性的に健康で有る事は、肉体的に健康であると言う事の主要な要素でもあります。
男性にとって性生活が満足ゆくものである事は、十分な陰茎の勃起があり、
その他にも性機能不全を有さない事、精神的に安定し、パートナーと良好な関係が得られている事が、
統計学的にも、重要である事が示されています。
EDは、性的な健康の中で、最も主要な関心事項であり、EDの存在は、
生活の質を低下させ、うつや神経症、自信喪失などに繋がります。
EDとは、3か月以上に渡って、性行為に十分な陰茎の硬度が得られていない状態です。
EDの有病率は、20~45%程度ともされ、年齢と供に増加し、フランスでは、40歳以上の男性の1/3は、
勃起力の減退を感じているとされます。
バイアグラなどのED治療薬によって、治療は簡便で、有効なものとなり、
プライマリーケアの一環として、一般内科医によっても、治療が行われるようになっています。
しかし、依然として多くの患者は、性に関する事項については、一般内科医に、アドバイスを求めたり、
勃起に関する問題についても、議論できないでいます。
それに加え、服薬法なども順守されず、治療を開始された患者の1/2は、治療を中断しているとしてます。
他にも、一般臨床医は、EDに関する十分な教育を受けておらず、
自信を持って治療が行えていない現状がございます。
患者は、副作用について心配しており、その効果や費用、パートナーの性機能の状況について、
十分な理解が出来ていません。
EDは、性機能障害であり、ご本人とそのパートナーで共有すべき問題であることも、
認識されていない事もあります。
パートナーである女性の満足度とED治療の希望も、男性が治療を受けるにあたって、
考慮すべき事柄です。
男性にとっての性機能の改善は、単純に性的満足度が向上するだけでなく、
精神的社会的にも、様々な利益をもたらすとされています。
これらを評価する様々なツールが臨床で使用されています。
EHS(ErectionHardnessScore)は、最も簡便な勃起硬度の指標です。
国際勃起機能スコアIIEF-5
もまた、非常に広く使用されていますが、
最近、男女ともに、性行為と関係する様々な側面を評価可能とされています。
自己評価とリレーションシップに関する問診表(The Self-Esteem and Relatonship:SEAR)は、
ED患者の情緒に関する評価に適し、
性生活スコア(Index of Sexual Life:ISL)は、パートナーの性生活の評価に使用されます。
患者とそのパートナーの満足度は、ED治療における満足度評価(Erectile Dysfunction Inventory of Treatment Satisfacton:EDTS)
で評価されます。
EMOTION研究は、一般臨床医を中心としたフランスで行われた研究で、これらの問診表を用いて、
患者およびパートナーに対して、バイアグラなどのPDE5阻害剤による初期治療の効果を評価しています。
治療に対する心配事項、期待、満足度を評価しています。
この研究のもう一つの目標として、一般臨床医がEDを治療するにあたって直面する問題点と、
医師の訓練によって、自信を持ってED治療を行えるようになるか否かを評価する事にあります。
注目は、私たちのようなED治療に専従する者が中心でなく、 一般臨床医によるED治療に焦点が合わされています。 研究に参加する一般臨床医は、前もって、プログラムに沿って、 ED診療についての専門的なレクチャーを受けます。 対象期間内にED治療希望の患者に対し、一般臨床医が中心となって、治療を選択し、進められています。 患者の臨床研究に参加への承諾が得られた場合、先に述べた問診表にて、 勃起力や満足度、精神状態等の評価をして頂いています。
229人の一般臨床医によって、478人の男性が参加してます。
服薬数に応じ、3ヶ月間の観察期間中8錠以上のED治療薬を服用したグループ(274人)と、
4~7錠服薬したグループ(204人)とに分けています。
さらに、治療後のEHSの変化量に応じて、4グループに分けています。
担当医は、ほぼ男性で、多くは15年以上の臨床経験が有ります。
平均して、約半数の担当医は、5~10人/月のED患者の診療にあたり、
1/4は、11~20人/月のED患者の診療に従事しています。
参加した患者は、平均年齢57歳(19-80歳)、パートナーの年齢はほぼ同様です。
都会に住んでいる者が多く、半数は専門職を持った方です。
対象患者は、半数以上は、通常の診療を目的とした来院時にEDの診療を受け、
3割程度の患者は、性機能障害を主訴に来院し、1割弱の患者は、
パートナーの勧めで来院されているとしています。
7割の患者は、診察によってEDと診断されています。
9割の患者は、何らかの心血管係の危険因子を有し、日頃からストレスを感じている者、
高血圧を患っている者が、各々4割程度占めています。
EDの原因は、多くは心因性EDまたは、心因が強く関与したEDとしています。(76%)
およそ6割の患者は、パートナーと10年以上の付き合いが有り、性交渉頻度が稀と答えた方は、
2割程度です。
6割程度の患者は、EDであることはパートナーに影響が有ると回答し、2割の患者は、
EDである事を相談できずにいました。
6割の患者は、EDである事を許容できないとしています。
2割程度の患者は、診察前には、有効な治療手段が有る事を知っていませんでした。
パートナーである女性が診察に同伴したのは、およそ3割にあたります。
その理由は、時間が作れない(3割)、
患者とパートナーで勃起の問題について話し合っているにもかかわらず、
個人で受診する問題と考えている(4割)、が主となってます。
この報告では、患者の多くは副作用につては、さほど心配していなかったとしています。 副作用の中では、心血管系の副作用が最大の関心事項で、頭痛、高血圧、動悸などが続きます。 患者の1割は、薬剤師の存在が、不安を和らげたとしています。 パートナーにおいても、副作用の心配はあまりされていません。 最も関心のある副作用は、やはり、心血管系の副作用でした。
最初の診察が終わって、5割弱の患者は、治療を希望しています。
治療薬の希望は、8割以上がバイアグラです。
実際に一般臨床医は、9割以上バイアグラを処方しています。
シアリスが1割弱、レビトラが残り僅かを占めています。
治療薬の選択の理由のは、有効性が第一位に挙げられ、
患者の性生活に適した薬剤プロフィールであること、安全性、簡便さと続いています。
その他の判断基準もございますが、ほとんどがライフスタイルに関係した物となっています。
一般臨床医は、副作用に関して、あまり心配していないとされています。
観察期間の最後においても、9割弱の患者は、他剤に変更することなく、
初診時に処方されたED治療薬を継続しています。
服用量を変更された患者は 1割程度で、その理由は、より効果を得たいためとされています。
勃起硬度は、治療前で、EHSグレード1が3割弱、グレード2が4割強、グレード3が3割弱を占めていましたが、
治療によってグレードが1~2段階改善した患者が3/4程度を占め、1割強の患者は、グレード1から4へ改善しています。
逆に、改善効果が得られなかった患者も1割強います。
その他の評価パラメーター(自信であったり、満足感など)においても、概ね改善を来たしています。
パートナーに関しても、ほぼ治療を受けて良かったとの評価が得られています。
EHSの改善は、自信、満足感、リレーションシップなどの評価とも相関しているとされています。
一般臨床医は、患者に対してEDについて話す機会が増加したと答え、
EDについて男性患者に説明するよりも 、カップルに対しての説明の方が、
より難しいと感じておりますが、
半数以上の一般臨床医は、パートナーとの受診を勧めています。
半数以上の一般臨床医は、十分なED治療を実践できたと回答し、
6割が各ED治療薬の特徴を把握できていると答えてます。
この研究に参加して、より一層、ED治療を理解、実践できるようになったとしています。
この報告では、プライマリーケアでのED治療でも、様々な評価項目を改善し、
有効なED治療を実践できる事を示しました。
パートナーによる治療の後押しも重要である事が示されています。
実際に、ED治療薬の服薬回数の多い群は、治療に対する期待感が強く、
パートナーと共に受診する率が高率でした。
しかし、患者と同伴して受診したパートナーは3割程度と、過去の報告と差が有りません。
カップルで来院された場合、医師は、EDの説明が難しく感じるとも指摘されております。
半数以上の一般臨床医は、パートナーとの受診を勧めていますが、逆に、半数近くは、
パートナーとの受診を進めていない事になります。
仮にパートナーである女性が受診しなくとも、治療に協力的である事も、この研究では、解っています。
男性患者の満足度が向上すると、それに伴って、女性の満足度も向上する事が示されてます。
この研究では、一般臨床医のED治療に対する考えも判明しています。
若く、特に女性医師は、性に関する医療に自信がなく、性機能障害に関する本研究に参加する事に、
不快感を抱いていました。
多くのケースでは、一般臨床医は、EDについての話し合いを、患者と持つ機会が増加しています。 多くの男性は、この事について相談したいと考えており、医師から切りだすことも重要です。 およそ6割の一般臨床医は、ED治療についてトレーニングを受けていないにもかかわらず、 十分な知識を有し、実践できていると回答しています。
一般臨床医によるED治療は、普及の点については良い方法だと考えられます。
しかし、この報告では、ほぼバイアグラが使用されています。
現在、世界的にはシアリスがNo.1のシェアをしめ、バイアグラ、レビトラ、シアリスの3剤が拮抗している現状と比較すると、
一般臨床医が、十分なこれらED治療薬の特徴を把握し、各々使い分けていると考えるのは、疑問が伴います。
きちんとした理解が出来ないため、バイアグラの処方に著しい偏りが生じているのではないかと考えてしまいます。
普及する事は良い事ですが、中断率が高率では、意味が有りません。
継続率等の報告が続くとよいですね。
女性医師にとっては、男性の性機能を扱うのは、国内外問わず、難しいと考えます。
逆に、女性の性機能障害は、男性医師が担当するのは、同様に困難だと考えます。
これは、医療側だけでなく、患者側も同様に感じるのではないでしょうか。
J Sex Med 2013;10:1850-1860
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