全身性炎症反応指数を用いてシアリス(ED治療薬)無効例を予測する試み

全身性炎症反応指数(Systemic Inflammatory Response Index(SIRI))は、動脈硬化や心血管疾患、がん、感染症などの病気との関連が報告されています。
血液中の免疫細胞(好中球・単球・リンパ球)のバランスから、全身の炎症状態を推定する指標で、炎症や病気のリスクの評価に役立つとされています。
簡単に言うと、全身性炎症反応指数(SIRI)は、血液検査の結果から「今、体の炎症がどのくらい起きているか」を数値化したものです。
血液検査の結果から簡単に算出できる点が特徴です。
ED勃起不全は、男性だけではなくパートナーの女性の生活の質に関わることが知られています。
シアリスなどのED治療薬は、非常に有効でありますが、それでも、全てのED例に有効であるわけではありません。
全身性炎症反応指数(SIRI)を用いて、事前に、ED治療薬(タダラフィル)の効果を予測しようとする研究報告をご紹介します。
全身性炎症反応指数Systemic Inflammatory Response Index(SIRI)とは
好中球(Neutrophil: N)・単球(Monocyte: M)・リンパ球(Lymphocyte: L)という免疫細胞から算出されます。
具体的には、一般的には、
SIRI=(N×M) / L
となります。
×10⁹/Lや単位などは省略され、数字で表さられる”指標”になります。
正式な基準は決まっていませんが、複数の疫学研究の結果から、概ね、0.45〜0.60が正常値とされています。
全身性炎症反応指数(SIRI)は、例えば、がんの予後や再発リスク、心血管系疾患(主に冠動脈疾患・脳卒中)発生リスク、さらには、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)による重症化や死亡リスクなどと、関連が有ることがわかっており、その推測などに利用されます。
全身性炎症反応指数(SIRI)が高いことは、すなわち、全身性の炎症が強い、あるいは、免疫バランスが崩れている、とお考えいただければ良いと思います。
ED治療への全身性炎症反応指数を応用しようとする試み
EDは、唯一自覚できる動脈硬化の症状である、と表現される場合があります。
なんらかの疾患の部分的な症状の一つである場合もあります。
つまり、全身の状態を把握することは、EDの原因であったり、EDの程度を推測することに繋がります。
このことから、全身性炎症反応指数を、ED診療に応用しようとする試みは、自然な流れなのかもしれません。
EDを訴える男性患者106名を対象にタダラフィル5mgを連日服用
対象者は106名。平均年齢は52.52±13.03(23~75)歳、平均BMIは26.56±3.12(21.7~36.1)kg/m2、81.1%が既婚者で、嗜好歴として、62.3%に喫煙、33%に飲酒を認めています。
タダラフィル5mgを、1ヶ月にわたり連日服用していただき、その勃起改善効果と全身性炎症反応指数(SIRI)との関連をROC曲線解析で評価しています。
その他、年齢とBMIについても、合わせて評価されています。
全身性炎症反応指数はタダラフィル無効例で軽度上昇
弱め〜中等度のED治療薬の効果予測
正直に申しますと、全身性炎症反応指数(SIRI)だけでは、ED治療薬(ここではタダラフィル)の効果を予測するには、参考程度であり、十分なパワーがありません。
優れた指標とは、感度と特異度が、ともに高い指標です。
SIRIの絶対値は、各疾患領域によって異なります。
重要なのは、感度と特異度であり、それに寄与するのは、ROC曲線におけるAUC(Area Under the Curve(曲線下面積))です。
例えば、心血管疾患や心不全・脳卒中ではAUC値は0.7〜0.8程度、固形がんにおいてもAUCは0.7〜0.8程度となります。
それに対して、全身性炎症反応指数(SIRI)とタダラフィルの効果予測は、AUC値0.618で低めです。
より複雑なEDの原因
上記で例に上げた心血管疾患やがん、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)などは、基本的には、器質性疾患になります。
全身性炎症反応指数(SIRI)は、基本的には器質性の異常を捉えています。うつ病などのメンタルヘルスとの関連も指摘されていますが、ED同様、関連は弱めです。
EDは原因によって、器質性と心因性に大きく分類されます。また、これら2つの原因は、併存することも多いとされます。原因は、複雑です。
ここからは個人的な見解になりますが、全身性炎症反応指数(SIRI)では、より複雑なEDの原因を捉えきれていないのでは?と言った印象です。
持病として、EDの原因となりうる器質性疾患(例えば高血圧や糖尿病、喫煙歴など)を有する例では、その関与を推測する参考になるかもしれません。
また、タダラフィルを長期に定期服薬した場合の、アンチエイジングの効果の判定にも有効かもしれません。
いずれにせよ、サンプルサイズが小さいので、より大規模な研究報告が待たれます。
Predictive value of systemic inflammatory response index in patients with erectile dysfunction on tadalafil unresponsive patients
Aging Male. 2025 Dec;28(1):2467157.
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