セマグルチドによる脱毛症のリスク

GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(
あるいはオゼンピック)は、2型糖尿病患者の血糖コントロールに有用であり、加えて、大幅な体重減少を期待できるため、臨床の現場では、非常に有用な薬剤であると認識されています。さらに、心血管疾患の発症を抑制するなど、このグループの薬剤の重要性は増しています。比較的、新しいタイプの薬剤になりますが、徐々ににはなりますが、内科的な副作用報告の蓄積が進んできています。
しかし、新たな知見として、その潜在的な皮膚学的な副作用、特に脱毛または脱毛症について懸念されています。
最近の研究報告では、この潜在的な脱毛症のリスクなど、見過ごされている副作用に脚光が当たり始めています。
FAERSによる脱毛症の副作用報告
アメリカ食品医薬品局FDAの有害事象報告システム(FAERS)
には、因果関係は定かではありませんが、オゼンピックなどのGLP-1受容体作動薬による、脱毛症の副作用報告が上がってきています。それによると、2022年から2023年の間に、セマグルチドおよびその他のGLP-1およびGIP/GLP-1アゴニストに関連する脱毛症の199件の報告があったとしています。特に、GLP-1受容体作動薬の中でも、より効果の高い、セマグルチド(オゼンピックやリベルサス)とチルゼパチド(マンジャロなど)の使用に伴う脱毛症の頻度が高い傾向にあることが示されています。
しかし、報告があるというだけでは、因果関係は、この報告だけでは特定できません。
急激なダイエットが休止期脱毛症を誘発している?
現時点では、GLP-1受容体作動薬が、なぜ脱毛症を引き起こすか、詳細なメカニズムはわかっていません。
推測としては、体重が急激に落ちると、鉄、亜鉛、ビタミンD、ビオチンなどの微量栄養素やタンパク質が不足しやすくなります。これらの不足は、休止期脱毛症(telogen effluvium)を引き起こすことが知られています。つまり、薬剤が原因ではなく、急激なダイエットが原因とする考え方です。
さらに、内分泌(ホルモン)バランスの乱れ、特にGLP-1受容体アゴニストによる
への影響は、ヘアサイクルに悪影響を及ぼす可能性があるとされています。健康な毛包機能を維持する上、微妙なホルモンの不均衡でさえ、脱毛に有意に寄与する可能性があります。ダイエットに関係なく、
の一部には、食事のバランスが悪いことを原因とする、休止期脱毛症例が含まれている印象があります。ダイエットと脱毛症のメンタルへの影響
GLP-1ダイエットを開始する上で、肉体的な健康の問題だけでなく、美容上、もう少し言うならば、心理社会的要因が、治療開始のきっかけになることがあると思います。そうであるならば、脱毛症のリスクは考慮すべき事柄になります。
脱毛は、しばしば重大な精神的苦痛を伴い、自尊心、精神的健康、そして全体的な生活の質に悪影響を及ぼします。
このような影響を考慮に入れた、ダイエット計画が大切になります。
無理のない継続可能なダイエットを心がける
まとめるならば、現時点では、GLP-1ダイエットと脱毛症の関連はありそうだが、因果関係は定まっていないとなります。
脱毛症の原因が、急激なダイエットによる栄養バランスやホルモンバランスの乱れにあることは、想像に難くないです。
男性であればEDであったり、女性であれば生理不順の原因にもなります。
仮に、ダイエット中であったとしても、過度なカロリー制限は行わず、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
特に、GLP-1ダイエットを行っている場合は、食欲が抑制できるので、食事のバランスが乱れがちです。
池袋スカイクリニックでは、極端なダイエットはオススメしておりません。マイナス2~3kg/月が良いところではないでしょうか?
Alopecia and Semaglutide: Connecting the Dots for Patient Safety
J Cosmet Dermatol. 2025 Mar;24(3)
DOI: 10.1111/jocd.70125





