リベルサスやオゼンピックはニコチン依存性のリスクを低下させる

糖尿病および肥満・ダイエットに頻用されるGLP-1受容体作動薬は、それ以外にも、様々な効果が指摘されています。
例えば、ここで紹介するタバコ使用障害への影響もです。
リベルサスやオゼンピックは、同一の成分(セマグルチド)の薬剤ですが、これらを投与された患者において喫煙欲求が減少したという報告があります。
タバコ使用障害 (ニコチン依存症) に対するその潜在的な利点について関心が高まっています。
タバコ使用障害とニコチン依存症
ニコチン依存症(nicotine dependence)は、1994年のDSM-4で定義されており、診断には、「依存(dependence)」が必要でした。
この基準だと、依存には至っていないが、病的と考えられる軽症例を診断することができませんでした。
そこで、2013年版DSM-5において、このあたりの考え方が整理され、軽度~重度まで連続体(spectrum)として評価するためにタバコ使用障害(tobacco use disorder)という診断が使用されるようになっています。
一般の方には、ニコチン依存症の方が馴染み深いかもしれませんが、医学的には、タバコ使用障害が一般的になりつつあります。
基本的には同じ病態を指しており、重度のものがニコチン依存症とお考え頂いても結構です。
セマグルチドと他の抗糖尿病薬とのリスク比較
2型糖尿病患者における、セマグルチドの新規使用と、他の7種類の抗糖尿病薬 (インスリン、メトホルミン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤、スルホニル尿素剤、チアゾリジンジオン、およびその他の GLP-1受容体作動薬) を対照とし、タバコ使用障害(ニコチン依存症)についての医療受診リスクが検討されています。
アメリカ疾病予防管理センターCDCが管轄するNational Electronic Health Records Survey(電子カルテ記録)より、5,967名のセマグルタイド使用者を含む222,942名。
2017年12月1日から2023年3月31日まで、12ヶ月のフォロー期間中に、タバコ使用障害の診断のための医療行為、禁煙補助薬の処方、禁煙カウンセリングを行った否かを検証しています。
リベルサスやオゼンピックは有意にタバコ使用障害リスクを低減
この研究報告では、セマグルチドは、他の抗糖尿病薬と比較して、タバコ使用障害の診断に関する医療受診が有意に低いことが示されています。
インスリン療法との差がもっとも顕著で、ハザード比0.68(95% CI:0.63–0.74)となっています(リスクが32%減少する)。
これは、他のGLP-1受容体作動薬においても同様で、やや減少率は低いものの、統計学的に有意にリスクを低下させています(ハザード比0.88(95% CI:0.81–0.96))。
セマグルチドは、禁煙薬の処方およびカウンセリングの減少とも関連しています。
この結果は、肥満の有無に関係は無いとしています。
ほとんどのグループ比較において、このような差は処方開始から30日以内に生じたとしています。
禁煙後の体重増加を抑制する
実際に経験された方もいるかと思いますが、禁煙することで体重が増えることは疫学データで証明されています。
実際に、日本人検診対象のデータでは、禁煙1年後には8割の人が平均約2kg体重が増加し、その後3年目以降は増加が見られなくなる傾向があると報告されています 。
世界における研究でも同様の体重増加傾向が報告されています。
そのメカニズムについていは諸説ありますが、禁煙後の体重増加からダイエットを考える方もいらっしゃると思います。
本研究報告では、禁煙後の血糖コントロールの増悪についての記述はありませんが、臨床現場では、しばしば経験される事柄です。
タバコ使用障害・禁煙と食欲の抑制・ダイエットの両方を満たすのがGLP-1受容体作動薬であり、リベルサスやオゼンピックは、有用である可能性を想像します。
タバコ使用障害|ニコチン依存症セルフチェック
タバコ使用障害|ニコチン依存症セルフチェック(DSM-5準拠)
過去12か月間について、あてはまるものをチェックしてください。
Association of Semaglutide With Tobacco Use Disorder in Patients With Type 2 Diabetes : Target Trial Emulation Using Real-World Data
Ann Intern Med. 2024 Aug;177(8):1016-1027.
DOI: 10.7326/M23-2718
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