ED治療薬は心臓病と死亡リスクを低下させる|池袋スカイクリニック

ED治療薬は心臓病と死亡リスクを低下させる

池袋スカイクリニック

ED治療薬は心臓病と死亡リスクを低下させる

2026年7月18日

Table of Contents

ED治療薬の服用は長期的な心血管系疾患と死亡リスクを減少

日本人は、文化的な背景からか、性について多くを語ろうとしません。性行為に対して、恥ずかしい気持ちを持っている方も多く、深層心理として、”いけないこと”であるといった認識を持つ方も多いかもしれません。 その”性に関する事柄=悪いこと”といったネガティブなイメージのためか、ED治療薬に対しても、”心臓に負担をかける悪い薬物”であるといった、間違った認識が、いつ迄たっても払拭されません。風評被害といっても過言ではありません。

ここでは、いままで報告されている研究論文をメタ解析した結果、ED治療薬(PDE5阻害薬)を使用している群が、使用していない群と比較し、心血管疾患と死亡リスクを低減していることを、説明したいと思います。

およそ125万人のデータを解析

2023年5月30日までに発表された、16研究・合計1,257,759人が解析されています。

主な内容は、

  • ED治療薬の使用者と非使用者を比較
  • 追跡期間が6か月以上
  • 心血管イベントまたは死亡を評価
  • 用量・用法は問わない

対照群は、ED治療薬以外の他のED治療、プラセボ、または無治療となっています。

ED治療薬使用例は132,805人(10.5%)、平均年齢61.5歳、追跡期間中央値4.3年(6か月~7.5年)。対象の多くはED治療目的の男性でしたが、糖尿病、冠動脈疾患、心筋梗塞後、左室補助人工心臓使用中、前立腺がん・大腸がん術後など、異なる患者集団も含まれています。

対象となった人数からもわかるように、大規模な解析となります。

重大な心血管イベントの相対リスクは22%低下

この解析では、ED治療薬使用群は、重大な心血管イベントにおいて、22%の相対リスクの低下を認めています (RR 0.78, 95% CI 0.69–0.89)。

ここで言う重大な心血管イベントとは、

  • 心血管死
  • 心筋梗塞
  • 虚血性脳卒中
  • 冠動脈血行再建
  • 心不全による入院
  • 左室補助人工心臓の血栓症

を指しています。

対象をED治療に限った解析では、重大な心血管イベントは19%低下しています (RR 0.70, 95% CI 0.56–0.87)。

様々な心臓病のリスクを低下させておりますが、研究報告間の結果のバラつきが多いともされ、全ての例において、同様の効果が得られているわけでは無いともしています。

全死亡の相対リスクは30%低下

全死亡率は、大腸がん術後例と前立腺がん例での2つの研究含む、12の研究で評価されています。そこでは、全死亡リスクは30%減少しているとしています(RR 0.70、95% CI 0.56~0.87)。

さらに、ED治療目的の使用に絞った9研究では、全死亡リスクは37%低いという結果が得られています(RR 0.63、95% CI 0.49~0.81)。

がん術後例も解析対象となっており、心臓病だけでない、全死亡リスクが低下してるところは、興味が持たれます。

冠動脈疾患・心筋梗塞・心不全とED治療薬

冠動脈疾患のある患者の全死亡リスクは、統計学的に有意ではないものの、全死亡が25%少ない傾向を認めています(RR 0.75、95% CI 0.53~1.06)。

心筋梗塞の発症リスクは、統計学的に有意ではないものの、22%相対リスクが低下しています(RR 0.78、95% CI 0.60~1.02)。

心不全のリスクは、こちらもまた、統計学的に有意ではないものの、16%低下しています(RR 0.84、95% CI 0.66 ~1.06)。

いずれも、統計学的に有意ではないのため、心臓病に対して好影響があるとは断定できませんが、好影響を認めた研究報告が多いとお考え下さい。

ED治療薬と心血管疾患と死亡の直接的な因果関係は不明

対象となった16研究のうち多くは、保険・処方・診療記録を利用した後ろ向き観察研究です。ED治療薬の処方があった群では、心血管イベントと死亡が少なかったという”データ”であって、因果関係については、別に検討する必要があります。

たとえば、ED治療薬を使用している群は、性行為が可能な程度に健康であった可能性など、何らかのバイアスがかかっている可能性を排除できていません。 その他にも、

  • 治療意欲が高い
  • 医療機関へのアクセスが良い
  • 生活の質や社会活動性が高い
  • 経済的余裕がある

など、差があるのかもしれません。

厳密に言うのであれば、ED治療薬の処方を受けているが、実際は、服用していない可能性もあります。

さらには、薬剤・用量・服用頻度が不明です。例えば、5年間で一度だけシルデナフィル50mgを服用しただけであれば、その影響は、ほぼ無いと考える方が常識的かと思います。

ED治療薬の使用が心筋梗塞や死亡を予防できるわけではない

このメタ解析では、ED治療薬使用群おいて、心血管イベント(心臓病)と死亡リスクの低下を認めています。 因果関係は不明なため断言はできませんが、

『性行為をしたいと考えられる程度の健康な方であれば、ED治療薬の服用はリスクにはならない』

『セックスをしたいとする欲求があれば、ED治療薬の使用はリスクにならない』

と考えても良いかもしれません。

注意すべきは、ED治療薬の服用が健康増進につながるといった内容ではないことです。少なくとも、このメタ解析(論文)では、そこまでの結果は得られていません。

Long-term effects of phosphodiesterase-5 inhibitors on cardiovascular outcomes and death: a systematic review and meta-analysis

Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother. 2024 Jul 30;10(5):403–412.

doi: 10.1093/ehjcvp/pvae029

【ED】に関する最近の記事

睡眠時無呼吸症候群では、EDのリスクが1.8倍上昇すると報告されている
睡眠時無呼吸症候群とED

睡眠時無呼吸症候群と勃起不全(ED)は密接に関連しており、実際に睡眠時無呼吸症候群を抱える男性は、EDのリスクが1.8倍高いことが研究で示されています。睡眠障害は、様々な性機能障害を惹起することが知られていますが、特に、睡眠時無呼吸症候群の関連が強いとされています。この記事では、睡眠時無呼吸症候群がEDに与える影響や、治療の可能性について詳しく解説します。あなたの健康を守るために、ぜひご一読ください。

Read More »
アルコール使用障害男性において3ヶ月の禁酒はEDを改善する
禁酒することでEDは改善する?

お酒を飲んだ日に勃起しにくかったり、硬さが失われたりした経験はありませんか?最近のEDはお酒のせいかもしれません。禁酒することでEDが改善する可能性があるという研究結果もあります。インドの医療機関で行われた研究では、アルコール使用障害の男性104人のうち、禁酒後3か月で92人がEDの改善を認められました。飲酒習慣を見直すことが、あなたの勃起機能にどのように影響するのか、詳しく見ていきましょう。

Read More »
テストステロン(男性ホルモン)低下例に対し、それを補充することはEDを改善する?
テストステロン補充療法とED治療

テストステロン補充療法がEDに与える影響について、さまざまな研究が報告されています。テストステロン補充療法は、EDに効果的なのでしょうか?テストステロン値が低下しているからといって、性腺機能低下症と診断されるわけではありません。ここでは、心血管疾患のリスクを有する男性におけるテストステロン補充療法を検討した大規模試験「TRAVERSE」のサブ解析の結果をご紹介いたします。

Read More »
受動喫煙はEDの原因と成ります
受動喫煙がEDに及ぼす影響

受動喫煙がED(勃起不全)に与える影響についての研究があります。タバコを吸わない男性でも、受動喫煙によるリスクが存在することが明らかになっています。2001–2002年の国民健康栄養調査(NHANES)では、受動喫煙に曝露された非喫煙男性のED有病率が増加することが示されています。血清コチニン濃度が0.60ng/mLを超えると、EDのリスクが1.29倍になるという結果も。あなたの健康を守るために、受動喫煙の影響を知ることが重要です。

Read More »
長時間の座位はEDの原因となる可能性があります
長時間の座位はEDの原因になる?

長時間の座位がED(勃起不全)のリスクにどのように影響するのか、興味深い研究結果が報告されています。マレーシアのクリニックで行われたこの研究では、1日8時間以上座っている男性は、中等度〜重度のEDを発症するオッズが約5.84倍高いことが示されています。運動習慣があっても、長時間座っていることがEDのリスク要因となる可能性があるのです。座位時間とEDの関係について、さらに詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

Read More »