プラビックス



【プラビックス】

「プラビックス」。(サノフィ・アベンティス)
プラビックスは抗血小板薬と呼ばれる薬剤の一つです。主成分は硫酸クロピドグレルclopidogrelです。
塩酸チクロピジンticlopidine(市販薬品名パナルジン)と共通のチェノピリジン骨格を有する化合物に、カルボキシメチル基を導入した薬剤です。
プラビックスは、パナルジンと比較して、抗血小板作用は同等ながら、副作用が低減されている、 特にパナルジンでしばしば指摘されていた肝機能障害が少ないのが特徴です。 通常、プラビックスを1日1回75mg服用していただきます。 しばしば、胃潰瘍など消化管からの出血予防のため、胃薬を併用いたします。
ワーファリンのように、納豆やクロレラの摂取制限はございません。
現在、費用の理由等なければ、パナルジンではなくプラビックスを選択する、パナルジンを服薬中の方は、プラビックスに変更するのが一般的です。 プラビックスは新薬なのでジェネリック医薬品は存在しませんが、パナルジンはジェネリック医薬品が存在します。 安価に済ませる場合、パナルジンのジェネリックを選択することになります。


先に申し上げますが、併用注意・慎重投与薬にED治療薬=勃起改善薬は含まれておらず、 プラビックスはバイアグラレビトラシアリスとの併用が可能とされています。
但し、これら抗血小板薬と併用される事の多い硝酸剤や降圧薬にはED治療薬と併用できない、もしくは併用注意に該当する薬剤があるので注意が必要です。
副作用に関しては出血症状など多数ありますが、勃起不全の発生は報告がありません。


抗血小板剤では、アスピリンの歴史がもっとも古く、臨床医にとって使い慣れたなじみの多い薬剤です。 プラビックス含む、新規の抗血小板剤は、このアスピリンと比較されることになります。
様々な臨床試験が行われていますが、プラビックスは、このアスピリンと比較し、同程度またはそれ以上の動脈血栓症予防効果を示しております。


適応症は、虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術が適応される急性冠動脈症候群になります。 (心原生脳塞栓症の原因疾患のほとんどは、心房細動です。しばしば、心房細動例に、プラビックス含む抗血小板剤を投与してるのを見ますが、適応も有りませんし、効果も期待できません。 心房細動には、ワーファリンまたは、プラザキサの服用が適します。)
プラビックスは、本邦での脳卒中治療ガイドライン2009では、脳梗塞二次予防薬としてグレードAとされています。(アスピリンとプラビックスの2剤のみがグレードAとされています)
アスピリンとプラビックスを併用した方が、より効果的と考えがちですが、利益が少なく、出血等の合併症が増加するとされています。 両者の併用は、冠動脈形成術としてステントを留置した場合など、限定的です。


プラビックスの主成分であるクロピドグレルは、プロドラックであり、効果発現には肝臓で代謝、活性代謝物に変換される必要が有ります。 活性化されたプラビックスは、速やかに血小板膜上のADP受容体に選択的かつ不可逆的に結合し、 最終的には、血小板を互いに結合させる接着剤のような働きをする、GPⅡb/Ⅱaの活性化を阻害し、抗血小板作用を発生させます。
さらに、血小板内のCa2+濃度上昇を抑えることにより、各種血小板凝集因子による凝集反応を強力に抑制するとされています。

血小板は、アルファ顆粒と濃染顆粒と呼ばれる空胞を細胞質内に有し、 トロンビンやコラーゲン、vonWillebrand因子等の活性化物質刺激により、 活性化、放出されます。 ADPは、膿染顆粒中に存在する物質の一つで、細胞外に放出されると、 より一層血小板を活性化し、凝集亢進、維持に働きます。

血小板上のADP受容体は、膜7回貫通型受容体でP2Y1とP2Y12の2種類があります。 肝臓で代謝活性化されたプラビックスは、ADP受容体の内、P2Y12を阻害いたします。 プラビックスは、このP2Y12にのみ作用するため、その他の血小板活性化経路が維持されるため、 重篤な出血を来しません。


現在、プラビックス(クロピドグレル)のレジスタンスに関心が寄せられております。
プラビックス(クロピドグレル)のレジスタンスは、比較的高頻度で認められ、白人に比較し、 アジア人に多く認められるとしています。
レジスタンスとは、プラビックス(クロピドグレル)の薬理作用が十分に発揮でできない状態です。
先に述べましたが、プラビックスは、プロドラッグであり、効果発現には、肝臓での代謝が必要です。 この代謝にはチトクロームP450に属するCYP2C19活性が関係してきます。 CYP2C19には、野生型のCYP2C19*1の他、活性を有さないCYP2C19*2変異、 CYP2C19*3変異の存在がし、薬剤抵抗性に関与することが知られています(これらは、一塩基遺伝子多型です)。 CYP2C19変異の頻度は、人種によって異なるとされ、CYP2C19*2変異は、アジア人で30%、白人で15%、 CYP2C19*3変異は、アジア人で5%、白人で0.04%程度とされています。 日本人では、このCYP2C19活性が低い場合が有り、このとき、プラビックスの抗血小板作用が減弱します。
抗胃潰瘍薬のプロトンポンプ阻害剤に属するomeprazole(商品名:オメプラール、オメプラゾン)は、CYP2C19活性を抑制するため、プラビックスの抗血小板作用を減弱させます このため、アメリカ食品衛生局FDAは、プラビックス(クロピドグレル)とomeprazoleのの同時使用は避けるように勧告しています。
また、ベンゾジアゼピンなどのセロトニンの再吸収を抑制する薬剤は、プラビックス(クロピドグレル)の効果を低下させると指摘されています。
肝臓のチトクロームP450で代謝されるスタチン系の抗コレステロール薬が、プラビックス(クロピドグレル)の活性化を抑制するとも言われていますが、はっきりとしていません。
肥満例では、プラビックス(クロピドグレル)の吸収が不良であるとの報告もあります。
血中のエステラーゼにより、プラビックス(クロピドグレル)の活性体が分解されるなどの報告もあります。
脳梗塞二次予防で服薬することの多いプラビックスですが、効果が安定しないと、脳梗塞の再発につながります。 現在、日本人のみを対象にしたプラビックスの反応性をみた臨床試験が行われております(結果が分かり次第、ご報告したいと考えます)。 一刻も早く、プラビックス(クロピドグレル)のレジスタンスの原因を解明していただきたいものです。


プラビックスを含む抗血小板剤は、一度処方を受けると、その効果がきちんと出現しているかどうか確かめられることもなく、服薬を継続することが多いと思われます。 「効果を調べていない」のでなく、「調べられない」のです。 方法は有るのですが、費用や時間を要したり、また、あくまでも検査室内でのデータとなるため、生体内での反応と異なる可能性があることが、その理由になります。 しかし、先に述べたプラビックス(クロピドグレル)のレジスタンスもあり、一部の施設では、抗血小板剤のモニタリングが試みられています。
血小板凝集計検査や、VeryfyNowと呼ばれる全血血小板凝集計やフローサイトメトリーを用いた方法などが有ります。 これらの機器を用いた、プラビックス(クロピドグレル)のレジスタンスの報告がございますが、結果はまちまちで、その率は一定しませんが、概ね高率であるとされています。


written by バイヤグラなら池袋スカイクリニック