第20回日本性機能学会東部総会での報告です。
東京歯科大学市川総合病院泌尿器科、丸茂健先生等の報告です。
多少の解説を加えながらご紹介いたします。
本邦ではクリニック、病院を受診することを躊躇し、インターネットを利用して勃起障害(ED)治療薬を購入されている人が多数存在します。
しかし、インターネット通販で購入されたED治療薬の中には偽造薬が多く存在している事が知られてます。
しばしば、新聞などで取り上げられているので、御存じのかたもいらっしゃると思います。
偽ED治療薬は、当然ながら安全性と効果について検証がされておらず、その使用による健康被害も懸念されおり、
この度、ファイザー、バイエル薬品、日本イーライリリー、日本新薬(正規のED治療薬製薬会社と市販会社)の協力をもとに、
国内に流通している偽ED治療薬の現状を把握し、最終的には、皆様の健康被害を防止することができないだろうか、という報告です。
日本とタイの調査会社に依頼し、インターネット通販を利用して購入した、バイアグラ、レビトラ、シアリスの各サンプルを入手し調査されています。
日本においては2008年12月から2009年4月の間に、ED治療薬3剤についてそれぞれ20サンプル、
タイにおいては2008年8月から2008年12月の間に3剤についてそれぞれ20サンプルを入手する事を試み、
最終的には184サンプルを入手、解析ています。
真偽性の評価は各ED治療薬を開発したファイザー、バイエル薬品、日本イーライリリーによって行われました。
日本における偽造薬の割合は43.6%、真正品が56.4%、タイでは偽造薬が67.8%、真正品が32.2%と、
タイにおける偽造薬の割合が高率で合った。
バイアグラの偽造薬は全てのサンプルがクエン酸シルデナフイルを含有していたが、100mg錠においては、
有効成分であるシルデナフィルが約150%含まれるものから、約60%しか含まないものまで様々であった。
レビトラの偽造薬では有効成分バルデナフィルを全く含まないものから、クエン酸シルデナフイルまたはタダラフイルを含有するものに分類された。
シアリスの偽造薬では、36サンプルのうち11サンプルを、さらに成分分析を行ったところ、タダラフィルを全く含まないもの、
タダラフイルとクエン酸シルデナフイル、またはタダラフイルとクエン酸シルデナフイル類似物質を含むもの、
クエン酸シルデナフィルとエフェドリンを含有するものが存在したそうです。
偽ED治療薬は、衛生面での管理が十分な、清潔な環境で製造されていないのはもちろん、安全性についての確認試験も行われていません。
服用者は偽造薬の有効成分量を把握できず、また、有効成分多量摂取による毒性の危険と不十分な量での効果不足も予想されます。
また、ED治療と関係のない成分も多数含有されている事が報告されています。例えば、先に記載したエフェドリンです。
エフェドリンによる血圧上昇、不整脈などの危険性が生じます。
海外の事例では、シンガポールの事件が、私たち業界では有名です。
偽シアリスを服用した患者で、ED治療とは全く関係のない、低血糖性昏睡の発生が報告されました。
確認患者数40人、うち4人死亡(そのうち2人がシアリスの偽造品を服用)しています。
特に、シアリスの偽造薬(実際には存在しない50mg錠)の場合、偽シアリス1錠中に、なぜか糖尿病治療薬グリベンクラミドを43mgが含有。
そのため、低血糖を発現したことが原因でした。
(グリベンクラミドの承認されている一日最高服用量は10mgであり、こんな高用量を服用すれば、当然、健康被害は生じますし、死にもいたる危険な量です。)
日本では、健康被害が表面化しません。その理由として、ED治療というプライバシーに関わる問題では、被害者が訴えを起こしにくい事情があります。
この報告では、インターネットによる個人輸入サイトから、多数の偽造ED治療薬が国内に流入しており、 また、個々に輸入した医薬品が安全であるか判断できず、健康被害が生じる可能性が高いことから、私たち医療従事者は、 偽造薬剤の危険性を患者様に説明し、健康を守ることが必要であると結論しています。
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