腹腔鏡による前立腺全摘除術は性機能および患者負担感を低減する可能性が有る



前立腺全摘除術を腹腔鏡下で施行した場合に伴う性機能と患者負担感に関する報告

第20回日本性機能学会東部総会での報告です。
慶雁義塾大学医学部泌尿器科学教室、前田高宏先生等の報告です。
多少の解説を加えながらご紹介いたします。

前立腺が腫瘍マーカーであるPSAの普及に伴い、前立腺癌は早期に発見され治療することが可能となって来ていま。
現代医療では、患者の生命予後を改善する事はもちろん、治療、手術後の生活の質QOL向上も、要求されています。
当然、前立腺癌の治療においても同様で、早期がんであれば尚更であるが、QOLを含めた患者の治療満足度が注目されています。

ExpandedProstateCancerlndexComposite(EPIC)は、限局性前立腺癌の患者さんの健康関連QOLを測定する、 排尿・排便・性・ホルモンの4尺度50項目からなるスケールです。
2000年にWei JTらによって作成され、ExpandedProstateCancerlndexComposite(EPIC)日本語版は2005年に開発されています。
EPICならびに、、国際勃起機能障害スコア(IIEF)(スカイクリニックホームページでもご紹介しているIIEF5スコアよりも詳細なものです) の2つの指標を用いて、早期前立腺癌患者の治療後の性機能(勃起機能)および患者負担感について検討しています。

2008年11月から2009年6月まで、慶雁義塾大学医学部泌尿器科学教室において、術前ホルモン療法を行わずに腹腔鏡下前立腺全摘除術を施行した患者のうち、 術前および術後1ケ月、3ケ月にEPIC日本語版およびIIEF5アンケート調査を行った28例(片側神経温存6例)を対象としています。 平均年齢64.7歳(52-72)、術前PSA(前立腺がん腫瘍マーカー)値7.4ng/ml(3.8-12.1)、生検時病理診断はGleasonScore(GS)≧8が6例、 GS=7が12例、GS≦6が10例であった。(GleasonScoreとは、前立腺生検時の病理学的なスコアです)
EPICスコアは、性機能(勃起機能)と性負担感に分類し点数化し、IIEFスコアは勃起機能、オルガズム機能、性欲、性満足感、全般の満足感の各細項目に分けて集計し、 治療前後での各項目の変化をWilcoxon検定を用い評価した。

細かな数値は割愛させていただくとして、結論です。
残念ながら、本研究では、侵襲の少ない腹腔鏡下手術とは言え、EPICスコア、IIEFスコアともに、 性機能(勃起機能)の低下、性負担感の増大を認めています。
性欲に関しては、術前後で、差は認めておりません。
もともと性機能(勃起機能)低下を自覚されている患者さまにおいては、術前後でも、 性機能(勃起機能)の低下、性負担感の増大は認めておりません。
こちらも、術前後における性欲減退は認めておりません。

この結果を、どう評価するかになりますが、腹腔鏡下前立腺全摘術においても、勃起機能低下、性負担感の増大は、 生じる可能性があると言えます。
しかし、EPICスコア、IIEFスコアともに、勃起機能の評価は、主観的なもので、客観的な指標ではありません。
もともと勃起機能低下を自覚していた患者さまでは、術前後では、勃起機能に差を認めておりません。 術後では、当然メンタルな負担(性負担感)がありますし、術後の、勃起機能以外の不安感などもございます。
逆に、もともと勃起機能の低下を自覚していた方では、勃起力の低下度合いが少なく自覚しにくかった、 術後の勃起機能のさらなる低下を容認していたため影響が少なかった、勃起機能以外の不安要素の方が強いため影響が少なかった、 等も考えられます。
いずれにせよ、主観的な評価に頼っています。

今後、私たちが望むべきものは、術後3カ月という早期の評価でなく、長期的な評価です。 また、これは難しいのですが、勃起機能の客観的評価です。
あきらめず、もう少し判断を待つ必要があると考えます。


バイアグラ処方は池袋スカイクリニック.