シルデナフィル無効のED例に対する対処法

シルデナフィルはじめ、いわゆるPDE5阻害剤に分類されるED治療薬は、勃起不全治療に革命をもたらし、多くの男性患者の福音となりました。ED治療薬は、第一選択薬としての地位を確立しています。
しかし、それでも完全ではありません。例えば、シルデナフィルが無効であった場合、バルデナフィルやタダラフィルのなどの他のED治療薬に変更することで、効果が得られるケースもありますが、それでも100%効果が得られる訳にいきません。その場合、次の手段として、ICI(陰茎海綿体注射)療法や陰茎プロステーシス、吸引デバイスが選択される場合もありますが、費用や手軽さなどは、内服薬に大きく劣ります。なにより、人工的な勃起であり、自然な勃起が得られないことは、大きなストレスとも言えます。
ピオグリタゾンとは
ピオグリタゾンは、チアゾリジン系の薬剤に分類されます。主に、インスリン抵抗性を改善することで、抗糖尿病効果を発揮します。インスリン抵抗性とは、インスリン分泌は保たれているが、その効果自体が低下している状態を指します。簡単には肥満例とお考えいただいて差し支えございません。インスリン抵抗性を主病因としているのがメタボリック症候群、いわゆるメタボになります。
肥満を合併した糖尿病例に有効な薬剤です。
他のインスリ抵抗性改善薬としてメトホルミンがありますが、作用機序が全く異なります。
PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)作動薬に分類されます。
糖尿病治療薬であるピオグリタゾンはEDを改善する
この研究報告は、糖尿病治療薬であるピオグリタゾンのED改善効果に関するものになります。
国際勃起機能スコアIIEFで中等度〜重症と診断され、最低でもシルデナフィルが4回以上無効例で、糖尿病を含む神経疾患、心因性ED例、性欲減退例を除外など、38例(35〜70歳)を対象にピオグリタゾンの効果を二重盲検試験で検証しています。
その結果、ピオグリタゾン使用群では、国際勃起機能スコアIIEFの勃起機能EFドメインが、13.32±0.60から17.63±1.05に優位に増加したのに対し、対照群は変化がなかったとしています(4.32±0.7の増加に対し0.21±0.44)。
また、”治療によって勃起機能の改善が得られましたか?”、”治療によって性機能の改善が得られましたか?”の二つの問いに対しても、ピオグリタゾン群は良好な結果が得られています。
この研究報告では、勃起機能の評価とともに、血圧や脂質、ホルモン、BMIなど、様々な項目が検査されていますが、いずれの項目も有意な差が認められないため、ピオグリタゾンが、直接的にEDを改善している可能性が高いと結論づけています。
ピオグリタゾンをED治療に推奨しているわけではない
ピオグリタゾンは、肥満合併糖尿病例において、著名な血糖改善効果を示すことがあり、有用な治療薬でした。しかし、海外からピオグリタゾンが膀胱癌の可能性を僅かに上昇させるという報告があってから、その使用が避けられるようになっています。そのため、この報告を持って、ED治療薬の無効例にピオグリタゾンの使用を推奨しているわけではありません。
また、研究規模が小さいため、今後の研究報告を待つ必要があります。
EDの改善には肥満の解消や運動習慣が大切
以前、インスリン抵抗性改善薬であるメトホルミンのED改善効果をご紹介しておりますが、インスリン抵抗性改善薬という意味では、ピオグリタゾンも同方向の薬剤であり、この研究報告では、やはり、EDの改善効果を認めています。
つまり、インスリン抵抗性(=メタボ)の改善が、EDの改善につながるとも言えます。
また、EDの改善には、体重のコントロールや運動習慣が大切なことは、かつてから指摘されています。
このことからわかるように、EDは高血圧や脂質異常症、メタボリック症候群のような、生活習慣病とも言えます。勃起機能を維持するため(健康を維持するため)にも、日頃の生活習慣が大切になります。
参照:
Effects of pioglitazone on erectile dysfunction in sildenafil poor-responders: a randomized, controlled study
J Pharm Pharm Sci. 2008;11(1):22-31.
doi: 10.18433/j3tg6h/a>