではなく、有効性と長期安全性を検証している研究段階の治療です。

本記事執筆時点では、PRPによって、

  • ED治療薬(PDE5阻害薬)が不要になる
  • 重度EDが改善する
  • EDが根治する
  • 陰茎が増大する
  • 効果が何年間も持続する

と断定できる科学的根拠エビデンスはありません。

もし、PRP注射によるED治療を検討するのであれば、軽症~中等症の血管性EDで、標準治療について十分説明を受けたうえで、研究的治療であることを理解できた方に限ります。 全世界的に見て、臨床応用されている治療ではありません。 PRP注射単独治療では勃起改善効果が不十分である可能性があり、また、重度EDに対する切り札的な治療法ではありません。

ED改善を掲げる広告などでは、様々な記載がされていますが、慎重に判断する必要があります。

参照

European Association of Urology(EAU)

Sexual and Reproductive Health Guideline

5. MANAGEMENT OF ERECTILE DYSFUNCTION


American Urological Association

Erectile Dysfunction: AUA Guideline (2018)


Platelet-Rich Plasma (PRP) Improves Erectile Function: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial

J Sex Med. 2021 May;18(5):926-935.

doi: 10.1016/j.jsxm.2021.03.008


Platelet Rich Plasma for the Treatment of Erectile Dysfunction: A Prospective, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Clinical Trial

J Urol. 2023 Apr 30;210(1):154–161.

doi: 10.1097/JU.0000000000003481


Minimal clinically important differences in the erectile function domain of the International Index of Erectile Function scale

Eur Urol. 2011 Nov;60(5):1010-6.

doi: 10.1016/j.eururo.2011.07.053

【ED】に関する最近の記事

テストステロン(男性ホルモン)低下例に対し、それを補充することはEDを改善する?
テストステロン補充療法とED治療

テストステロン補充療法がEDに与える影響について、さまざまな研究が報告されています。テストステロン補充療法は、EDに効果的なのでしょうか?テストステロン値が低下しているからといって、性腺機能低下症と診断されるわけではありません。ここでは、心血管疾患のリスクを有する男性におけるテストステロン補充療法を検討した大規模試験「TRAVERSE」のサブ解析の結果をご紹介いたします。

Read More »
受動喫煙はEDの原因と成ります
受動喫煙がEDに及ぼす影響

受動喫煙がED(勃起不全)に与える影響についての研究があります。タバコを吸わない男性でも、受動喫煙によるリスクが存在することが明らかになっています。2001–2002年の国民健康栄養調査(NHANES)では、受動喫煙に曝露された非喫煙男性のED有病率が増加することが示されています。血清コチニン濃度が0.60ng/mLを超えると、EDのリスクが1.29倍になるという結果も。あなたの健康を守るために、受動喫煙の影響を知ることが重要です。

Read More »
長時間の座位はEDの原因となる可能性があります
長時間の座位はEDの原因になる?

長時間の座位がED(勃起不全)のリスクにどのように影響するのか、興味深い研究結果が報告されています。マレーシアのクリニックで行われたこの研究では、1日8時間以上座っている男性は、中等度〜重度のEDを発症するオッズが約5.84倍高いことが示されています。運動習慣があっても、長時間座っていることがEDのリスク要因となる可能性があるのです。座位時間とEDの関係について、さらに詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

Read More »
マンジャロによってバルデナフィルの吸収が遅延したと考えられる症例の報告
マンジャロによるED治療薬の効果遅延の可能性

高容量のマンジャロがバルデナフィルの吸収を遅延させたと思われる例を経験したため、注意喚起とともに、ご紹介します。マンジャロやリベルサスといったGLP-1受容体作動薬が、肥満症に対する特効薬として注目されていますが、一部の薬剤の吸収が遅延したり、上部消化管内視鏡検査時の食物残渣の原因となることが指摘されています。現在、ED治療薬の吸収遅延の報告はございませんが、その可能性は十分ございます。そのメカニズムの説明と、ED治療薬の効果を最大限に引き出すための対策を探ります。

Read More »
夜間勤務や交代勤務に睡眠障害が加わった場合、EDの有病率が上昇する可能性がある
夜間勤務者はEDが多い?

夜間勤務者とED(勃起不全)のリスクを検証した研究があります。夜勤や交替勤務を行う男性は、日勤の男性に比べて勃起機能が低下していることが示されています。勤務形態によって生じた睡眠不足や生活リズムの乱れが、勃起機能に影響を与えそうです。また、ここでは、テストステロン補充療法の効果についても考察されています。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ続きをお読みください。

Read More »
治療法の有効性は、プラセボ効果を排除した二重盲検試験でなされるべきである
プラセボ(偽薬)効果と二重盲検試験

プラセボ効果とは、薬の有効成分ではなく、治療への期待感や安心感によって症状が改善する現象です。特にED治療においては、心理状態が大きな影響を与えることがあります。二重盲検試験では、実薬とプラセボの効果を客観的に比較し、ED治療薬がプラセボを上回る効果を示すことが確認されています。しかし、低強度体外衝撃波療法では、プラセボ効果の影響を排除することが難しく、科学的根拠が不十分な場合もあります。詳しくは本文をご覧ください。

Read More »