セマグルチド(リベルサスやオゼンピック)はダイエット用の使用が増加している

セマグルチドは、糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬に分類される薬剤です。糖尿病治療ではなく、非糖尿病の肥満患者に対する体重減少治療としても承認されています。現在セマグルチドとして、糖尿病治療薬として、リベルサス、オゼンピック、ダイエット目的にはウゴービが認可されていますが、商品名が異なるだけで、成分はセマグルチドで同様であり、実質的に同じ薬剤です。
本邦では、GLP-1ダイエットと称されることも多く、美容外科などでの適応を無視した処方により、マスメディアに取り上げらたこともあるため、ご存じの方もいるかと思います。世界的には、肥満治療のパラダイムシフトと表現されることもあり、使用範囲が拡大しています。
肥満患者の減量目的のセマグルチドの使用とEDとの関連の検討
セマグルチドは、肥満者の心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中のリスクを減らすことが臨床的に証明されている薬剤で、現代の糖尿病診療に無くてはならない薬剤の一つとも言えます。
比較的、新しいタイプの薬剤であるため、明らかになっていない副作用の存在など、注意しなければならないことがあることも事実です。
オゼンピックの副作用として EDが報告されています(オゼンピックのインタビューフォームで2,024例中2例)。しかし、因果関係すらはっきりしない頻度であり、無視できるものとも言えますが、EDなどの性欲減退を懸念する方もいます。
この報告では、ダイエット目的で使用されたセマグルチドによって、EDのリスク上昇があるか否かを検討したものです。
BMI>30の高度肥満例が対象にEDとテストステロン欠乏の新規発症を調査
TriNetX Research データベースを用いて、2021年6月1日以降にセマグルチド処方を受けた、非糖尿病であり、BMI>30の18~50歳の肥満男性を対象としています。
既往歴にEDの診断、バイアグラなどのPDE‑5阻害薬の処方、ICI療法(陰茎への注射)、ペニスプロステーシス挿入、テストステロン欠乏症またはその治療歴、骨盤放射線療法、根治的前立腺全摘、肺高血圧症、または死亡した場合などは除外、さらに、糖尿病を前歴に持つ者、ヘモグロビンA1c>6.5%、インスリンまたはメトホルミン治療歴のある者も除外しており、非糖尿病かつ肥満の対象に限定されています。
対象者は3,094名で、セマグルチド処方群と未処方群にグループ分けされています。処方時の平均年齢は37.8±7.8歳、BMIは38.6±5.6でした。かなりの肥満例になります。
一次エンドポイント:セマグルチド処方から少なくとも1ヶ月経過後の新たなEDの診断あるいは、バイアグラなどのPDE-5阻害薬の新規処方のリスク、二次エンドポイント:テストステロン欠乏症の診断リスクとしています。
セマグルチドはEDのリスクを4.5倍増加させる
セマグルチドを処方された肥満男性は、セマグルチドを処方されていない肥満男性と比較して、EDの新規発症、または、バイアグラなどのホスホジエステラーゼ5型阻害剤の処方が多く(1.47%対0.32%)、また、テストステロン欠乏症(1.53%対0.80%)の発症割合も多かったとしています。
このことから、セマグルチドは、EDのリスクを4.5倍、テストステロン欠乏症のリスクを1.9倍高めると算出しています。
メカニズムについては不明
このメカニズムについては、はっきりとわかっていません。本報告では、セマグルチドがEDやテストステロン欠乏症のリスクであるとされていますが、他の報告では、EDを改善するとする報告も多数あります。どちらかというと、GLP-1ダイエットによる体重コントロールはEDを改善するとする報告の方が多い印象があります。
セマグルチドに限ったことではありませんが、過度のダイエットが、EDやテストステロン欠乏症のリスクを高めるともされいます。つまり、リベルサスやオゼンピックが原因ではなく、急激なダイエットが原因だった可能性も否定できないかもしれません。
ちなみにですが、急激なダイエットは、AGAのリスクも高めます。タンパク質の喪失が原因の一つと考えられています。
Prescribing semaglutide for weight loss in non-diabetic, obese patients is associated with an increased risk of erectile dysfunction: a TriNetX database study
Int J Impot Res. 2025 Apr;37(4):315-319.