前立腺肥大症に対するタダラフィルは糖尿病の新規発症を抑制|池袋スカイクリニック

前立腺肥大症に対するタダラフィルは糖尿病の新規発症を抑制

池袋スカイクリニック

前立腺肥大症に対するタダラフィルは糖尿病の新規発症を抑制

2026年2月13日

Table of Contents

前立腺肥大症患者においてタダラフィルはαブロッカーと比較し糖尿病発症を抑制する

現在、中心的に使用されているED治療薬は、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルの3剤になりますが、いずれもPDE5阻害薬に属する薬剤です。そのユニークな作用から、ED以外の他の疾患に対しても効果が有る可能性が研究されてきました。

ここでは、前立腺肥大症例において、α遮断薬とタダラフィルを比較した場合、糖尿病の発症率に差が生じるか否かを検討した研究報告をご紹介します。日本発の研究報告です。

一般的に、年齢とともに血糖値は上昇する傾向にあります。血糖上昇を抑制できるとするのであれば、それは、アンチエイジング作用とも言えます。

前立腺肥大症には、主にα遮断薬が日常診療で使用

前立腺肥大症の排尿障害に対して、古くから、α遮断薬、具体的には、シロドシン(ユリーフ)、タムスロシン(ハルナール)、ナフトピジル(フリバス)が、使用されていました(アルファ遮断薬3剤の使い分けもありますが、ここでは割愛します)。

α受容体を遮断することにより尿道を広げ、排尿をスムーズにします。

α遮断薬は、血管を広げる作用も有るので、タイプによっては、降圧薬として使用される薬剤もあります。 高血圧のみに適応があるドキサゾシン(カルデナリン)やブナゾシン(デタントール)、高血圧と前立腺肥大症に伴う排尿障害に適応の有るウラピジル(エブランチル)、テラゾシン(バソメット)などがあります。

上記の3剤は、降圧作用は乏しいため、降圧薬として使用されることはございません。

タダラフィルと前立腺肥大症の適応

タダラフィル、ED治療薬で言うところのシアリスですが、様々な作用が知られています。

シルデナフィルおよびバルデナフィルも、PDE5阻害剤に分類され、様々な作用が指摘されていますが、タダラフィルの効果が長時間持続する薬剤プロフィールから、他疾患への転用が行われています。

その一つが、前立腺肥大症における排尿障害です。 最近では、下部尿路症状(LUTS)と主に呼ばれていますが、病態としては、前立腺肥大による尿道の圧迫、それによる排尿障害が適応となります。

ED治療薬としてタダラフィルを考えた場合、その作用は、主に血管拡張作用になります。

血管拡張作用同様、尿道拡張作用も有しているため、前立腺肥大症による尿道圧迫を緩和し、排尿障害を改善します。

JMDC保険請求データーベースを対象に解析

JMDC社の保険請求データベースを利用。

このデータベースには、日本における、比較的大規模な企業で働く約1600万人の従業員およびその家族が含まれ、2023年1月時点での日本人人口の約13%をカバーしているとのことです。

前立腺肥大症の診断があり、その治療目的のために、新たにタダラフィル5mg(5,180人)あるいはα遮断薬(20,049人)が処方された例を対象とし、新規の2型糖尿病の発症を比較検証しています。

フォローアップ期間は、5年間となっています。

注:除外項目は、ここでは省略いたします。

タダラフィルはαブロッカーに比較し有意に糖尿病の新規発症を抑制

解析では、2型糖尿病の新規発症率は、タダラフィル5mg群では1000人あたり5.4人/年、α遮断薬群では1000人あたり8.8人/年と、有意にタダラフィル群が低率であることが明らかになっています。(RR、0.47;95%CI、0.39~0.62;HRは0.42;95%CIは0.25~0.71;5年CIDは−0.031;95%CI、−0.040~−0.019)

簡単には、タダラフィル5mgの使用は、α遮断薬に比較し、新規2型糖尿病の発症を、およそ53%減少させています。

サブ解析では、対象が、前糖尿病であろうと、正常血糖であろうと、同様に、タダラフィル群において、新規2型糖尿病発症率は低率であったこともわかっています。さらに、非肥満例あるいは肥満例であっても、やはり、タダラフィル群の方が有意に低率であったとしています。


前糖尿病サブグループ(RR 0.49; 95%CI 0.40~0.69)

非前糖尿病サブグループ(RR 0.34; 95%CI 0.20~0.63)

肥満サブグループ(RR 0.61; 95%CI 0.43~0.80)

非肥満サブグループ(RR 0.38; 95%CI 0.24~0.62)

アルファ遮断薬が2型糖尿病を誘発しているわけではない

誤解しないでほしいのは、α遮断薬は悪者ではないということです。

ほとんどの場合、α遮断薬によって、糖尿病発症が増加することはありません。耐糖能には影響を及ぼさない、あるいは、好影響を与える可能性が有る薬剤とされています。

第一選択薬ではありませんが、糖尿病を合併した高血圧症に対して、処方される薬剤でもあります。

糖尿病や脂質異常症などの代謝性疾患に対して悪影響を及ぼさないとされています。

メカニズムは不明|血管内皮機能の改善による?

本研究は、データーベースから抽出された、タダラフィル5mgあるいはα遮断薬と前立腺肥大症との関連を調査したものであり、直接的な、因果関係の特定には至っていません。

メカニズムについては、不明です。

いくつかの研究では、血管内皮障害は、糖尿病の独立した危険因子であると報告されています。

それに対し、タダラフィルは、血管内皮障害を改善する可能性が指摘されています。しばしば指摘されるタダラフィルのアンチエイジング作用ですが、血管内皮障害を改善が、その作用の一部であるとされます。

タダラフィルの血管内皮性が改善作用が新規2型糖尿病の発症を抑制しうるのではないか?とする考察が記載されていましたが、現時点では、はっきりしないとも記載されています。

直接的な影響なのか間接的な影響なのか判断が付きません。

これをもって、2型糖尿病発症予防のために、タダラフィルを服用を推奨するわけではありません。

Tadalafil use is associated with a lower incidence of Type 2 diabetes in men with benign prostatic hyperplasia: A population-based cohort study

J Intern Med. 2024 Nov;296(5):422-434.

doi: 10.1111/joim.20012. Epub 2024 Sep 17.

【アンチエイジング】に関する最近の記事

前立腺肥大症におけるタダラフィルの使用は、2型糖尿病の新規発症を予防する
前立腺肥大症に対するタダラフィルは糖尿病の新規発症を抑制

タダラフィル5mgの常用が糖尿病発症を抑制する可能性があることが、前立腺肥大症患者を対象にした研究で明らかになりました。タダラフィルは、従来のα遮断薬と比較して、新規2型糖尿病の発症率を約53%減少させることが示されています。この研究は、日本の大規模な保険請求データベースを基にしており、タダラフィルの血管内皮機能改善作用が好影響を与えた可能性が指摘されていますが、現時点では、明らかになっておりません。

Read More »
セマグルチドはダイエット用に使用されることが多いですが、ニコチン依存症のリスクを回避させる可能性がある
タバコ使用障害のリスク低下の可能性|セマグルチド

セマグルチドは、糖尿病や肥満治療に用いられるGLP-1受容体作動薬ですが、最近の研究でタバコ使用障害のリスクを低下させる可能性が示されています。セマグルチド製剤であるリベルサスやオゼンピックを使用した患者では、喫煙欲求が減少したとの報告があります。さらに禁煙後の体重増加を抑制する可能性もあります。タバコ使用障害の診断基準など、詳しくは本文をご覧ください。

Read More »
全身性炎症反応指数を用い、前もってED治療薬タダラフィルの効果を予測しようとする研究報告
全身性炎症反応指数で見るタダラフィルの効果予測

全身性炎症反応指数(SIRI)が、ED治療薬タダラフィルの効果を予測する可能性についての研究があります。SIRIは血液中の免疫細胞のバランスから炎症状態を数値化した指標で、がんの予後や動脈硬化や心血管疾患との関連が示されています。この研究では、タダラフィルが無効だった患者の特徴を明らかにし、ED治療における新たなアプローチを提案しています。

Read More »
マンジャロなどの、いわゆるGLP-1ダイエットで使用される薬剤は、アルコール依存症を改善させる可能性が有る
アルコール依存性にマンジャロやオゼンピックが有効である可能性

アルコール依存症の治療に新たな可能性が見えてきました。最近の研究では、ダイエット薬として知られるGLP-1受容体作動薬、特にマンジャロやオゼンピックが、飲酒欲求の低下や飲酒量の減少に寄与する可能性が示唆されています。ここで紹介するSNSを利用した調査や153名への聞き取り調査から得られた研究報告は、これらの薬剤がアルコール依存症に対する新たなアプローチとなるかもしれないことを示しています。

Read More »
ED治療薬であるシルデナフィルの使用者はアルツハイマー病のリスクが低下する
シルデナフィル使用者はアルツハイマー病のリスクが低い

シルデナフィル使用者はアルツハイマー病のリスクが低いという興味深い研究結果が報告されています。ED治療薬として知られるシルデナフィルは、認知機能に対する効果が注目されており、特にその使用者は、アルツハイマー病のリスクを54%も低下していたとする報告があります。しかし、直接的な因果関係は明らかではなく、生活習慣や他の要因も影響を及ぼすことが考えられています。詳細な研究結果や今後の展望について、ぜひご覧ください。

Read More »
妊孕性(妊娠力)を高めるには、GLP-1ダイエットによる肥満の解消が重要です。
妊孕性はGLP-1ダイエットで向上しうる

GLP-1ダイエットが女性の妊孕性を向上させる可能性があることをご存知ですか?肥満は、妊娠に関するリスクを高める一因とされており、体重管理が不妊治療に重要な役割を果たします。最新の研究では、GLP-1受容体作動薬は、単に妊娠前のダイエットに有効なだけではなく、生殖機能に直接的なプラス効果をもたらすことが報告されています。妊娠を希望する女性にとって、無理のないダイエット治療の最有力候補となりえます。

Read More »