糖尿病患者におけるEDの罹病率は非常に高く、また、ヘモグロビンA1c(HbA1c)やグリコアルブミンが高値の方が、
その程度が重症と判定されます。
糖尿病の治療を受けていただき、血糖値が改善、指標が改善すると、EDも改善する傾向にあります。
糖尿病を患っていらっしゃる方は、ED治療のためにも、糖尿病の治療を続けてください。
血糖コントロールが不良でも、これらのED薬は服用可能ですが、EDの原因治療(血糖コントロール)も合わせて行いましょう。
糖尿病に狭心症を合併、ニトログリセリン系薬剤を使用している等、
例外がなければ、糖尿病患者さまでも、バイアグラ錠、レビトラ錠、
シアリス錠は服用可能です。
併用薬剤の確認を要す場合がございますので、ご来院に際し、お薬手帳など、現在内服されているお薬が分かるようにしてください。
ここでは、EDに関係のある糖尿病の検査指標について解説しております。
過去1〜2か月の血糖値の状態が判る糖尿病の血液検査です。
高血糖が続いた場合、高値になります。
血糖値は、食事の前後や、朝夕など、一日の中でも変動があります。食事をとれば、血糖値が上がるのは当然です。
その場で測定した血糖値が正常な場合でも、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が高値な場合、血糖の平均値は”高め”と言うことになります。
”1~2か月の血糖の平均”を見る検査のため、直近の血糖コントロール指標ではありません。
妊娠中など直近のコントロール状況を把握したい場合などは、グリコアルブミンや1,5AG(アンヒドログルシトール)を用います。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、赤血球のタンパクであるヘモグロビン(Hb)にグルコースが結合した、糖化ヘモグロビンの一つです。
成人のヘモグロビンの90%程度は、ヘモグロビンAで占められており、これに糖が結合したものをA1と呼びます。
β鎖N末端のバリンに糖が結合したものです。
イオン交換カラムを使用した高速液体クロマトグラフィーによって、さらに、A1a、A1b、A1cに分画されます。
このうちの最大分画がA1cであり、血糖コントロールの指標として、臨床応用されています。
ちなみにですが、糖化していないものをA0と言います。
糖化しているA1は、糖の陰性荷電のため、電気泳動上、荷電のないA0と区別されます。
ヘモグロビンA1cは、ブドウ糖と結合した初期は、ブドウ糖と可逆的なシッフ塩基結合で結合されており(アルジミン)、 不安定型と呼ばれます。 次第に、アマドリ転位反応により、安定したケトアミンに変化します。 これを安定型と呼びます。 不安定型は、A1cの10〜20%を示します。 不安定(不可逆)なため、血糖変化に応じて速やかに糖化が解除されるため早期のコントロールに、 安定型は、赤血球寿命(およそ120日)を反映し、長期の血糖コントロールを表します。
本邦で測定されているヘモグロビンA1c(JDS値)は、日本糖尿病学会(JDS)が中心になって標準化されたものでしたが、 世界的に普及した測定法との差があったため、2012年4月に、国際標準値NGSPに移行されております。 今までのJDS値と比較し、このNGSP値は、0.4%程度高く測定されます。 この変化は糖尿病の増悪を意味しているのではなく、標準値自体が、上方にスライドしたとお考えください。 具体的には、JDS値が5.8%を上限としていましたが、NGSP値は6.2%が上限となっています。
測定法は、高速液体クロマトグラフィー法で測定されることが多く、免疫法も広く行われております。 その他にも、陰性に荷電しているという性質を利用した電気泳動法や等電点電気泳動法、 ボロン酸がヘモグロビンA1cのケトアミン構造物と特異的に結合することを利用したアフィニティーカラム法などが有ります。 通常血液検査を行う場合は、1時間程度必要とされていましたが、外来でのより迅速に結果を得たいという要求(POC:point of care)に伴い、 迅速測定も普及しつつあります。
測定された値が、基準値より高値である場合、糖尿病の可能性がございます。
特にHbA1c(国際標準化NGSP)≧6.5%で糖尿病の可能性が高いと考えられます。
因みにですが、2013年熊本で行われた糖尿病学会では、HbA1cを7%以下を目標にしようと提案されております。
"1~2か月の血糖コントロール指標”とされますが、これは、赤血球の半寿命が2カ月に由来しています。
そのため、赤血球寿命が変化するような疾患が併存すると、値に変化が生じます。
さらに、その他の血糖値以外にも影響を受ける為、判断には若干の注意事項がございます。
具体的には、偽性高値を示す病態は、
などが挙げられます。
腎不全患者では、血中尿素窒素BUNが50mg/ml程度から、偽性高値を考慮いたします。
腎不全患者では、尿素から生じるシアン酸によりヘモグロビンがカルバミル化され、
高速液体クロマトグラフィー上、ヘモグロビンA1cと同部位に検出されるため、誤って、判断される可能性がございます。
ビタミンCやアスピリン、アルコールから生じたアセトアルデヒドがヘモグロビンと結合する事から、同様に誤認される可能性があります。
ヘモグロビン異常症では、偽性高値、偽性低値ともにします事が有ります。
特に、ヘモグロビンFは、成人においては無視できるものでありますが、血液疾患等でも増加する事も有り、
注意を要します。
偽性低値を示す病態は、
などが挙げられます。
このような病態の場合は、グリコアルブミンを血糖コントロールの指標にする事が良いとされます。
血糖コントロール指標は、上述のヘモグロビンA1cが中心ですが、その他にも、指標がございます。
臨床的に、血糖値とヘモグロビンA1cに乖離が疑われた場合や、より直近のコントロール状況が知りたい場合に、測定されます。
その代表が、グリコアルブミンです。
グリコアルブミンは、妊娠中の厳格な血糖コントロールを要す場合や、
ヘモグロビンA1cが正確な値を示さない肝硬変例における測定が推奨されています。
血清タンパク質は、やはり、ブドウ糖により糖化するとされています。
糖化されたタンパク質は、結合側鎖がフルクトースの構造をとるため、フルクトサミンと呼ばれます。
グリコアルブミンは、フルクトサミンの主要構成物質です。
グリコアルブミンは、蛋白質の一つであるアルブミンにあるリジンε-アミノ基にグルコースが結合したものです。
グリコアルブミンの半減期は約17日とされており、2~4週間程度の血糖コントロール指標とされています。
おおよそですが、
ヘモグロビンA1c=グリコアルブミン÷3
という式が成り立つとされています。
よって、この式に極端に当てはまらない状況では、ヘモグロビンA1cに反映されない急激な血糖変化が生じたり、
上記に示したような正確な値を示さない病態があると考えます。
グリコアルブミンもまた、病態によっては影響を受ける場合がございますので、判断には若干の注意が必要です。
偽性高値を示す例は、
などです。 この理由は、血糖値に対する相対的なアルブミン(蛋白質)の低下や、蛋白質の代謝の低下が、挙げられます。 偽性低値を示す例は、
が挙げられます。 これは、蛋白質の代謝が亢進していることによるとされています。
グリコアルブミンは、2段階カラム法や酵素法によって測定されます。 2段階カラム法は、1段目でイオン交換カラムを用いてアルブミンを分離し、 2段目のホウ酸アフィニティーカラムで、グリコアルブミンを分離いたします。 酵素法は、試薬の開発により、血清から直接グリコアルブミンを測定することが可能です。 特異的なプロテアーゼを用いてグリコアルブミンを分解し、糖化リジンをケトアミンオキシダーゼを用い定量いたします。
1,5AGは、分子構造がグルコース(ブドウ糖)に酷似したポリオールと呼ばれる物質で、
腎尿細管から再吸収されます。
1,5AGの腎尿細管からの再吸収は、尿糖と競合いたします。
具体的には、尿糖が増加すると、再吸収が阻害され、尿中への排泄量が増加し、
血中1,5AGが低下致します。
他の指標が高血糖を反映しているのに対し、1,5AGは、このように尿糖量に相関いたします。
最近では、より質の良い血糖コントロールを目指そうとされております。
ヘモグロビンA1cでは捉える事の出来ない食後高血糖による尿糖増加、
血糖コントロールの動揺を1,5AGは捉えることが出来ます。
例えばですが、ヘモグロビンA1cが6.5%であった場合、一見、コントロールが良好に思えます。
この時、もし1,5AGが低下を示していた場合は、間欠的な血糖上昇が存在することを示し、
さらには、平均値であるヘモグロビンA1cが良好である場合、低血糖の存在も示唆されます。
直近の血糖コントロールを鋭敏に反映にするとされており、特に、軽症例における食後高血糖の評価に優れるとされております。
1,5AGも、病態によっては影響を受けます。
その機序から、腎機能障害時は、異常低値を示すとされています。
その他、妊娠時や高カロリー輸液時、アカルボース(グルコバイ®など)服用時にも異常低値になるとされます。
尚、アカルボースと同効薬剤であるボグリボース(ベイスン®など)やミグリトール(セイブル®)は、1,5AGに影響を及ぼさないとされます。
written by 勃起不全は池袋スカイクリニック