マンジャロによるED治療薬の効果遅延の可能性|池袋スカイクリニック

マンジャロによるED治療薬の効果遅延の可能性

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マンジャロによるED治療薬の効果遅延の可能性

2026年8月15日

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マンジャロによってED治療薬バルデナフィルの吸収が遅延した例

ED治療薬が市販されてから四半世紀が経過しております。現在では、普及が進み、バルデナフィルやシルデナフィルなどのED治療薬を使用したことのあるかも大勢いらっしゃると思います。

また、食生活の欧米化などライフスタイルの変化により肥満・体重増加で悩まれている方も多いかと思います。 最近では、マンジャロなどGLP-1受容体作動薬と呼ばれる薬剤が、肥満症に対する特効薬として知られるようになり、保険適用外(一部保険適用)・効能適応外ながらも、使用されつつあります。イーロン・マスク氏が、その使用をカミングアウトしたことでも有名です。

基本的には、マンジャロなどのGLP-1受容体作動薬は、糖尿病治療薬であり、その効果は著しいものです。現在では、糖尿病治療のゲームチェンジャーとし、広く処方されるようになっています。

ED治療薬とGLP-1受容体作動薬は、広く使用されるに至っており、それを併用されている方もいらっしゃるかと思います。

ここでは、GLP-1受容体作動薬であるマンジャロによって、ED治療薬であるバルデナフィルの効果発現が遅延したと考えられる例を経験したので、注意喚起も含め報告します。

夕に服用したバルデナフィルが翌朝になって効いてくる

糖尿病歴30年程度の60歳代男性。
糖尿病以外には、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などで治療中。
糖尿病治療薬として、経口血糖降下剤数種内服、インスリン療法を実施。
これらに加え、GLP-1受容体作動薬であるマンジャロを使用。数ヶ月前より、マンジャロ7.5mgに増量。
ED治療薬は、主にバルデナフィル20mgを使用。

よくある相談内容ではありますが、「最近、バルデナフィルの効果が十分に得られない」、と言った内容で相談を受けました。 年齢の影響と、糖尿病の影響を気にされて、半ばあきらめている印象すらありました。 よくよく、お話を伺ったところ、『夕に服用したバルデナフィルが、翌朝になって、やっと効果が発現してくる』といったことが多く、「効果が無い」のではなく「効果発現が遅い」の方が、訴えとして正しいと捉えました。

このような場合、食事の影響(食事によってED治療薬の吸収が遅延する)を第一に疑うのですが、空腹時の服薬は心がけているとのことでした。

内視鏡検査時に食物残渣が多い

さらに、お話をお伺いすると、「最近、主治医が変わって、マンジャロが7.5mgに増量になった」、「胃の内視鏡検査を受けたときに食物残渣が多いため術前(前日)の食事内容の間違いを疑われた」との、ことでした。

これらのエピソードから、「マンジャロによる食事の消化吸収の遅延」から「ED治療薬が食物と混ざることによる吸収遅延」・「翌朝の効果発現」といった流れで、ED治療薬の効果発現が遅延したと推測をしました。マンジャロ自身によるバルデナフィルの吸収遅延も推測されました。 もちろん、確定ではありませんが、可能性は非常に高いと考えています。

バルデナフィル自体が効きにくくなっている可能性は無いのか?

今回のケースでは、バルデナフィル自体の効果が得にくくなっている可能性は少ないと考えます。

糖尿病の既往が長いため、動脈硬化による血管性EDあるいは糖尿病性神経障害による神経性EDによる効果不良と考えた場合、そもそもED治療薬の効果自体が得にくくなります。「翌朝になって効果が出てきた」とするエピソードとは矛盾があります。

糖尿病や高血圧などの動脈硬化性疾患による血管性EDを考えた場合、その進行は動脈硬化に伴うものになり、EDの進行は緩徐です。やはり、「最近(数ヶ月)」とするエピソードとは矛盾があります。

GLP-1受容体作動薬によって一部薬剤の吸収が遅延する可能性

GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は胃排出を遅らせるため、一部の併用する経口薬の吸収を遅延させることが指摘されています。

  • アセトアミノフェン
  • 経口避妊薬

は、代表例です。

特に、マンジャロ(チルゼパチド:ゼップバウンド含む)と経口避妊薬への影響は、明確に確認されています。 血中濃度のピーク到達時間(Tmax)の遅延、最高血中濃度(Cmax)および総吸収量(AUC)の低下を認められています。そのため、米国のマンジャロの添付文書には、経口避妊薬を使用している場合は、

  • マンジャロ開始後4週間
  • 増量後それぞれ4週間

は、非経口避妊法へ変更するか、コンドームなどを追加するよう記載されています。この影響は、初回投与時に最も強く、反復投与によって、胃排出遅延に対するタキフィラキシー、すなわち「慣れ」が生じるため、弱くなるとされています。

一般的な常用薬は容量調整は不要とされる

定期的に服用する薬剤に関しては、GLP-1受容体作動薬によって、最高血中濃度(Cmax)や血中濃度のピーク到達時間(Tmax)には変化がみられても、総吸収量(AUC)に変化がないため、臨床的に重要な変化は認められず、通常は用量調整不要とされています。 総吸収量(AUC)に変化がないため、定期的に服薬することによって、効果が安定します。

しかし、頓服薬であるED治療薬は、注意が必要になる可能性があります。ED治療薬においては、最高血中濃度(Cmax)はペニスの硬さに、血中濃度のピーク到達時間(Tmax)は服薬タイミングおよび性行為のタイミングに直結します。

GLP-1受容体作動薬使用者における内視鏡時の食物残渣

GLP-1受容体作動薬による上部消化管内視鏡(胃カメラ)における食物残渣の増加は、小規模な報告がほとんどですが、しばしば報告されています。 マンジャロ(チルゼパチド)ではなく、オゼンピック(セマグルチド)による影響を検討した小規模ですが代表的な研究報告があります。 その報告では、ダイエット目的あるいは糖尿病治療目的のために、週一回のオゼンピック(セマグルチド)による治療を行った例では、治療を行っていない例と比較し、検査時に食物残渣を認める率が約5倍高かったとしています。 オゼンピックの休薬期間は約10日、術前の絶食期間は、固形物で約14.5時間、液体で約9.3時間と、一般的な術前の絶食時間からみて、より長い時間の絶食時間が設けられています。 消化器症状の有無と、食物残渣の有無の間に統計学的な関連があるとしていますが、消化器症状が無い例であっても食物残渣は認められており、絶対ではないとしています。

この報告から読み取れることは、オゼンピック(セマグルチド)によって、胃排泄の遅延から食物残渣が生じる可能性がある。食物残渣を予測する因子として消化器症状が挙げられるが絶対ではない、ということになります。 難しく書きましたが、その時の「体調」であったり、直近の「食事内容」、「運動量」などによって、変わってくる可能性が高いと思われます。 オゼンピックの休薬期間は10日程度では短い可能性もありますが、これもまた、「体調」や「食事内容」「運動量」に修飾される可能性があると思われます。

オゼンピック(セマグルチド)より強力なマンジャロ(チルゼパチド)であれば、より食物残渣が生じる可能性が高いかもしれません。 オゼンピック(セマグルチド)より新しいマンジャロ(チルゼパチド)にも、同様の報告も散見されるようになるつつありますが、やはり小規模な報告がほとんどです。大変申し訳ございませんが、ここでは割愛させていただきます。

ED治療薬を頓服した場合の影響

GLP-1受容体作動薬がED治療薬の吸収および効果に影響を与えたとする報告は、2026.8時点では、当方が検索する範囲内では、見つけることはできませんでした。 ただ、その機序を考えた場合、影響を受ける可能性を念頭においておく必要があると考えます。 特に、このケースのように、マンジャロ7.5mgと高容量を使用している場合は注意が必要です。

先にも記載いたしましたが、ED治療薬の効果を最大限引き出すには、最高血中濃度(Cmax)に到達したタイミング(Tmax)で性行為をすることが必要です。 そのため、食事の影響を考慮し、性行為のタイミングに合わせた服用が必要です。

マンジャロなどのGLP-1受容体作動薬使用例で、ED治療薬の効果が得難い、効果発現が遅延する場合は、GLP-1受容体作動薬そのものの影響による吸収遅延、食物の胃排出遅延によって生じた食物残渣とED治療薬が混ざることで生じる吸収遅延により、最高血中濃度(Cmax)の低下し、血中濃度のピーク到達時間(Tmax)が遅延してしまった可能性を疑う必要があります。

GLP-1受容体作動薬使用者全員に生じるわけではない

まず、はじめにお伝えしないといけないことは、マンジャロなどのGLP-1受容体作動薬を使用している人全てに、このようなED治療薬の効果発現遅延が生じるわけではないことです。 実際に、肥満の解消がED改善に繋がることもございます。 恐らくは、ある程度は容量依存性に生じる可能性があると考えられるので、低容量のGLP-1受容体作動薬による影響は少ないように思われますが、実際に、データが無いため断言はできません。

もし、GLP-1受容体作動薬を使用していて、ED治療薬の効果が得られない場合は、可能性の一つとして、念頭おいても良いかもしれません。

では対策は?

GLP-1受容体作動薬の減薬や休薬が可能であれば、それを行うのが良いでしょう。しかし、そう簡単には減薬も休薬もできないケースも多々あると思います。 GLP-1受容体作動薬を使用している以上、その影響をゼロにすることは難しいかもしれませんが、影響を少なくすることは可能かもしれません。

まず、

  • 性行為日は消化の良い食事を心がける
  • 食事量をセーブする
ことで、食物残渣を減らすことを試みます。

また、

  • 飲水を多くすることでED治療薬の吸収を促す

ことも、有効かもしれません。

  • そもそも、効果発現は遅延するもの

と考え、ED治療薬を服用するという考えもあると思います。ご自身にあった服薬タイミングを見つけていただく必要があります。やはり、食事内容によって食物残渣の内容と程度が変わってくるため、注意は必要となります。

長時間型ED治療薬であるタダラフィル(シアリス)は、緩徐な血中濃度のピークを持つため、作用時間に余裕があります。これを、前もっても服用するのも良いかもしれません。ただし、バルデナフィル20mgと比較すると、ピークパワーとしては弱くなってしまします。

ED治療薬を頓服ではなく、低容量タダラフィル5mgを常用する、いわゆるデイリータダラフィルに変更する、ことも一案かもしれません。ただ、この場合も、やはり、バルデナフィル20mgと比較した場合は、ED改善効果としては弱くなってしまいます。

以上、改善策を挙げましたが、このような例の報告が少ないため、実績がありません。このような方法をとった場合でも、ED改善が不十分である可能性もあります。あくまで個人的な見解であることを、ご理解下さい。

参照

The impact of tirzepatide and glucagon-like peptide 1 receptor agonists on oral hormonal contraception

J Am Pharm Assoc (2003). 2024 Jan-Feb;64(1):204-211.e4.

doi: 10.1016/j.japh.2023.10.037


Relationship between perioperative semaglutide use and residual gastric content: A retrospective analysis of patients undergoing elective upper endoscopy

J Clin Anesth. 2023 Aug:87:111091.

doi: 10.1016/j.jclinane.2023.111091

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