大腸憩室を有する方はEDの有病率が高い?
台湾の国民健康保険制度を用いた解析
台湾 National Health Insurance Research Database(NHIRD)は、台湾の国民健康保険制度から作られた大規模医療データベースです。疫学研究や医療政策研究で世界的によく使われています。台湾国民の99%以上がカバーされているとされます。
このデータベースを用いた、全国規模の後ろ向きコホート研究になります。
対象は、大腸憩室症患者2,879人、対照群(憩室症なし)は11,516人、両群ともに平均年齢は、おおよそ55歳となります。
追跡期間は、おおよそ、5年弱です。
ベースラインでは、心血管疾患、COPD(慢性肺気腫など)、慢性腎臓病、高血圧、糖尿病、高脂血症、うつ病、脳卒中、喘息、アルコール関連疾患の併存疾患が、比較対称群よりも、大腸憩室群で、高率であったとしています。つまり、大腸憩室を認める群の方が、基礎疾患の有病率が高率です。
EDのリスクは大腸憩室症患者で56%増加
この研究報告では、1000人年あたりのED発症率は、大腸憩室症群で2.92、対照群(大腸憩室なし)で1.71であり、大腸憩室群で、およそ1.7倍高い事が示されています。
年齢と、先に示した、心血管疾患、COPD(慢性肺気腫など)、慢性腎臓病、高血圧、糖尿病、高脂血症、うつ病、脳卒中、喘息、アルコール関連疾患の併存疾患を、多変量解析したところ、大腸憩室群では56%のEDリスクの増加がしたとする結果が得られています。
60歳以上に限定した場合は、97%のEDリスク増加が認められています。
EDのリスクは大腸憩室+うつ病で4.7倍
多変量解析では、他疾患のEDのリスクが認められています。
具体的には、うつ病で約3倍(HR3.16)、喘息で約1.7倍(HR1.71)のEDのリスクが認められています。
さらに、大腸憩室とうつ病が合併した例では、約4.7倍(HR4.71)のリスクがあるとしています。
大腸憩室とEDの関係は強く無い
EDのリスクは大腸憩室症で56%増加するとしましたが、年の発症数の増加で見た場合、大腸憩室群で2.92人/1000人年、対照群で1.71人/1000人年であり、絶対数で見ると、その差は大きくはありません。
それ以上に、うつ病や年齢の影響の方が大きいことがわかります。
大腸憩室とEDの因果関係
この報告は、観察研究であり、大腸憩室例ではEDが、およそ1.7倍増加したという事実を認めているだけで、因果関係については不明です。
大腸憩室症の危険因子として、
低繊維食
肥満
慢性炎症
動脈硬化
加齢
などが挙げられることがありますが、これらは、EDの危険因子でもあります。
つまり、共通の背景の存在が、大腸憩室とEDの合併率の上昇の理由の一つとも言えます。
慢性炎症がEDを惹起する可能性
しかし、直接的な影響も、全く無いとも言い切れません。
最近では、EDの原因の一つとして、慢性炎症が考えられています。
例えば、
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患
COPD(喫煙による肺気腫など)
喘息
関節リウマチ
などの炎症性疾患とEDの関係が指摘されています。
慢性炎症が血管内皮障害を引き起こし、それがEDの原因となると考えられています。
腸管-血管連関gut–vascular axisという考えがあります。
腸内細菌叢
マイクロバイオームの変化が慢性炎症を引き起こし(逆に、憩室炎などの炎症が腸内細菌叢の変化を引き起こしもします)、この炎症が動脈硬化に繋がり、EDに繋がる可能性もあります。
さらに付け加えるならば、本報告では、うつ病の存在がEDの発症率に大きく寄与しているとされていますが、うつ病もまた、慢性炎症が原因とする考えもあります。
腸管-脳連関gut-brain axisという考えです。
腸管の慢性炎症が神経伝達物質を変化させ、うつ病の発症を示唆する報告もあります。
つまり、大腸憩室の存在が慢性炎症を生じ(逆に慢性炎症が大腸憩室を生じさせもします)、最終的にはEDを引き起こす可能性も否定は出来ないかもしれません。
とは言え、これらの機序は、推測に過ぎません。
今後の報告に期待しましょう。
注:gut–vascular axis、gut–brain axisに合致する用語が無かったため、ここでは、腸管-血管連関、腸管-脳連関として記載しています。
Association Between Colonic Diverticulosis and Erectile Dysfunction
Medicine (Baltimore). 2015 Oct 30;94(47):e2042.
doi: 10.1097/MD.0000000000002042
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