論文はJournal of andrology誌2010年10月20日に掲載されたものです。男性医学とでも訳せばいいでしょうか。
陰茎の勃起は、多くは血管内皮より放出されるNO(一酸化窒素)に因ります。
インスリン抵抗性があると、血管内皮機能が低下する事が知られています。これによりNOの放出能力が低下、勃起力も低下する事が予想されます。
インスリン抵抗性とは、血糖を低下させるホルモンであるインスリンの分泌は保たれているが、その効果が減弱している状態を言います(インスリンの効果に抵抗している)。
専門的で難しいと思いますが、簡単にはメタボリック症候群の方々が、これに当てはまります。
メタボリック症候群は、このインスリン抵抗性が疾患概念になっています。メタボでかつ糖尿病の方も、もちろんいらっしゃいます。
糖尿病治療で用いられるメトホルミンは、このインスリン抵抗性を改善させる薬です。
この論文では、非糖尿病でインスリン抵抗性がある勃起不全患者に、シルデナフィル(バイアグラ)の服用に加え、メトホルミンを追加投与した場合に、
さらなる勃起改善を認めることが出来るか、二重盲検で調べられ報告されています。
対象は、勃起不全でかつインスリン抵抗性を持つ男性30人。薬剤性ED、解剖学的ED、内分泌的ED、糖尿病、前立腺手術後や慢性疾患は除かれています。
勃起不全は、国際勃起機能スコアIIEF5、インスリン抵抗性はHOMA-IRスコアで測定。
被験者は、シルデナフィル+メトホルミン併用の17人と、シルデナフィル+プラセボ服用の13人に分け、経過を追っています。
結果は、研究2カ月以降から、シルデナフィル+メトホルミンを服用した群で、有意に国際勃起機能IIEF5スコアが改善し、つまり、勃起機能の改善を認めています。IIEF5スコアは、研究前14.3から2カ月後17.0、さらに4カ月後19.8まで上昇。また、インスリン抵抗性の指標である、HOMA-IRスコアの改善も認めています。研究前5.5から2カ月後3.9、さらに4カ月後2.4まで減少。
これに反し、シルデナフィル+プラセボを服用していた群では、これらの指標の変化は認められていません。
シルデナフィル+メトホルミンを服用した群では、副作用が認められています。その多くは、嘔気など消化器症状が主でしたが、
軽度であり、それにより服薬が中断することはなかったとのことです。
この結果は、至極当然の結果だとは思うのですが、もうちょっと被験者数がいると、より正確さが増すと思います。
当ホームページでもご紹介してきましたが、肥満症やメタボリック症候群は、EDの原因となります。薬剤で改善するのも良いですが、日頃からの体調管理もお忘れなく。
メトホルミン自体は、糖尿病治療で、第一選択薬と言われるほどメジャーな薬です。副作用も、さほど気にならないですね。
Journal of andrology. 2011 Oct 20;
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