早漏症のプリリジー無効例に対するユリーフの効果



プリリジー(ダポキセチン)が無効だった場合のユリーフ(シロドシン)による早漏症治療

早漏は、男性性機能障害の中で、最も頻度の高い疾患の一つであり、 その有病率は30%を超えるとする報告もございます。
その有病率の高さからも、我々のような男性性機能障害を専門に扱うクリニックは、責任を持って治療にあたり、最適な早漏症治療を提案する必要があります。
早漏症の治療報告が初めてされてから100年ほど経過するそうですが、未だに、全ての患者さんに満足が得られていないのが現状です。 早漏症の診断基準は、世界標準が定まっておらず、クラス分けもされておりません。
治療に関しても、世界で唯一、早漏症治療薬として認可されているプリリジー(ダポキセチン)がありますが、全ての国で認可されているわけではなく、 本邦でも、認可されていないため、使用できません。 どうしても、プリリジー(ダポキセチン)を使用したい場合は、個人輸入に頼るか、独自に輸入し処方を行うクリニックを探すしかありません。 しかし、輸入の場合は、偽造品が多く流通しており、安全性に問題がある事がほとんどです。 これは個人輸入に限ったことではありません。 悲しいですが、EDや早漏症治療など自由診療を行う医療機関の中には、かなり怪しい、危険な行為を行うところも存在します。
また、コストの問題もございます。 プリリジー30mg3,000円/錠が相場と言ったところですが、性行為1回につき、3,000円は、大きなコスト負担としてのしかかってきます。
また、プリリジー(ダポキセチン)で効果が得られなかった方、副作用によって服用ができない方も多数いらっしゃいます。

世界的には、様々な薬剤が早漏症治療薬として使用されております。
これらは、早漏症の適応こそございませんが、有効性が示されております。
”適応がない”というのは、製薬メーカーがコストをかけて、治験を行い、申請していないというだけであって、”効果がない”のとは異なります。
セロトニン再取り込み阻害剤SSRIや、レビトラなどのED治療薬などが代表です。

ここでは、プリリジー(ダポキセチン)で射精遅延効果が得られなかった患者を対象に、ユリーフ(シロドシン)の早漏症治療効果を検討した報告がございましたので、解説しながら、ご紹介いたします。
対象は、早漏症と自己申告し、プリリジー(ダポキセチン)30mgの治療でも、満足の得られなかった方、効果が不十分だった方となっております。 プリリジー(ダポキセチン)の不十分例が対象であり、有効例は除外されております。
143人のプリリジー(ダポキセチン)治療患者のうち、64例が不十分例に該当し、この64例を被験者とし、ランダムに、性行為3時間前にユリーフ(シロドシン)を服用する群(33例)と、プラセボを服用する群(31例)の2群に分けて研究報告されています。 被験者64人のうち24人は、プリリジー(ダポキセチン)が全く効果がなかったと訴えており、40例は、めまいや吐き気などの副作用のため、プリリジー(ダポキセチン)の継続が困難な例です。 両群とも、平均年齢は27歳、ユリーフ(シロドシン)群の27例は先天的、6例が後天的な早漏症と、プラセボ群の26例が先天的、5例が後天的な早漏症であり、両群間で統計学的な差はありません。 被験者は、どちらの群に割り当てられたかは伝えられていません。
女性膣にペニスを挿入してから射精に至るまでの時間(パートナーによりストップウォッチで計測)および調査票による満足度調査が行われています。

まず、射精遅延効果ですが、女性膣にペニスを挿入してからの射精までの所要時間ですが、0.5分程度であったものが、ユリーフ(シロドシン)群は4.5分以上、プラセボ群で2分程度に延長しています。 プラセボ群でも延長が認められるのは、早漏症が、心因的な要素が大きく関わっているからであります。 ユリーフ(シロドシン)群が、統計学的にも有効であることは明らかです。

問診による評価においても、性行為の満足度、射精のコントロール、射精に関する苦痛、射精に関する心因的な悪影響の4項目ともに改善を認めています。 これは、被験者本人と、そのパートナーともに、同様の評価となっております。 プラセボ群においても若干の改善が認められておりますが、やはり、明らかにユリーフ(シロドシン)群が優位なものです。

気になるのは、副作用、認容性です。
副作用は、この報告では、ごく軽度のものであったとされております。
その内訳は、33例中26例に精液量の減少を、4例に射精時の違和感を認めています。全ての被験者は、通常のオーガズムを得ており、治療継続は問題ないとし、認容性が高いものと判断できます。

現在、様々な薬剤が早漏症治療薬として使用されておりますが、全ての例で満足の得られる結果が得られているわけではなく、より良い治療法が望まれております。
早漏症治療薬として唯一認可されているプリリジー(ダポキセチン)は、セロトニン再取り込み阻害剤SSRIという本来であれば抗うつ薬に属する薬剤です。 プリリジー(ダポキセチン)が上市する以前から、このセロトニン再取り込み阻害剤SSRIは、早漏症治療薬として、しばしば用いられておりました。 パキシル(パロキセチン)が代表薬です。
その主な作用機序は、上位からの(脳中枢)、射精反射経路を抑制することにああります。
しかし、副作用を伴うことも多く、性欲減退など性機能に関する副作用もあります。 特に、常時服用した場合は顕著になることが多くなります。
他にも、めまいや吐き気を認めることがありますが、これらは、必要時頓服した場合にも、発現する可能性が高いとされます。
また、セロトニン再取り込み阻害剤SSRIによる躁転化(興奮)や自殺企図も重大な懸念事項であり、しばしば社会問題としても取り上げられております。
射精遅延効果が得られても、患者満足度が低く、治療継続率が悪いため、より有効で、認容性の高い治療が望まれております。

ユリーフ(シロドシン)は、α遮断薬(アルファブロッカー)と呼ばれる薬剤になりますが、 前立腺肥大症による排尿障害治療に長年臨床現場で使用されていおります。
副作用が少なく、認容性の高い薬剤です。

最近、このα遮断薬に、射精遅延効果があることが指摘されています。
常用薬としてこのα遮断薬を使用した場合、性機能に関する副作用(精液量の減少)が指摘されたのが発端です。
射精のきっかけとし、精嚢液の分泌が必要となるのですが、この分泌を抑制すると射精遅延効果が得られます。
精嚢にはα1受容体が存在するため、特にα1受容体選択性の高いアルファブロッカーであるユリーフ(シロドシン)は、射精遅延効果が顕著です。
この報告では、ユリーフ(シロドシン)の射精遅延効果が証明されてわけですが、これ以外にも、有効であったとする報告例がございます。
この報告の特徴は、プリリジー(ダポキセチン)無効例を対象とし、その効果が示された点にあります。
他の報告と比較すると、射精遅延効果に関しては概ね同程度ですが、副作用発現頻度に関しては、本報告は、やや低頻度な印象です。
副作用として、射精時違和感が80%に出現するとする報告もありますが、いずれも軽微なものであり、 治療の継続の障害になるほどではないという点では共通しています。

射精に関する副作用ですが、より高容量であったり、連続して服用するほど高率になる傾向があるため、容量を調整することで、軽減できる可能性があります。
治療に不慣れな、経験、知識共に乏しい医師によって、間違った治療が行われた場合、射精に関する副作用が全面に出て、満足が得られない可能性があります。
全身性の副作用に関しては、ほぼ問題になることはありません。
アルファブロッカーが臨床で使用できるようになって、現時点で30年以上になります。 前立腺肥大症は、基本的には、高齢男性が罹患する疾患ですので、安全性に懸念がある薬剤の使用は、困難です。 安全性は最重要項目ではあるのですが、問題ないとする30年以上の実績があります。
故に、他剤で副作用で早漏症治療を中断せざる負えなかった場合は、ユリーフ(シロドシン)は、一つの選択肢であると言えます。

本邦では、早漏症治療は、まだまだ普及していない医療分野です。 ですので、正しい医療知識を持ち合わせた医師も、少ないのが現状です。
各々の治療法には、必ず利益と不利益がございます。
当院では、患者様が得られる利益と、副作用などによる不利益を説明し、治療を進めます。
それを説明するのが医師の責任であり、実績と経験がなければ、行うことができません。
納得した上で、治療を行なって下さい。

インターネット上、様々な記載が見受けられますが、まず、治療実績の豊富な専門医に相談して下さい。
例えばですが、もともと眼科医だった医師に、性機能障害がわかるはずありません。


Effectiveness of ‘on demand’ silodosin in the treatment of premature ejaculation in patients dissatisfied with dapoxetine
: a randomized control study
Cent European J Urol. 2016; 69(3): 280–284.


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