ボトックス注射によるED治療について|池袋スカイクリニック

ボトックス注射によるED治療について

池袋スカイクリニック

ボトックス注射によるED治療について

2026年8月15日

Table of Contents

ボトックス注射を陰茎海綿体に行う新たなEDの治療法

ED治療は、シルデナフィルなどのPDE5阻害剤の出現により、治療法が一変しています。画期的な治療薬であり、その高い有効性と安全性から、多くの患者様に恩恵をもたらしました。バイアグラの市販が1999年ですので、四半世紀以上前のことになります。 以後、様々な治療法や薬剤が検討されてきましたが、PDE5阻害剤を超える有効な治療法は見いだせていません。 シルデナフィルなどのPDE5阻害剤は、非常に有効な治療薬ですが、全てのEDで悩む患者様に有効な訳ではありません。PDE5阻害剤の無効例に対し、いかに治療の奏効率を上昇させるかが課題となっています。その治療法の一つとして、EDに対するボトックス注射が取り上げられることがございます。患者様から度々ご質問を受けることもあり、ここでは、ED治療分野におけるボトックス注射の臨床研究データとED治療ガイドラインにおける取り扱いについて、取り上げたいと思います。


注意:執筆時点(2026.8現在)で、十分な科学的根拠(エビデンス)があるわけではないため、推奨しているわけではありません。ご注意下さい。

ボツリヌストキシンAとは

ボツリヌストキシンA(いわゆるボトックス)は、ボツリヌス菌が産生するタンパク質を有効成分とした医薬品です。 神経から筋肉へ収縮の指令を伝える「アセチルコリン」という物質の放出を一時的に抑え、注射した部位の筋肉の働きを弱める作用があります。

一般医療では、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢・下肢の痙縮、斜視、痙攣性発声障害、過活動膀胱など、筋肉や神経の過剰な働きによって生じる病気の治療などに使用されています。また、発汗を促す神経にも作用するため、わきなどの多汗症治療にも用いられます。

美容医療では、眉間・目尻・額などの表情じわを目立ちにくくする目的のほか、エラの張り、あごの梅干しじわなどの改善に使用されています。

ED治療分野におけるボツリヌストキシン注射

ED(勃起不全)に対して、ボツリヌストキシンA〔いわゆるボトックス〕を陰茎海綿体へ注射する治療が研究されています。 ただし、現時点では一般的な標準治療ではなく、主に既存治療が効きにくい
『難治性EDを対象とした実験的な治療』
です。つまり、一般的に行われている治療法ではございません。

研究報告も小規模なものがほとんどであり、臨床において実践するには、効果も安全性も担保されていません。

作用メカニズム

ボツリヌストキシンAは、交感神経からのノルアドレナリン放出を抑え、陰茎海綿体平滑筋の収縮を弱める可能性があります。
その結果、

  • 海綿体平滑筋が弛緩しやすくなる
  • 陰茎への血液流入が増える
  • シルデナフィルなどのPDE5阻害薬などへの反応が改善する

と考えられています。 簡単には、陰茎ペニスの血流が増加する、それに伴い勃起力が改善すると、お考え下さい。 ただし、性欲を高めたり、自動的に勃起を起こしたりする薬ではありません。また、組織を再生する治療でもありません。

ボトックス注射療法の科学的根拠エビデンス

2025年に、2件のランダム化比較試験(合計246人が対象)と4件の後ろ向き研究(延べ309人が対象。患者重複があるため、実患者数は309人より少ない可能性あり)を検討した、レビューが報告されています。 その結果では、ボツリヌストキシンA 100単位群はプラセボ群と比較して、12週後のSHIMスコア(IIEF-5スコアとほぼ同様とお考えいただいて差し支えありません)が平均4.35点高くなりました。世界的な基準はありませんが、SHIMスコアが4〜5点程度改善した場合、「臨床的に意味のある改善の可能性が高い」と判断されることが多いため、ボツリヌストキシン注射のED改善効果は、その境界くらいにあるとも考えられます。(ちなみに、シルデナフィルなどのPDE5阻害剤は、IIEF-EFスコア(IIEF-5スコアと異なるため、厳密な比較はできませんが)で5〜8点程度の改善させます)また、研究によっては、被験者の40%以上に臨床的に意味のある改善を示したとする報告もございます。

ヨーロッパ泌尿器科学会のED治療ガイドラインで参照されている臨床試験では、PDE5阻害薬無効例70人に対しボツリヌストキシンA100単位を1回注射することで、6週間後のSHIMスコアを凡そ5点改善を認めています。別の176人の試験では、最大40%が満足できる性行為を再開という結果が得られています。

ただし、これらの報告は、医学的な研究としては小規模であり、科学的根拠(エビデンス)を得るに十分な規模ではありません。一般の方からすると数百人規模のデータは大きなデータと考えるかもしれませんが、可能であれば数万人規模のデータ、最低でも数千人規模のデータは最低でも欲しいところです。

副作用と長期的な安全性

これまでの小規模研究では、おもに次の事象が報告されています。

  • 注射部位の陰茎痛:0.8~5.6%
  • 持続勃起・陰茎強直症:まれ
  • 皮下出血や腫れなど、海綿体注射に伴う問題

以上はあくまで短期的な副作用であって、長期的な副作用に関しては不明です。研究段階の治療法であり、未だ、長期的な安全性は明らかになっておりません。

安全性を担保するには、より大規模で、長期的な研究が必要です。

ED治療ガイドラインにおけるボトックス注射の位置づけ

EDに対する陰茎海綿体内ボツリヌストキシンA注射は、現時点では研究的治療です。国内外のED治療ガイドラインおいて、標準治療として推奨されている治療法ではありません。

当記事執筆時点では、唯一、欧州泌尿器科学会が2026年に改定した最新のED治療ガイドラインにおいて、ボトックス注射の記載があります。そこでは、
『現時点では臨床使用を推奨できない』
『有効性と安全性を確認するため、より大規模な試験が必要である』
と明記されています。

その他の学会のED治療ガイドラインは、最近の改定が無いこともあって、ボトックス注射に関する記載は、ございません。

あくまで研究的なED治療

EDに対するボトックス注射は、実際に研究されていますが、標準治療ではありません。日本でもEDに適応はなく、「ボトックス注射」として安易に受ける治療ではありません。

一般的には、まずは、シルデナフィルなどのPDE5阻害剤(いわゆるED治療薬)が、治療法として第一選択になります。仮に、それで勃起改善効果が得られなかった場合でも、用量・服用方法の最適化と確認を行う必要がございます。

ED治療薬で効果が得られなかった場合は、第二選択として、海綿体注射、陰圧式勃起補助具、必要に応じて陰茎プロステーシスなど、確立した治療を検討するのが基本となります。

ED治療としてボトックス注射を受けるのであれば、、、

日本国内でも、ボトックス注射をED治療に導入している医療機関もあるようですが、現時点では、研究段階の治療になります。
『研究に寄与したい』
『医学の発展に貢献したい』
等の志があるのであれば、施術を受けても良いかもしれませんが、一般の患者様に推奨できる段階にある治療法ではありません。

当院においても、現時点では、取り扱ってはおりません。 あくまで、現状をお伝えするために執筆しております。

参照


The effectiveness and safety of intracavernosal botulinum toxin injections in the management of erectile dysfunction: a systematic review and meta-analysis of clinical studies

Sex Med. 2025 May 6;13(2):qfaf034.

DOI: 10.1093/sexmed/qfaf034


European Association of Urology(EAU)

Sexual and Reproductive Health

5. MANAGEMENT OF ERECTILE DYSFUNCTION


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