ミノキシジル外用薬の基材|プロピレングリコールとブチレングリコール

しばしば、先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック)の違いについて質問されます。
主成分とその含有量に関しては、”同じ”です。
厚生労働省が”同じ”であることを確認し、承認に至るため、そこは間違いありません。しかし、添加剤(薬剤を形作るために必要)は各製薬メーカーによって異なる場合もあります。
添加剤すら”同じ”にし、製造する製薬メーカーも存在しますが、添加剤は異なることは少なくありません。
添加剤に関しては、薬剤の効果に影響を及ぼすことは、ほぼありません。
それでも、添加剤の違いが、薬剤のアレルギーなど、副作用の違いにつながることは否定できません。
それは、先発品だろうと後発品だろうと同様です。
初めて内服や外用する場合は、先発品であっても、使用されている添加剤でアレルギーなどを引き起こす可能性を考慮しないといけません。
外用薬(塗り薬)については、皮膚の弱い方などは、注意をする必要があります。
ここでは、ミノキシジルの先発品(リアップ)と後発品(ジェネリック)の添加剤(基材:プロピレングリコールとブチレングリコール)の説明をいたします。
プロピレングリコールとブチレングリコールの違い
プロピレングリコール(PG)とブチレングリコール(BG)は、どちらも保湿剤・溶剤として化粧品でよく使われますが、性質や使用感にいくつかの違いがあります。
| 項目 | プロピレングリコール(PG) | ブチレングリコール(BG) |
|---|---|---|
| 化学的分類 | ジオール(2価アルコール) | 同じくジオール |
| 炭素数 | 3 | 4 |
| 主な用途 | 保湿剤、溶剤、防腐補助 | 保湿剤、溶剤、防腐補助 |
| 保湿力 | 中等度 | やや高い(PGより優しい) |
| 刺激性 | 人によって刺激やアレルギーが出やすい(比較的高い) | PGより低刺激 |
| ベタつき | ややベタつく | PGより軽く、比較的さっぱり |
| 揮発性 | 低い | PGよりさらに低い(保持しやすい) |
| 防腐補助効果 | 高い | やや高い |
| 価格 | 安価 | やや高価 |
プロピレングリコールの刺激性について
接触性皮膚炎が疑われる患者(アレルギーのハイリスク集団)を対象に行われたパッチテストでは、プロピレングリコールのアレルギー感作率は0.85%、刺激性率0.35%と低率であるとの報告(#1)があります。
健常者を対象とした、纏まった規模の報告が無いため、明らかではありませんが、少なくとも、この研究報告よりも、低頻度になることが予想されます。
副作用は、体質の変化や、その時々の体調によって発症が修飾されることもあります。
プロピオングリコールのアレルゲン感作率は年々上昇している?
古い報告では、プロピオングリコールのアレルギーは稀とする報告(#2)がありましたが、プロピレングリコールに対するアレルゲン感作率は年々上昇しているとの報告(#3)もあります。
それに対して、プロピレングリコールはアレルゲンとして頻度は高くなく、感作率の変化はないとする報告(#4)もあります。
リアップ(1%)にはプロピレングリコール、リアップx5(5%)にはブチレングリコール
主成分であるミノキシジルは固体であるため、外用液を製造するには、それを溶かすための溶剤(基材)が必要です。
古くから使用されていたのがプロピレングリコールであり、健常者が使用する分には、なんら問題なく使用できるとされます。
実績や副作用報告も蓄積されています。
それに対して、比較的、新しい医薬品では、ブチレングリコールが基材として使用されつつあります。
理由は、プロピレングリコールの刺激性を嫌ってのことになります。
おそらくは、ブチレングリコールの方が、刺激性やアレルギー性が少ないであろうと考えられていますが、まだまだ、大規模な報告が無いため、断言することはできません。
しかし、医療現場や美容医薬品では、基材(添加剤)として、ブチレングリコールの使用が広がりつつあるのも事実です。
ちなみに、初めに市販された1%ミノキシジル製剤であるリアップは、基材(添加剤)として、プロピレングリコールが使用されています。
後に市販されたリアップx5などの5%ミノキシジル製剤(ジェネリックを除く)ではブチレングリコールが使用されています。
ちなみに、日本より先にアメリカでは5%ミノキシジル製剤であるロゲインが市販されていましたが、ロゲインの基材(添加剤)はプロピレングリコールです。後に、フォーム剤(泡製剤)が市販され、基材(添加剤)はブチレングリコールに変更されています。
基材(添加剤)の変更は、時代の流れとも言えます。
ミノキシジル外用薬(リアップのジェネリック)にはプロピレングリコール
リアップのジェネリックであるミノキシジル外用薬のほとんどは、基材(添加剤)として、プロピレングリコールが使用されています。
コスト抑制の意味合いが強いと思われます。
では、ジェネリック製剤を使用していて良いのでしょうか?
健常者であれば、問題なく使用可能であることは、過去のプロピレングリコールの使用実績から判断できます。
アメリカで市販された1%ロゲインの基材(添加剤)がプロピレングリコールであったことからも、副作用が出ないのであれば、効果に影響を及ぼすことも少ないと考えられ、一般の方の使用には、問題はないと思われます。
まず、繰り返し使用することで、刺激性が増加する可能性は否定できませんが、皮膚が弱いと思われる腕の内側などに試験的に塗布していただき、ご確認していただくのが良いと思われます。
皮膚が弱い方や過去に外用薬で副作用が出現した方は注意
しかし、皮膚が弱い方やアレルギー体質の方は、基材(添加剤)としてブチレングリコールが使用されている、先発品であるリアップを使用する方が無難であるかもしれません。
実際のところ、副作用が出現するのか否か、使用してみないと判断できませんが、過去に、外用薬によるアレルギーや皮膚障害の既往がある方は、注意が必要となります。
アルコールがダメな人は控えましょう
また、基材成分は、主にアルコール類になります。
そのため、アルコールで皮膚がかぶれやすい方は、先発品リアップと後発品(ジェネリック)ミノキシジル外用薬、ともに、使用は控えてきださい。
ミノキシジル1%製剤と5%製剤の濃度の差による刺激性も考慮
当然と言えば当然ですが、濃度が高いミノキシジル外用薬の方が、発毛・育毛効果が高いのですが、反面、刺激性が高まります。
「5%外用液でかゆみ・刺激が“2%液より多かった”」という報告(#5)もあります。
このため、皮膚の弱い方は、1%製剤から開始するのも良いと考えます。
ちなみに、未認可の10%以上の高濃度(12〜15%)も存在しますが、刺激・かゆみが増えるため、推奨されていません。
注:正式に認可されているミノキシジル外用薬の最高濃度は5%です。
選択の仕方|先発品リアップと後発品ミノキシジル外用薬
以上をまとめると、- アレルギーや、過去に外用薬で皮膚障害の経験がある方は、ブチルグリコールを基材としているリアップ
- >そして、濃度の低い1%製剤から開始するのが無難
となります。
特にアレルギーを有しておらず、今までも、外用薬で皮膚のトラブルを経験したことがない方は、プロピレングリコールを基材としている後発薬のミノキシジル外用薬でも、問題ないと考えられるかもしれません。
#1:Patch Testing to Propylene Glycol: The Mayo Clinic Experience
Dermatitis. 2018;29(3):140–145.
DOI: “10.1097/DER.0000000000000393
#2:Skin irritation caused by propylene glycols
Hautarzt. 1982 Jan;33(1):12-4.
#3:Patch Testing Results from the Massachusetts General Hospital Occupational and Contact Dermatitis Clinic, 2017–2022
Dermatitis. 2018 Jul/Aug;29(4):200-205.
doi: doi: 10.1089/derm.2023.0085.
#4:Prevalence of reactive allergens in contact patch testing studies using the Brazilian standard battery: a systematic review
An Bras Dermatol. 2025 Jul-Aug;100(4):501126.
doi: doi: 10.1016/j.abd.2025.501126.
#5:A randomized clinical trial of 5% topical minoxidil versus 2% topical minoxidil and placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men
J Am Acad Dermatol. 2002 Sep;47(3):377-85.





