偽造シアリスによる薬害で低血糖発作が報告されております



海外国内から報告された偽造シアリスによる薬害

以前より、インターネットなどを通した違法な処方薬の購入による健康障害の報告が多くさております。 特にED薬の薬害が多く、そのほとんどが海外からのものでした。
しかし、これは海外での出来事でなく、日本においても、様々なED薬による薬害が報告されております。

国内でED(勃起不全)治療薬を製造・販売している4社(ファイザー株式会社、バイエル薬品株式会社、日本イーライリリー株式会社、日本新薬株式会社)は、 4社合同でインターネットにより入手したED治療薬(バイアグラレビトラシアリス錠)の鑑定調査を実施し、 その結果、約6割が偽造ED薬だということが判明しております。

シンガポールで発症したED薬による薬害は、大規模で、多くの方が被害にあわれております。
私たちED治療に携わる医療従事者にとって、驚くべきもので、記憶に新しいものです。

2009年2月には世界的な医療雑誌New England Journal of Medicine(NEJM)に報告されました 。
2008年1月から同年5月にかけて、シンガポールにて偽造シアリス(タダラフィル)の服用によりで150名が重症低血糖で入院し、 うち7人が脳死状態、4人が死亡したと報告されています。
被害者の85%から、血中尿中からグリブライトというSU剤に分類される血糖降下薬が検出され、この薬剤の作用で、低血糖を生じ、 このような惨事が生じたと考えられます。
(N Engl J Med 360:734-736)

また、2008年1月から6月にかけて、同様な低血糖症の報告が、香港からされております。
このことから、これらは、同一の製造元であることが疑われます。国を跨いでの、偽造ED薬を密売する組織が存在するのでしょうか?

シンガポール厚生当局(The Health Sciences Authority)は、違法な製品には、 深刻な健康被害をもたらす可能性のある不明な成分が含まれている可能性があると強調しており、違法な製品を購入したり、 使用したりしないようにと警告しています。

今回見つかった偽造シアリスには、正規品には含まれていないグリベンクラミド(血糖値を下げる成分)が45mg(日本での承認用量は1日最大10mg)含まれていたことが報告されています。

また本邦においても偽造シアリスによる低血糖症の報告がなされました。

低血糖症で搬送され、回復後の詳細な問診にて、事件が分かりました。
低血糖で入院する前日に、タイ人の友人より、通常では販売されていない規格(50mg)のシアリスを譲り受け、 内服して低血糖症状で入院したという報告です。
同時期に、アジア各地で、偽造シアリスによる低血糖症の発症が報告されており、 今回の報告例でも、製造元が同様である可能性が疑われました。
この患者の血液を製薬会社に解析を依頼したところ、来院時血液検体(シアリス服用後16時間後) に、高容量の血糖降下薬であるグリベンクラミドが検出され、やはり、偽造シアリスによる低血糖症が考えられた。

さらに、入院中に、薬疹と思われる皮疹や水泡などがも出現し、諸検査にて、やはり、偽造シアリスに含有されていた、 グリベンクラミドが原因であると、結論付けられています。

インターネットなどを通した違法な処方薬の購入については、健康障害につながる可能性があります。
ED治療については医療機関での診療をお勧めします。


 J Res Med Sci.2012 July;17(7):632-636


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