GLP-1受容体作動薬に関連する男性性機能障害:FAERSデータの横断的分析

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は、2型糖尿病やダイエット治療に広く処方されています。
本邦でも、画期的な糖尿病治療効果により、広く使用されています。また、体重の管理にも有用であり、現代人のニーズにマッチした薬剤です。
しかし、比較的、新しい機序の薬剤であるため、認識されていない副作用がある可能性があります。
添付文書では
ちなみにリベルサスのインタビューフォーム(医師向けの詳細な説明書)ではedの発現頻度は0.1%未満、オゼンピックでは0.1%、マンジャロでは15mg(かなりの高用量)で0.2%(5mgおよび10mgでは0%)となっています。この程度の頻度の場合は、因果関係をみつけることは難しいと言えます。
しかし、市販ご調査にて、初めてわかることもあります。
有害事象報告システム(FAERS)による副作用報告
この報告は、アメリカの食品医薬品局FDAによる有害事象報告システム(FAERS)のデータを用いて、GLP-1受容体作動薬と男性性機能障害との関連性を調査しています。医師または患者自身が登録する副作用報告のデーターベースです。市販後調査の一つとお考え下さい。
2003年第4四半期から2024年第1四半期までの報告をOpenVigil 2.1プラットフォームを用いて分析。GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド、セマグルチド、デュラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、リラグルチド)に関連するオルガスム機能障害、勃起障害、または性欲減退を経験した男性患者を検索し、182例の副作用報告が特定(年齢層は40~60歳が大部分を占めています)されています。
GLP-1ダイエットとEDの因果関係は乏しい
エキセナチドが報告数の24.2%を占め、次いでセマグルチド(21.4%:リベルサスまたはオゼンピック)でした。
使用用途としては、糖尿病治療が最多(43.9%)でした。統計的に有意なカイ二乗値(P< 0.0001)を示したものの、ROR(0.41、95%信頼区間(CI):0.36~0.48)、PRR(0.41、95% CI:0.36~0.48)、RRR(0.42、95% CI:0.36~0.48)が低いことから、関連性は弱いことが示唆されます。これらの知見は、GLP-1の使用が拡大するにつれてモニタリングの必要性はありますが、全体的な患者リスクは非常に低いと考えられます。
その他の要素がEDに影響している
先にも示しましたが、GLP-1ダイエットによるEDの発症は、関連性に乏しいと言えます。
GLP-1ダイエットとEDの因果関係は置いておくとして、肥満症とEDの関連は証明されています。
肥満症は、俗に言うメタボは、医学的にはインスリン抵抗性を病態としています。このインスリン抵抗性が、陰茎の血管の拡張性を損ね、EDを発症しえます。器質性EDの原因となります。
また、肥満症は、心因性EDの原因ともされています。肥満症の中には、ご本人の体型にコンプレックスを抱いている方がいます。裸になることへの抵抗感がある場合、これが性欲を減退させ、EDにつながることも指摘されています。
Male sexual dysfunction associated with GLP-1 receptor agonists: a cross-sectional analysis of FAERS data
Int J Impot Res.2025 Apr 16.