脳小血管病に対するタダラフィルの治療効果について|池袋スカイクリニック

脳小血管病に対するタダラフィルの治療効果について

池袋スカイクリニック

脳小血管病に対するタダラフィルの治療効果について

2026年5月2日

Table of Contents

認知症の原因である脳小血管病の治療薬としてタダラフィル使用の試み

認知症は、アルツハイマー病のほか、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が、4大認知症として知られています。

血管性認知症は、アルツハイマー病についで頻度が高く、その予防や治療について、関心が注がれています。 血管性認知症は、名前の通り、脳血管の障害により発症します。何らかの原因による血流障害が本態です。 いかに脳血管を保護し、血流を維持するかが、重要です。

ED治療薬は、血管拡張薬であり、その血管拡張による血流改善作用は、脳血管含め全身に及びます。

ここでは、タダラフィルの血流改善作用が、脳小血管病に効果があるかを検討した研究報告をご紹介します。

以前、ご紹介したタダラフィルは認知機能を改善するとする研究報告とは、対象となる認知性が別のものです。アルツハイマー病と血管性認知症の違いを理解してください。

ここでご紹介するものは、血管性認知症に関するものになります。

注:以前、ご紹介した『認知障害におけるED薬タダラフィルの可能性』の研究報告とは、対象となる認知症が別のものです。アルツハイマー病と血管性認知症の違いを理解してください。

ここでご紹介するものは、血管性認知症に関するものになります。

脳小血管とは

脳小血管病cerebral small vessel diseaseの病 変部位は、読んで字のごとく、小さな血管になりますが、小血管の基準は、施設間で異なることも多く、明確には決まっていません。

一般の方は、目で見ることの出来ない、毛細血管よりやや大きい血管の障害とお考えください。

ポイントは、大血管と異なり小血管の病変はCTやMRI等を用いた血管撮影によって、可視化できないところです。脳小血管病は、症状も乏しく、検査などで発見しにくいため、いかに把握し、予防と治療に繋げるかが課題です。

加齢や高血圧や糖尿病などが危険因子とされています。

脳小血管病は神経線維の有る皮質下の障害

脳はざっくりと(本当にざっくりとですが)、皮質と皮質下に分類できます。

皮質(下記図の脳表面の灰色の層)とは、脳表面の脳神経細胞の層を指します。脳神経が傷害されれば、認知症や麻痺などが生じることは、容易に想像ができると思います。脳の中でも特に大切な部位であることから、大血管から豊富な血流が供給されています。

皮質下とは、神経細胞をつなぐ神経線維の層になります。ここが障害された場合、軽微であれば、自覚症状が出現しません。脳神経経路は、一つの神経線維が傷害されたとしても、迂回経路が有効であれば、神経伝達が維持されるためです。

隠れ脳梗塞

隠れ脳梗塞という言葉を聞いたことはないでしょうか?

症状が無く、脳ドックなどでMRIを行って初めて、指摘されるものです。隠れ脳梗塞は、脳皮質下の脳梗塞であったり虚血(血流低下)とされます。ただし、やはり数が増えてくると、脳の機能が低下し、認知症が発症します。多発性ラクナ梗塞やbinswanger病等がこれにあたります。

皮質下は、主に小血管によって血流が供給されています。

脳小血管病とは、この皮質下の障害を指しています。

タダラフィルが脳小血管の血流を改善すると仮定

脳小血管病のメカニズムの一つとして、血管内皮機能障害による血管反応性の低下が指摘されています。

ED同様、NOおよびcGMPの分子経路が重要であり、この障害により、脳血流が低下することが知られています。つまり、ED治療薬であるタダラフィルは、陰茎の血流だけでなく、脳血流を改善すると仮定しているわけです。

タダラフィルによって脳皮質下病変は縮小するのか?

71名の被験者を、タダラフィル20mg/日連日服用群とプラセボ群とに分け、3ヶ月後に評価を行っています。 MRIを行い、皮質下病変のサイズ、認知機能などの評価を行っています。

結論から申しますと、本研究では、タダラフィルによって、皮質下病変のサイズは、減少傾向であったものの、統計学的有意差は生じませんでした。

また、全般的な認知機能の評価とし、モントリオール認知評価が行われていますが、これも、有意差は認められておりません。

他にも、処理速度(SDMT)、注意・ワーキングメモリー(Digit Span)、実行機能(Trail Making Test A/B)、視覚・言語記憶(CANTAB)、反応時間などが評価されていますが、反応時間がタダラフィル群でわずかな遅延を認めていますが、ほとんどの認知領域で有意差は無く、臨床的な意味合いは少ないとされています。

脳皮質下病変の改善効果は無かったとされるが、、、

ご存知の方もいるかと思いますが、脳神経細胞などの高度に分化した細胞は、現在の医療では、再生させることが困難です。 再生医療の研究から、脳神経細胞の再生の可能性が見出されつつありますが、かつては、脳神経細胞は、再生できないとさえ、言われていました。

脳MRIにより皮質下病変が評価されていますが、脳MRIで検出された病変は、すでに、変性(質的に変化)してしまっている病変です。その変化は、すでに、不可逆性であった可能性があります。

タダラフィルによって、3ヶ月という観察期間で回復すると仮定するのは、やはり、難しかったと言えます。

より長期の観察機関であった場合は、どのような結果になったのでしょうか?進行抑制効果は有るのでしょうか?

さらに、質的に変化する前段階でタダラフィルを使用した場合は、予防効果はあるのでしょうか?

タダラフィルの血管拡張作用や血管内皮への作用から、もしかしたら、別の結果が得られるかもしれません。

本研究ではポジティブな結果は得られていませんが、だからといって無駄な研究ということではありません。 効果が得られなかったということが分かったことでも有益です。

このような地道な研究の積み重ねが、将来の研究に繋がります。

Tadalafil Treatment in Patients With Cerebral Small Vessel Disease: The ETLAS-2 Randomized Clinical Trial

Stroke. 2025 Jul 18;56(10):2846–2857.

doi: 10.1161/STROKEAHA.125.051602

【アンチエイジング】に関する最近の記事

ED治療薬は因果関係は不明であるものの、心血管イベントと死亡リスクを低下させる
ED治療薬は心臓病と死亡リスクを低下させる

ED治療薬が心臓病や死亡リスクを低下させるという研究報告があります。約125万人のデータを解析したメタ解析では、ED治療薬の使用群は、因果関係不明ながらも、重大な心血管イベントのリスクが22%、全死亡リスクが30%も減少することが示されています。ここでは、ED治療薬(PDE5阻害剤)が、心臓に負担をかける危険な薬剤などといった、風評被害とも言えるイメージを払拭する一助になると思い解説しています。ぜひ続きをご覧ください。

Read More »
肥満はEDの原因の一つであり、特に中等度以上のEDと関与している。BMIを確認しましょう。
肥満は中等度以上のEDと関与

肥満と勃起不全(ED)の関係についての研究は、多数報告されております。しかし、その多くが欧米人を対象としております。欧米人とアジア人では、肥満の程度と有病率が異なります。そのため、その結果を、アジア人に、そのまま当て嵌めてよいものか、疑問が生じます。ここでは、男性性機能外来を受診したアジア人(若年中国人)男性において、肥満とEDの関係を調査した研究報告をご紹介いたします。果たして、どのようなBMIが男性機能に影響を及ぼすのか?詳細をぜひご覧ください。

Read More »
タダラフィルは慢性炎症を改善し、アンチエイジング効果を発揮する可能性が有る
低用量タダラフィルは炎症マーカーを改善する

タダラフィルは、ED治療薬として知られるだけでなく、炎症マーカーを改善する可能性があることが注目されています。慢性炎症は老化を促進させる要因の一つであり、タダラフィルの服用がアンチエイジングに繋がるかもしれません。最近の研究では、タダラフィルが炎症マーカーを改善することが示され、シルデナフィルとの比較も行われました。この興味深い結果が、今後のアンチエイジング医療にどのような影響を与えるのか、ぜひご覧ください。

Read More »
シルデナフィルなどのED治療薬は大腸がん術後の死亡リスクと遠隔転移リスクを低下させる
大腸がん術後のED治療薬の使用は死亡と転移リスクを減少させる

大腸がん術後のED治療薬の使用が、死亡リスクや転移リスクを減少させる可能性があるという研究結果が報告されています。スウェーデンの全国データベースを基にした解析では、術後にED治療薬を使用した患者は、使用しなかった患者に比べて死亡リスクが18%低下し、転移リスクも15%減少したことが示されています。ED治療薬が術後の免疫力回復に寄与する可能性について言及されています。

Read More »
有酸素運動はEDを改善するため、習慣的に運動を行う必要がある
有酸素運動はEDを改善する

有酸素運動を行うことで男性の勃起機能を改善することが、多くの研究で示されています。運動習慣は、国際勃起機能スコア勃起機能ドメインを平均2.8ポイント改善します。特に重症例ほど効果が大きいとされ、その効果はED治療薬に匹敵します。運動によって、陰茎の血流が改善する、男性ホルモンであるテストステロンが増加する、様々なストレスを発散しうることが、主なメカニズムとされます。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ続きをご覧ください。

Read More »
抗精神病薬の副作用として体重増加がありますが、ガイドラインにてメトホルミンによる予防が推奨
抗精神病薬による体重増加予防にメトホルミン

現代人は、ストレスにさらされる中で、うつ病や双極性障害、不安障害などの精神疾患が増加しています。抗精神病薬による治療が進む一方で、体重増加や健康障害のリスクも高まっています。特に、オランザピンやクロザピンなどの高リスク薬では、体重増加が顕著です。そこで、メトホルミンが抗精神病薬誘発性体重増加の予防に有効であることが、最新のガイドラインで推奨されています。詳しい内容を知りたい方は、ぜひ続きをご覧ください。

Read More »