全身性炎症反応指数で見るタダラフィルの効果予測|池袋スカイクリニック

全身性炎症反応指数で見るタダラフィルの効果予測

池袋スカイクリニック

全身性炎症反応指数で見るタダラフィルの効果予測

2026年2月13日

Table of Contents

全身性炎症反応指数を用いてシアリス(ED治療薬)無効例を予測する試み

全身性炎症反応指数(Systemic Inflammatory Response Index(SIRI))は、動脈硬化や心血管疾患、がん、感染症などの病気との関連が報告されています。

血液中の免疫細胞(好中球・単球・リンパ球)のバランスから、全身の炎症状態を推定する指標で、炎症や病気のリスクの評価に役立つとされています。

簡単に言うと、全身性炎症反応指数(SIRI)は、血液検査の結果から「今、体の炎症がどのくらい起きているか」を数値化したものです。

血液検査の結果から簡単に算出できる点が特徴です。

ED勃起不全は、男性だけではなくパートナーの女性の生活の質に関わることが知られています。

シアリスなどのED治療薬は、非常に有効でありますが、それでも、全てのED例に有効であるわけではありません。

全身性炎症反応指数(SIRI)を用いて、事前に、ED治療薬(タダラフィル)の効果を予測しようとする研究報告をご紹介します。

全身性炎症反応指数Systemic Inflammatory Response Index(SIRI)とは

好中球(Neutrophil: N)・単球(Monocyte: M)・リンパ球(Lymphocyte: L)という免疫細胞から算出されます。

具体的には、一般的には、

SIRI=(N×M) / L

と​なります。

×10⁹/Lや単位などは省略され、数字で表さられる”指標”になります。

正式な基準は決まっていませんが、複数の疫学研究の結果から、概ね、0.45〜0.60が正常値とされています。

全身性炎症反応指数(SIRI)は、例えば、がんの予後や再発リスク、心血管系疾患(主に冠動脈疾患・脳卒中)発生リスク、さらには、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)による重症化や死亡リスクなどと、関連が有ることがわかっており、その推測などに利用されます。

全身性炎症反応指数(SIRI)が高いことは、すなわち、全身性の炎症が強い、あるいは、免疫バランスが崩れている、とお考えいただければ良いと思います。

ED治療への全身性炎症反応指数を応用しようとする試み

EDは、唯一自覚できる動脈硬化の症状である、と表現される場合があります。

なんらかの疾患の部分的な症状の一つである場合もあります。
つまり、全身の状態を把握することは、EDの原因であったり、EDの程度を推測することに繋がります。

このことから、全身性炎症反応指数を、ED診療に応用しようとする試みは、自然な流れなのかもしれません。

EDを訴える男性患者106名を対象にタダラフィル5mgを連日服用

対象者は106名。平均年齢は52.52±13.03(23~75)歳、平均BMIは26.56±3.12(21.7~36.1)kg/m2、81.1%が既婚者で、嗜好歴として、62.3%に喫煙、33%に飲酒を認めています。

タダラフィル5mgを、1ヶ月にわたり連日服用していただき、その勃起改善効果と全身性炎症反応指数(SIRI)との関連をROC曲線解析で評価しています。

その他、年齢とBMIについても、合わせて評価されています。

全身性炎症反応指数はタダラフィル無効例で軽度上昇

この研究では、タダラフィルが無効であったと回答したのは48.1%(51/106)。 多変量解析の結果では、年齢と全身性炎症反応指数(SIRI)がタダラフィル無反応性の独立した予測因子だったとしています。 注目される全身性炎症反応指数(SIRI)ですが、カットオフ値は1.03(Area Under the Curve(曲線下面積):AUC = 0.617)、感度は69.1%、特異度は61.2%であったとしています。

弱め〜中等度のED治療薬の効果予測

正直に申しますと、全身性炎症反応指数(SIRI)だけでは、ED治療薬(ここではタダラフィル)の効果を予測するには、参考程度であり、十分なパワーがありません。

優れた指標とは、感度と特異度が、ともに高い指標です。
SIRIの絶対値は、各疾患領域によって異なります。

重要なのは、感度と特異度であり、それに寄与するのは、ROC曲線におけるAUC(Area Under the Curve(曲線下面積))です。

例えば、心血管疾患や心不全・脳卒中ではAUC値は0.7〜0.8程度、固形がんにおいてもAUCは0.7〜0.8程度となります。

それに対して、全身性炎症反応指数(SIRI)とタダラフィルの効果予測は、AUC値0.618で低めです。

より複雑なEDの原因

上記で例に上げた心血管疾患やがん、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)などは、基本的には、器質性疾患になります。

全身性炎症反応指数(SIRI)は、基本的には器質性の異常を捉えています。うつ病などのメンタルヘルスとの関連も指摘されていますが、ED同様、関連は弱めです。

EDは原因によって、器質性と心因性に大きく分類されます。また、これら2つの原因は、併存することも多いとされます。原因は、複雑です。
ここからは個人的な見解になりますが、全身性炎症反応指数(SIRI)では、より複雑なEDの原因を捉えきれていないのでは?と言った印象です。

持病として、EDの原因となりうる器質性疾患(例えば高血圧や糖尿病、喫煙歴など)を有する例では、その関与を推測する参考になるかもしれません。

また、タダラフィルを長期に定期服薬した場合の、アンチエイジングの効果の判定にも有効かもしれません。

いずれにせよ、サンプルサイズが小さいので、より大規模な研究報告が待たれます。

Predictive value of systemic inflammatory response index in patients with erectile dysfunction on tadalafil unresponsive patients

Aging Male. 2025 Dec;28(1):2467157.

doi: 10.1080/13685538.2025.2467157.

【タダラフィル】に関する最近の記事

レノーヴァRENOVAなどの体外衝撃波療法はED治療に有用なのでしょうか?
ED治療における体外衝撃波療法の立ち位置

最近、体外衝撃波療法によるED治療が話題を集めていますが、その実際の効果はどうなのでしょうか?患者満足度は高いとする報告もありますが、勃起機能の改善幅は小さく、結果に乖離が認められる場合もあります。さらに、アメリカでは未承認であり、治療法としての位置づけも各国で異なります。そのため、池袋スカイクリニックでは、体外衝撃波療法には慎重な立場をとっています。ED治療薬が効かない方のための特効薬ではないことを理解する必要があります。詳しくは、本文をご覧ください。

Read More »
慢性副鼻腔炎を有す男性は、EDのリスクが1.5倍あります
慢性副鼻腔炎とEDの関係

慢性副鼻腔炎とED(勃起不全)の関係についての研究が進んでいます。慢性副鼻腔炎を抱える患者は、EDのリスクが1.51倍高いことが示されています。これらの疾患は一見無関係に思えますが、慢性炎症が全身に影響を及ぼし、EDの原因となる可能性があるのです。鼻づまりによる低酸素状態や生活の質の低下も、性欲に影響を与える要因として考えられています。興味のある方は、ぜひ詳細を読み進めてみてください。

Read More »
亜鉛サプリメントの摂取がEDや精力増強につながるとする科学的根拠(エビデンス)は限定的
亜鉛はED勃起機能を改善する?

亜鉛は男性機能や勃起力の改善に効果が期待されていますが、一方で、実際の医学的根拠は乏しいとされています。亜鉛欠乏のある男性には改善の可能性があるものの、十分な亜鉛を摂取している人に対しては効果が証明されていません。さらに、亜鉛サプリメントがEDや性欲の向上に寄与するかどうかは、まだ明確な結論が出ていません。亜鉛の役割やその効果について、詳しく知りたい方はぜひ続きをご覧ください。

Read More »
ED治療薬は因果関係は不明であるものの、心血管イベントと死亡リスクを低下させる
ED治療薬は心臓病と死亡リスクを低下させる

ED治療薬が心臓病や死亡リスクを低下させるという研究報告があります。約125万人のデータを解析したメタ解析では、ED治療薬の使用群は、因果関係不明ながらも、重大な心血管イベントのリスクが22%、全死亡リスクが30%も減少することが示されています。ここでは、ED治療薬(PDE5阻害剤)が、心臓に負担をかける危険な薬剤などといった、風評被害とも言えるイメージを払拭する一助になると思い解説しています。ぜひ続きをご覧ください。

Read More »
肥満はEDの原因の一つであり、特に中等度以上のEDと関与している。BMIを確認しましょう。
肥満は中等度以上のEDと関与

肥満と勃起不全(ED)の関係についての研究は、多数報告されております。しかし、その多くが欧米人を対象としております。欧米人とアジア人では、肥満の程度と有病率が異なります。そのため、その結果を、アジア人に、そのまま当て嵌めてよいものか、疑問が生じます。ここでは、男性性機能外来を受診したアジア人(若年中国人)男性において、肥満とEDの関係を調査した研究報告をご紹介いたします。果たして、どのようなBMIが男性機能に影響を及ぼすのか?詳細をぜひご覧ください。

Read More »
タダラフィルは慢性炎症を改善し、アンチエイジング効果を発揮する可能性が有る
低用量タダラフィルは炎症マーカーを改善する

タダラフィルは、ED治療薬として知られるだけでなく、炎症マーカーを改善する可能性があることが注目されています。慢性炎症は老化を促進させる要因の一つであり、タダラフィルの服用がアンチエイジングに繋がるかもしれません。最近の研究では、タダラフィルが炎症マーカーを改善することが示され、シルデナフィルとの比較も行われました。この興味深い結果が、今後のアンチエイジング医療にどのような影響を与えるのか、ぜひご覧ください。

Read More »