テストステロン補充療法とED治療|池袋スカイクリニック

テストステロン補充療法とED治療

池袋スカイクリニック

テストステロン補充療法とED治療

2026年10月2日

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テストステロンを補充することでEDは改善するのか?

50歳代以降の男性であれば、男性更年期というワードを聞いたことがるある方もいるかと思います。 男性更年期障害は、加齢性腺機能低下症、あるいはLOH症候群(ロー症候群:Late-Onset Hypogonadism)と呼ばれることもあります。 症状は多岐にわたり、性欲減退やEDなどの男性機能に関する事項から、イライラ感や不眠、意欲や集中力の喪失など、メンタルにも影響を及ぼします。さらに、関節痛や筋肉痛、肥満や生活習慣病にも関与しているともされています。

男性ホルモンであるテストステロンが減少しているのであれば、それを補充することでEDが改善すると考えることは、自然な考えではありますが、実際のところはいかがなのでしょうか?

EDに対するテストステロン補充療法については、様々な研究報告があります。ここでは、テストステロン補充療法による心血管系への効果と安全性を検討した大規模試験「TRAVERSE」の中で実施された、性機能に関するサブ研究を、ご紹介いたします。

テストステロンとは

テストステロンは、主に精巣でつくられる男性ホルモンです。思春期に男性らしい体つきを形成するだけでなく、成人後も性欲や勃起機能、筋肉や骨の維持、造血、気分や活力などに関わっています。

テストステロンの分泌量は加齢とともに徐々に低下しますが、過度なストレス、睡眠不足、肥満、糖尿病などによっても低下することがあります。

テストステロンと勃起の関係

テストステロンは、主に次のような形で男性の性機能を支えています。

  • 性欲(リビドー)の維持
  • 性的刺激に対する脳の反応
  • 夜間・早朝勃起の維持
  • 陰茎海綿体における一酸化窒素(NO)経路の維持
  • PDE5阻害薬が作用する仕組みの維持

つまり、テストステロンが著しく低下すると、

  • 性欲がわかない
  • 性的刺激に反応しにくい
  • 早朝勃起が減る
  • 勃起が十分に硬くならない

TRAVERSE研究の概要

心血管疾患がある、またはそのリスクが高い男性で、かつ、性欲低下を伴う性腺機能低下症の男性(平均年齢約64歳)1,161人を対象に、テストステロンゲル群とプラセボゲル群とに無作為に分け、二重盲検試験を行っております。

低テストステロンの条件として、
『別々の日の早朝・空腹時採血で、2回とも総テストステロン300ng/dL未満』
とし、血中テストステロン350〜750 ng/dLを目標に、テストステロンを経皮ゲルにて投与を行っています。

EDの評価は、国際勃起機能スコアIIEF-5スコアで検討されています。 その他、性的活動(PDQ-4)、性欲(HIS-Qの性欲項目)、性腺機能低下症の症状(HIS-Q総合スコア)が検討されています。

テストステロン補充療法によるED改善効果

結論から申しますと、テストステロン補充療法は、プラセボと比較し、ED改善効果は認められておりません。

これに対し、性的活動や性欲、性腺機能低下症の症状は、改善を認めています。

この研究は、低テストステロンに伴う性欲低下への効果を支持する一方、同じ患者でもEDの改善まで期待できるとは限らないことを示しています。

テストステロン補充療法は勃起機能を改善しないのか?

本研究報告とは異なり、EDを改善するとする研究報告もあります。 その場合のEDの改善幅は、国際勃起機能スコアの勃起ドメイン(IIEF-EFスコア)で、プラセボ比で2.5点前後の改善を認めたとする報告が多いです。 この改善幅は、バイアグラのIIEF-EFスコア改善幅が、5〜8点程度とされていることから、その効果は、大きくはありません。 IIEF-EFの臨床的に意味のある改善幅は、

  • 軽症ED:2点
  • 中等症ED:5点
  • 重症ED:7点

とされています。 そのため、
『軽症EDではテストステロン補充療法単独でも臨床的改善を得られる可能性』
はありますが、
『中等症以上のEDでは単独治療では効果は不十分(PDE5阻害薬など、その他の治療の併用が必要)』
であると考えられます。テストステロン補充療法によるED改善効果に対し、過度な期待は禁物です。

本研究では、勃起機能が改善しなかった理由について、対象者に心血管疾患や糖尿病が多かった(低テストステロン以外のED危険因子が多かった)ことが影響した可能性を挙げています。他の研究報告でも、同様の指摘がされている場合もあります。

性腺機能が低下している場合のみ検討する

当然ですが、闇雲にテストステロン補充療法を行えばよいというものではなく、まずは、テストステロンが低下している方が対象になります。

さらに、ヨーロッパ泌尿器科学会では、
『性腺機能低下症を伴う軽症EDでは、テストステロン補充療法を第一選択として用いる』
ことを推奨しています。 ここでは、テストステロン値の低下ではなく、『性腺機能の低下』という様に表現されていることに注意する必要があります(注:テストステロン値の低下は、様々な原因で生じるため、テストステロン値の低下だけで性腺機能低下の診断とはなりません)。

加えて、
『テストステロンが正常な男性にテストステロン補充療法を実施しない』
ことを強く推奨しています。

また、アメリカ泌尿器科学会では、
『テストステロン補充療法の単独治療だけでなく、ED治療薬の併用が有効である可能性を説明する』
と記載されています。

テストステロン値の低下=性腺機能の低下とは限らない

テストステロンを血液検査で測定し、確認する必要があります。 テストステロンの測定は、様々な要素で変動するため、

  • 午前中・空腹時
  • 別の日に再測定

を行う必要があります。

うつ病やそれに伴う状態でもテストステロンが低下する可能性があり、さらに、うつ症状と男性更年期障害(lOH症候群)の症状は、オーバーラップすることもあるため、テストステロン値が低下しているからと言って、男性更年期の診断にならないことに、注意が必要です。 その他にも、

  • 睡眠不足
  • 食事量低下・体重減少
  • 肥満・運動不足
  • 強いストレス
  • 急性疾患
  • 飲酒
  • オピオイドやステロイド薬
  • 一部の向精神薬による性機能障害や高プロラクチン血症

などが、テストステロン値の低下をきたす可能性があるとされます。

漫然と継続しない

アメリカ泌尿器科学会は、
『テストステロン補充療法によってテストステロン値が正常化したにもかかわらず、3~6か月で症状や所見が改善しない場合は、治療中止を検討する』
ことを推奨しています。

男性更年期障害に対するテストステロン補充療法の奏効率は、20〜50%程度とされています。 奏効率の低さは、診断精度の低さが背景にあるのかもしれません。テストステロン補充療法が、今ひとつ普及しない理由かもしれません。

【参照】

Effect of Testosterone Replacement Therapy on Sexual Function and Hypogonadal Symptoms in Men with Hypogonadism

J Clin Endocrinol Metab. 2024 Jan 18;109(2):569-580.

doi: 10.1210/clinem/dgad484


European Association of Urology: EUA

Guidelines

Sexual and Reproductive Health: 3. MALE HYPOGONADISM


American Urological Association: AUA

Erectile Dysfunction: AUA Guideline (2018)

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