前立腺肥大症患者においてタダラフィルはαブロッカーと比較し糖尿病発症を抑制する

現在、中心的に使用されているED治療薬は、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルの3剤になりますが、いずれもPDE5阻害薬に属する薬剤です。そのユニークな作用から、ED以外の他の疾患に対しても効果が有る可能性が研究されてきました。
ここでは、前立腺肥大症例において、α遮断薬とタダラフィルを比較した場合、糖尿病の発症率に差が生じるか否かを検討した研究報告をご紹介します。日本発の研究報告です。
一般的に、年齢とともに血糖値は上昇する傾向にあります。血糖上昇を抑制できるとするのであれば、それは、アンチエイジング作用とも言えます。
前立腺肥大症には、主にα遮断薬が日常診療で使用
前立腺肥大症の排尿障害に対して、古くから、α遮断薬、具体的には、シロドシン(ユリーフ)、タムスロシン(ハルナール)、ナフトピジル(フリバス)が、使用されていました(アルファ遮断薬3剤の使い分けもありますが、ここでは割愛します)。
α受容体を遮断することにより尿道を広げ、排尿をスムーズにします。
α遮断薬は、血管を広げる作用も有るので、タイプによっては、降圧薬として使用される薬剤もあります。 高血圧のみに適応があるドキサゾシン(カルデナリン)やブナゾシン(デタントール)、高血圧と前立腺肥大症に伴う排尿障害に適応の有るウラピジル(エブランチル)、テラゾシン(バソメット)などがあります。
上記の3剤は、降圧作用は乏しいため、降圧薬として使用されることはございません。
タダラフィルと前立腺肥大症の適応
タダラフィル、ED治療薬で言うところのシアリスですが、様々な作用が知られています。
シルデナフィルおよびバルデナフィルも、PDE5阻害剤に分類され、様々な作用が指摘されていますが、タダラフィルの効果が長時間持続する薬剤プロフィールから、他疾患への転用が行われています。
その一つが、前立腺肥大症における排尿障害です。 最近では、下部尿路症状(LUTS)と主に呼ばれていますが、病態としては、前立腺肥大による尿道の圧迫、それによる排尿障害が適応となります。
ED治療薬としてタダラフィルを考えた場合、その作用は、主に血管拡張作用になります。
血管拡張作用同様、尿道拡張作用も有しているため、前立腺肥大症による尿道圧迫を緩和し、排尿障害を改善します。
JMDC保険請求データーベースを対象に解析
JMDC社の保険請求データベースを利用。
このデータベースには、日本における、比較的大規模な企業で働く約1600万人の従業員およびその家族が含まれ、2023年1月時点での日本人人口の約13%をカバーしているとのことです。前立腺肥大症の診断があり、その治療目的のために、新たにタダラフィル5mg(5,180人)あるいはα遮断薬(20,049人)が処方された例を対象とし、新規の2型糖尿病の発症を比較検証しています。
フォローアップ期間は、5年間となっています。
注:除外項目は、ここでは省略いたします。
タダラフィルはαブロッカーに比較し有意に糖尿病の新規発症を抑制
解析では、2型糖尿病の新規発症率は、タダラフィル5mg群では1000人あたり5.4人/年、α遮断薬群では1000人あたり8.8人/年と、有意にタダラフィル群が低率であることが明らかになっています。(RR、0.47;95%CI、0.39~0.62;HRは0.42;95%CIは0.25~0.71;5年CIDは−0.031;95%CI、−0.040~−0.019)
簡単には、タダラフィル5mgの使用は、α遮断薬に比較し、新規2型糖尿病の発症を、およそ53%減少させています。
サブ解析では、対象が、前糖尿病であろうと、正常血糖であろうと、同様に、タダラフィル群において、新規2型糖尿病発症率は低率であったこともわかっています。さらに、非肥満例あるいは肥満例であっても、やはり、タダラフィル群の方が有意に低率であったとしています。
前糖尿病サブグループ(RR 0.49; 95%CI 0.40~0.69)
非前糖尿病サブグループ(RR 0.34; 95%CI 0.20~0.63)
肥満サブグループ(RR 0.61; 95%CI 0.43~0.80)
非肥満サブグループ(RR 0.38; 95%CI 0.24~0.62)
アルファ遮断薬が2型糖尿病を誘発しているわけではない
誤解しないでほしいのは、α遮断薬は悪者ではないということです。
ほとんどの場合、α遮断薬によって、糖尿病発症が増加することはありません。耐糖能には影響を及ぼさない、あるいは、好影響を与える可能性が有る薬剤とされています。
第一選択薬ではありませんが、糖尿病を合併した高血圧症に対して、処方される薬剤でもあります。
糖尿病や脂質異常症などの代謝性疾患に対して悪影響を及ぼさないとされています。
メカニズムは不明|血管内皮機能の改善による?
本研究は、データーベースから抽出された、タダラフィル5mgあるいはα遮断薬と前立腺肥大症との関連を調査したものであり、直接的な、因果関係の特定には至っていません。
メカニズムについては、不明です。
いくつかの研究では、血管内皮障害は、糖尿病の独立した危険因子であると報告されています。
それに対し、タダラフィルは、血管内皮障害を改善する可能性が指摘されています。しばしば指摘されるタダラフィルのアンチエイジング作用ですが、血管内皮障害を改善が、その作用の一部であるとされます。
タダラフィルの血管内皮性が改善作用が新規2型糖尿病の発症を抑制しうるのではないか?とする考察が記載されていましたが、現時点では、はっきりしないとも記載されています。
直接的な影響なのか間接的な影響なのか判断が付きません。
これをもって、2型糖尿病発症予防のために、タダラフィルを服用を推奨するわけではありません。
Tadalafil use is associated with a lower incidence of Type 2 diabetes in men with benign prostatic hyperplasia: A population-based cohort study
J Intern Med. 2024 Nov;296(5):422-434.
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