YouTube動画にあるリベルサスやオゼンピックの情報は信頼に値するのか?

最近の傾向として、情報を得るために、YouTubeやSNSで検索するケースが増えてきています。一般的な検索の方が、廃れてきているとさえ感じます。医療情報も同様です。
YouTubeは、動画投稿サイトとして最大なものになりますが、商業的な動画も多く、商品の紹介などは、その購入に誘導するために、メーカーから依頼(もしくは、動画制作者がメーカーに提案)されて作成されたものも多数あります。いわゆる企業案件というものです。そのため、メーカーに有利な動画となるため、正確な情報が得られなくなっているケースが増えています。
池袋スカイクリニックでも、何度か、著名YouTuberによる動画作成提案(1件あたり〇〇〇万円)をいただいたこともありました。つまり、費用を払うことで宣伝(広告)動画を作成するというものです。
YouTube動画でリベルサスやオゼンピックの内容を検証した論文
ここでご紹介するのは、個人的な意見ではなく、医学論文として掲載されたものです。
セマグルチド、オゼンピック、ウゴービ、リベルサスの各キーワードをYouTubeで検索し、制限時間のない動画(フル動画)30本とショート動画(≤1分)30本を抽出。重複除き、96本のフル動画と93本のショート動画を分析しています。
分析法は、カスタムチェックリスト、グローバル品質スコア(GQS)、および
Modified DISCERNの3つのツールによって評価し、字幕や音声の内容について、字幕や音声の内容について、可読性と感情分析も実施されています。
フルレングス動画(時間制限なしのフル動画)とショート動画(≤ 1分)の違い
視聴回数に有意差は無いものの、コメント数は、フル動画の平均669件に対し、ショート動画は約200件と、フル動画が圧倒的に多く、やり取りの深さが示唆されています。
GQS(グローバル品質スコア)は、フル動画の方が質が高く(2.6ポイントvs1.1ポイント)、Modified DISCERNによる信頼性の評価でもフル動画が優れていたとしています(2.3ポイントvs1.1ポイント)。
カスタムチェックリスト(リベルサスとオゼンピック特有の安全性・副作用に関する12項目)では、フル動画は平均2.9項目を言及しているのに対し、ショート動画は0.7項目で、情報量に大きな差があったとしています。
字幕の可読性は両者に大差はなく、表現のトーンは、どちらも中立的なトーンでしたが、フル動画にはポジティブやネガティブも一定数含まれていた点が特徴でとしています。
「YouTube認証済み健康系チャンネル」と「その他チャンネル」の比較
視聴回数・コメント数は、健康系チャンネルの方が視聴回数も多い傾向にありますが、統計的には有意差ありません。
字幕の可読性は、医療専門チャンネルの方が可読性スコアがやや低め、より専門的で少し複雑な表現だった可能性があったとしています 。
GQSとModified DISCERNの評価は、明らかに、認証済みチャンネルの方が高評価です(GQS:3.3vs2.4、m‑DISCERN:3.1vs2.1)。
カスタムチェックリストは、統計的には有意ではありませんでした
傾向
フル動画は、視聴者への教育的価値や信頼性において、ショート動画より優れていることが明らかです。内容が包括的で、視聴後の理解が深まる可能性があります。
YouTube認証済みの医療系チャンネルであれば、質の高い情報が期待でき、医療的背景や安全面にも配慮されている傾向があります。
ショート動画は、要点を素早く訴える入り口としては有効ですが、安全性や副作用などの重要な情報は省略されがちで、軽く内容に触れるだけでは不十分なケースが多いです。
日本ではリベルサスとオゼンピックはダイエット目的での広告がほとんど
日本と海外のYouTubeに投稿されている内容の差も考慮しないといけません。
海外では、糖尿病治療薬としてのリベルサスであり、オゼンピックの情報も多くあるのに対し、本邦では、ダイエット目的の内容であることがほとんどです。また、いわゆるYouYuberのGLP-1ダイエットの体験を報告する動画だったり、著名YouTuberとのコラボ動画も多く存在します。
このような場合、視聴回数を稼ぎ、利益を得るために誇張した内容である場合も多く、注意が必要です。
先にも述べましたが、当院にも数度、著名YouTuberからの営業がありました。広告目的での動画投稿も非常に多く注意が必要です。
Online Information About Side Effects and Safety Concerns of Semaglutide: Mixed Methods Study of YouTube Videos
JMIR Infodemiology. 2025 Apr 8;5:e59767.
doi: 10.2196/59767