セマグルチドはアルツハイマー病を予防する

糖尿病や肥満症は、アルツハイマー認知症のリスクとして認識されています。
つまり、これらを治療することが、アルツハイマー認知症の発症抑制に繋がります。
今や、糖尿病治療や肥満治療の中心的な薬剤であるGLP-1受容体作動薬は、さらに、神経保護作用や抗炎症作用も指摘されています。
GLP-1受容体作動薬の中でも、特にセマグルチド(オゼンピックやリベルサス)は、血糖効果作用やダイエット効果に優れており、既存の抗糖尿病薬以上に、アルツハイマー認知症の発症に有益ではないかと期待されています。
ここでは、アメリカからの報告をご紹介いたします。
アルツハイマー病の治療は喫緊の重要課題
アメリカの推測では、2024年には、65歳以上のアメリカ人の約690万人がアルツハイマー病(AD)を患うとされ、2060年には、1,380万人に増加すると予測されています。
本邦においては、2012年は認知症患者数が約460万人、高齢者人口の15%という割合だったものが、2025年には5人に1人(20%)に増加するとする報告もあります。
世界保健機関WHOの推計では、世界規模では毎年1,000万人近く、3秒に1人が新たに認知症になっているとしています。
人類にとっての、最大の課題の一つとなります。
糖尿病や肥満症が激増している現在、将来のアルツハイマー認知症の増加が懸念されており、これを如何に抑制できるかと言った研究が盛んに行われています。
米電子カルテ(EHR)データを用いた100万人規模の擬似ランダム化試験
アメリカ疾病予防管理センターCDCが管轄するNational Electronic Health Records Surveyより、約1,094,761名の2型糖尿病患者(アルツハイマー認知症の既往なし)を対象に、リベルサスまたはオゼンピック、更にはウゴービの使用開始者を、他の抗糖尿病薬使用開始者と同数ずつ傾向スコアマッチングにより比較。
比較薬は、インスリン、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニルウレア(SU)、チアゾリジンジオン(TZD)、および他のGLP-1受容体作動薬。
フォローアップ期間は、最大3年間。
エンドポイントは、アルツハイマー認知症の初回診断となっています。
セマグルチドは有意にアルツハイマー認知症のリスクを低下
セマグルチド使用開始は、他の抗糖尿病薬に対して、アルツハイマー認知症のリスクを40~70%減少させたとしています。
インスリンに対してのリスク低下が最も高く、ハザード比は0.33(95% CI: 0.21–0.51)、つまり67%リスクを低減させたとしています。
他のGLP-1受容体作動薬と比較した際にはハザード比0.59(95% CI: 0.37–0.95)と、やや弱いながら有意なリスク低減が見られたとしています。
アルツハイマー病に関連する薬の処方も、セマグルチド群で有意に少なかったとのことです。
これらは、性別、年齢層、肥満の有無で層別解析を行っても、ほぼ同様の傾向が認められています。
高齢になるとアルツハイマー認知症の発症リスクは高まりますが、この報告では、年齢に関わらず、セマグルチドはリスクを同様に低減したとしています。
因果関係を検討するには、さらなる研究が必要
2025年9月現在、早期のアルツハイマー病に対して、経口と皮下注射のセマグルチド(リベルサスとオゼンピック)に対して、 その影響や安全性、末梢性および中枢性の炎症に与える影響などを、検討する二重盲検試験が実施中です。
ただ、発症抑制に関するランダム化比較試験(RCT)は、現時点では無かったと思います。
この研究報告は、アルツハイマー認知症予防に関するものですが、試験デザインの関係から、セマグルチドとアルツハイマー認知症の因果関係の確定には至っていません。
そのため、ランダム化比較試験(RCT)による検証が必要という結論が強調されています。
GLP-1受容体作動薬は、非常に面白い薬剤です。
今は、糖尿病やダイエット用に使用されておりますが、もしかしたら、今後、その適応は拡大されるかもしれません。
Associations of semaglutide with first‐time diagnosis of Alzheimer’s disease in patients with type 2 diabetes: Target trial emulation using nationwide real‐world data in the US
Alzheimers Dement. 2024 Oct 24;20(12):8661–8672.
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